Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

『いくつになっても、「ずっとやりたかったこと」をやりなさい。』 自分と向き合う時間を作る

ステイホーム生活が始まってからわが家では朝礼を朝食を食べながら毎日実施している。日ごとに子供も含めて担当の家事が決まっているので、その日の家事の内容を確認したり、夜の電話会議の予定を全員と共有したり、週末に皆で決めた晩ごはんのメニューを確…

『未完の資本主義』 現代資本主義を問う新しい視点

本書『未完の資本主義』は、国際ジャーナリストの大野和基による、世界的に話題を集める知識人へのインタービュー記事である。 未完の資本主義 テクノロジーが変える経済の形と未来 (PHP新書) 作者:ポール・クルーグマン,トーマス・フリードマン,デヴィッド…

『流浪の月』 「ラベル付け」と「無知」

昨年受講した会社の管理職研修でTilt365という自己評価を実施した。物事を考えたり、意思決定をする際に何に重きを置くのかについて、アイデアとデータを縦軸に、結果と人間関係を横軸にとり、自分が四象限のどこに分類されるのかを把握し、それぞれのグルー…

『現代語訳 論語と算盤』 成功や失敗なんて単なる残りカス

アメリカに移住し、アメリカ企業の日本人の全くいない仕事環境にどっぷり浸かって七年近くなる。家族や私生活を大事にする同僚や上司の姿勢に多くを学んだし、形式よりも合理性を重んじるスタイルは私の肌にあっているし、常に付加価値を出そうと前のめりに…

『フェルマーの最終定理』 たえまなく湧きあがる想像力と、じっくり考えるしぶとさ

17世紀のフランスの裁判官であるピエール・ド・フェルマーは「3 以上の自然数 n について、xn + yn = zn となる自然数の組 (x, y, z) は存在しない」という定理について「私は真に驚くべき証明を見つけたが、この余白はそれを書くには狭すぎる」というメモ書…

『外国語学習の科学-第二言語習得論とは何か』 外国語習得の羅針盤

本屋に行けば英語学習の方法論を著した本、並びに参考書は棚に溢れ返り、インターネット上にも同様のコンテンツは検索すらしきれないほど氾濫しており、正に情報の濁流と言っても過言ではない。豊富なコンテンツや情報技術の発達による新しいツール群は、学…

『日本人のための憲法原論』 憲法は国家権力を縛るための契約

本書、『日本人のための憲法原論』は、キリスト教史を中心に西洋史を遡りつつ、憲法とは何か、民主主義とは何か、その両方が現代日本で何故骨抜きになってしまっているか、というテーマに真正面から取り組む良書だ。筆者の小室直樹氏の本は、同シリーズの『…

『労働者階級の反乱〜地べたから見た英国EU離脱』 英国で育つ若い芽たち

『労働者階級の反乱〜地べたから見た英国EU離脱』は先日紹介した『ぼくはイエローで、ホワイトで、ちょっとブルー』の著者であるブレーディみかこさんによる、英国のEU離脱について労働者階級の視点でのルポルタージュだ。 労働者階級の反乱~地べたから見た…

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』 多様性と無知について考える

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を読んだ。控えめな評価を与えたとしても、本書は今年読んだ本の中でトップ3に入る面白さであった。 ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 作者:ブレイディみかこ 発売日: 2019/06/21 メディア: Kind…

英語を「聞く」、「話す」ができるようになるために大事なこと 〜シャドーイングの肝〜

『中田敦彦のYouTubed大学』は、私が購読している数少ないYouTubeチャンネルの一つだ。扱われるトピックが多岐に渡り、特に自分が勉強不足の内容については、散歩やランニングをする時に聞き流すのに調度良い。そのチャンネルで先日、英語の勉強方法について…

『ハーバード日本史教室』 移民活用能力向上のススメ

「ハーバード大学で開講されている日本を専門的に学ぶ授業はいくつあるか?」 この質問について読者の方に少し考えて頂きたい。本日紹介する『ハーバード日本史教室』を読む前は、私は正直5〜6講座くらいだと考えていたのだが、本書の序章で驚くべき数字が…

在宅生活を機に、改めて歴史を学ぶ

「自分が知っているのは歴史の断片的知識だけで、歴史の基本的な流れをわかっていない」というのは、詰め込み型の勉強で受験を乗り切り、その後あまり歴史に興味をもたなかった人の多くが抱えるコンプレックスなのではないだろうが。もちろん、こういう書き…

『外国人にささる日本史12のツボ』 日本を語る第一歩

「どこの国に行ってみたいか」という話をアメリカ人の同僚とすると「日本」と答える人は決して少なくない。もちろん、目の前にいる日本人に対していくばくかの配慮があっての話であろうが、同席したブルガリア人の同僚に忖度して「ブルガリア」と答えた人は…

『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』 死と弔いと家族のあり方

国際霊柩送還士、聞き慣れない職業だが、海外で亡くなった方の遺体や遺骨の搬送(もしくはその逆)を請け負う仕事である。これだけ国際化が進んでいる昨今で、驚くべきことに、国際霊柩送還を専門にしているのは『エアハースインターナショナル』という会社…

コロナ禍におけるアメリカの在宅生活事情

外出自粛生活が始まってそろそろ2ヶ月ほどがたつ。私の在宅勤務の開始と子供の休校のタイミングが同じだったため、家族そろって新生活に一気に移行し、一緒に作り上げていくことができた。現在、私が住む米国は感染者数が137万人(5月初旬時点)を越す感染大…

『感染症の世界史』 感染症と人類発展の歴史

新型コロナウィルスの猛威により、2020年5月9日時点で感染者数は400万人を超え、亡くなった方の数は28万人にも及ぶ。SARSについては、2003年9月26日にWHOが発表した限り感染者数は8,098名で、死亡者774名というから、正に桁違いのインパクトである。歴史を紐…

『福島第一原発 1号機冷却「失敗の本質」』 ブラック・スワン後の世界

前回紹介した『死の淵を見た男』は、ノンフィクションでありながらヒーロー性に富む物語でもあり、『Fukushima 50』という形で映画化される程だ。事実に忠実ながらも、現場 vs 東電本店と官邸という対立軸を用いることにより物語性が高まっている。東電本店…

『死の淵を見た男 』 事故現場の「底力と信念」の物語

いやぁ、久しぶりにものすごい本を読んだ、読後感はこの一言につきる。Kindleでページを手繰る際の一瞬の間が苛立たしい、そんな読書経験は本当に久しぶりであった。 本書は、東日本大震災の福島第一原発事故の現場のルポである。福島原発を襲う津波、電源の…

『欧州ポピュリズム ──EU分断は避けられるか』と『独裁の中国現代史 毛沢東から習近平まで』

今回は『欧州ポピュリズム ──EU分断は避けられるか』と『独裁の中国現代史 毛沢東から習近平まで』の二冊を紹介したい。「民主主義は最悪の政治といえる。これまで試みられてきた、民主主義以外の全ての政治体制を除けばだが」というのはチャーチルの有名…

『強いチームはオフィスを捨てる』 リモートワーク導入で問われる管理職の資質

ウィルス騒動で日本でもリモートワークが少しずつとりいれられてきた模様。私は日本に住んでいる頃は、中央線と山手線を利用していたので、通勤ラッシュ時で消耗されるエネルギーの量はよくわかる。その通勤に費やされていた力が、仕事や私生活に振り向けら…

『宗教改革の真実』 宗教改革とブロックチェーンの意外な接点

王侯貴族や政治家の行動に焦点をあわせ、革命や戦争などの出来事をおい、社会の大きな変化に焦点をあてる歴史学に対し、社会の中下層の人に焦点をあわせ、百年単位では変わらない制度や習慣やものの考え方をとらえる社会史。ルターの贖宥状の販売に異を唱え…

『1兆ドルコーチ』 アメリカ西海岸のテック企業のエピソード集

先日、一週間の会社の管理職研修をうけた。私はアメリカの研修が正直苦手だ。こちらではただ講義するタイプの研修というのは好まれないので、クラス全体での議論、グループに別れてのディスカッション、ケーススタディ、そしてロールプレイなどが盛りだくさ…

『日本人の勝算』 生産性向上こそ日本人の勝算の鍵

私は今米国に住んでおり、日本で保有しているマンションは三菱地所系の会社に委託して他の人に貸している。昨年のゴールデンウィークにその物件の給湯器が壊れてしまい、その間の銭湯代(3千円程度)を支払って欲しいという依頼が借り主の方からあり、快諾…

『人工知能は人間を超えるか』 人工知能の三度目の春

先日放映された「情熱大陸」は囲碁棋士芝野虎丸氏のドキュメンタリーであった。芝野虎丸氏は19歳にして「名人」位を奪取した囲碁会の新世代スターだ。勝ち負けが全ての勝負の世界において、「やりたいことが見つかれば、明日にでも囲碁は辞めてもいい」と事…

『「帝国」ロシアの地政学』 隣国ロシアの行動原理

私のロシア、ソ連についての知識の変遷を読書から追うと、『旅行者の朝食』などをはじめとする米原万里のエッセイ、『自壊する帝国』を代表とする佐藤優の作家初期の作品、そして元外交官の東郷和彦の『北方領土交渉秘録』などがあげられる。勉強不足からか…

日本の英語教育考 受動態の怪

娘が先日、日本の中2の模試を受けたところ、英語がまさかの70点代であった。娘は米国在住歴6年で、大学入試センター試験の読解問題は試験時間を半分ほど残し190点以上を取得し、今夏に初めて受けたTOEICも900点台半ばという高得点で、英語は相当できる。元々…

『ブロックチェーンの描く未来』 記録と契約のパラダイム・シフト

「あれ、筆者は大学の教授、研究員だったけ?」という錯覚を覚え、筆者の経歴を確認することが読んでいる間に何度かあった。本書『ブロックチェーンの描く未来』に溢れるのは新技術への熱狂といよりアカデミックな探究心だ。 ブロックチェーンの描く未来 作…

『WHY BLOCK CHAIN』 ブロックチェーンの切り拓く未来

私はオープンソースを事業の中心に据える会社に勤めてもう10年以上になる。転職した当時は、ビジネスの世界ではまだメインを張れるほどメジャーではなかった。転職前の会社は日本法人が2万人以上いる外資系の巨大IT企業に勤めていたので、「お前、ノーア…

『暇と退屈の倫理学』 高度消費社会を生きる知恵

シックな木目調の机と椅子、少し和風で温かみのある光が溢れる照明、客席の中央に配置され、火がゆらゆらと揺れる暖炉、カロリーが表示され脂っこいアメリカンフードとは全く異なる健康的な食事、プラムジンジャーハイビスカスティーとカタカナで書くとなん…

『AI救国論』キャリアの獣道と開かれた学習環境

本書『AI救国論』の第一章は「日本衰退の責任は若手の実力不足にある」という刺激的なタイトルが付されている。老人が若者への責任転嫁で書きなぐったような本なら読むに値しないが、31歳にして東京大学准教授でありながら、代表取締役として株式会社Daisyを…

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