ウィルス騒動で日本でもリモートワークが少しずつとりいれられてきた模様。私は日本に住んでいる頃は、中央線と山手線を利用していたので、通勤ラッシュ時で消耗されるエネルギーの量はよくわかる。その通勤に費やされていた力が、仕事や私生活に振り向けられれば、生産性の改善と私生活の充実が間違いなく期待できるはずだ。日本はワークスタイルの変革のようなことは、強い外圧がないとなかなか進まないので、これを機にリモートワークというスタイルが日本で広く浸透することを願う。
本日紹介する『強いチームはオフィスを捨てる』は、リモートワークに移行する際にでる典型的な疑問に対して丁寧に答え、そのメリットとデメリット、そしてそのデメリットを如何に抑えるかということがコンパクトにまとめられている良書である。「リモートワーク」という言葉が急に身近になってきて、その導入を検討しているが様々な疑問が頭をもたげるという方にはとても参考になるはずだ。
読みどころは沢山あるが、本書の胆は下記の点に集約されると思う。
大事なのは「今日何をやりとげたか?」ということだけだ。何時に出社して何時に帰ったかは問題じゃない。どんな仕事をしたかが問題なのだ。 あなたがマネジャーなら、部下に「今日やった仕事を見せてくれ」というだけでいい。給料に見合うだけの仕事をしているかどうか、その目でたしかめるのだ。
リモートワークの導入に際し、「オフィスにいない部下をどうやって管理しろというのか」、とおっしゃる管理職の方たちが少なからぬ数いることが想像される。その問いへのシンプルな答えが上記の引用だ。もし、上記の答えがあまりピンとこない管理職の方がいたら、それは要注意だ。あなたは、マネージャとしてメンバーの仕事の成果を評価していたのではなく、「何時から何時に着席していて、さぼっていなかったか」を管理していたにすぎない可能性がある。チームメンバーのパフォーマンスというのは仕事の成果ではかるものであって、オフィスに何時から何時にいたとか、一生懸命仕事に取り組んでいるという「仕事振り」のみではかるものではない。
マネージャとしてすべきことは
- 会社の戦略に結びつく自分の部署のゴール、重点施策を策定する
- それらを達成するために、各部下が果たすべき役割、個別の目標を設定する
- 部下がゴールを達成するために、獲得すべきスキルの定義とその育成計画を作成する
- ゴールに向けて必要なマイルストーンを定義し、定期的に進捗を評価する
- ゴールを達成するためにどのような支援が必要なのか見極め、適切なサポートを実施する
- 部下の改善点を相手に伝わる形でフィードバックする
というようなことだ。
もちろん、顔をつきあわせたほうがやりやすいこともあるが、リモートでできないことは一つもない。仮に物理的に異る場所にいたとしても、定期的に進捗を確認し、ゴールの実現に向けて必要な支援を実施しつつ、適切なフィードバックをし、モチベーションを高めて部下が最大のパフォーマンスを発揮できるようにするのはマネージャの責務だ。
別の見方をすると、リモートワークが進むと、各マネージャは「部下の仕事の成果を正しく評価することができるか」という資質を問われることになり、丸投げ型、並びに出社時間管理型のマネージャは淘汰される可能性がある。なので、リモートワーク導入に際し、「オフィスにいない部下をどうやって管理しろというのか」という疑問が頭をもたげたマネージャはそれを声高に叫ぶのではなく、自分がマネージャとしてなすべき仕事をしていたかどうかをまず振り返ってみることが大事だ。
本書ではそもそも管理とは何か、という原則論から、異なる場所にいても最大の成果をだすための実践的なコツまで、リモートワークで生産性を高めるための様々な助言がなされている。コロナ対策でリモートワークの話がでてきて、どこから手を出したら良いか見当がつかないという方には是非手にとって頂きたい。