Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

補習校という選択 節目を迎えた子どもたちへ

週末に娘と息子がそれぞれノースカロライナのとある補習校の高等部と中学部を卒業した。アメリカに移り住んだ際のそれぞれの学年は、小2と年中なので、それぞれ10年以上補習校に通った計算となる。

 

補習校は、渡米当初は子どもたちにとって「自分の居場所のある心の拠り所」であったに違いない。言葉が全くわからないアメリカの現地校に、週5日通うというのはとても過酷なことだ。授業の内容は全くわからず、友達もいない現地校と比較し、「日本語で話すことができるクラスメートと自分が参加できる授業」がある補習校は心のオアシスだったに違いない。

 

渡米して2-3年も経てば言葉の壁は徐々になくなってゆく。だが、わが家の子どもたちは、土曜日に補習校に通うという「選択」を続けた。親に連れてこられやむを得なくアメリカに住んでいるが、「いつかは日本に帰りたい」と思っていたことは知っている。補習校に通い続けることは、日本とのつながりを勉学や友達関係など様々な面で維持したいという彼らの気持ちの表れでもあったのだろう。

 

高等部と中学部への進学というのは補習校においては大きなハードルだ。現地校での授業内容や宿題は難しくなり、クラブなどの現地校での活動も増えてくる。長く補習校に通った友人が、一人、また一人と「補習校のない生活」を「選択」する中でも、わが家の子どもたちは補習校に通うことを「選択」し続けた。
もう生活の一部になっていからかもしれないし、同じ船にのって同じ航海を続けるクラスメートがいたからかもしれないし、節目を迎えるまでやり遂げたいという意地かもしれないし、もしかしたらただの惰性かもしれない。きっと理由は一つではないんだろうが、とにかくわが家の子どもたちは補習校に通い続けた。

 

彼らが高3と中3の6月を迎えた時に大きな変化が起こる。私の仕事の関係でノースカロライナからカリフォルニアに引っ越すことになったのだ。引っ越し先にある補習校は規模がそれほど大きくなく、なんと高等部が存在しなかった。娘は引っ越し先で補習校に通うことができず、息子は残り8ヶ月ほどの中学3年生を転校先の新しい補習校で過ごすこととなった。私の都合で引っ越しを余儀なくされた子どもにはとても申し訳なく思う。

 

10年通ったノースカロライナの補習校を転校という形で終わらせてよいのだろうか。これは私にとっては、考える必要もないくらい簡単な問いであった。幸いなことに子どもたちも、ノースカロライナの補習校を卒業したいという強い希望をもっていた。なので、何とか卒業式に参列、そして卒業できる道を探ることとなる。若干無理矢理ではあったが、休学制度を活用しながら卒業式まで、休学費や授業料を支払うことで在籍するという方法を見つけることができた(ご理解、ご協力頂いた校長先生や事務局の方には感謝してもしきれない)。そして、先週半ばから、私は仕事を、子どもは現地校を休み、西海岸から東海岸に移動し、子どもたちは慣れ親しんだノースカロライナの補習校の卒業式に参加し、晴れて卒業をすることができた。

 

補習校は在外教育施設として文部科学省が認可はしているものの、保護者が自主運営している塾に近い教育施設にすぎない。そこでの卒業資格というものが、学歴として残るわけでもなく、卒業証書は言ってしまえばただの紙切れだ。

 

だが、自分の「選択」として通い続けた補習校での日々や経験、そこで出会った仲間というのは彼らにとってかけがえのない財産になったに違いない。そして、最後までやり抜いたという事実が、彼らの人生の大きな糧となることを願ってやまない。

 

「日本に帰りたい!」

私自身の都合でアメリカに連れてきた私に、子どもたちは散々と文句を言ったものだ。だが、

「もう補習校をやめたい!」

と、彼らが私に言ったことは一度たりとてない。
君たちは自分の意思で補習校に通い、そして堂々と節目を迎えたんだ。どうか胸を張って欲しい。

 

週末に、お弁当を作り、そしていつも補習校まで送り迎えをして、支えてくれた親御さんに感謝をしよう

なんてことを言う人もいるが、感謝なんているものか。「君たちが補習校に通えるようにする」ということはお父さん自身の「選択」であり、お父さんがやりたいからやっていたことだ(君たちは十分わかっていると思うが)。

 

われわれは10年続けてきたこの取り組みの大きな節目を無事迎えることができた。自分たちの「選択」と「達成」に、それぞれが自分自身を大いに褒めようじゃないか。自分の心に問いかけ、それに従って最後までやり遂げた自分を祝福しよう。最後に一つ。君たちが誰かに褒められたくて、補習校に通い続けたわけではないことは知っている。それでも、父親として一言くらい言わせて欲しい。それにしてもよく頑張ったね、本当におめでとう。

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