Thoughts and Notes from NC

アメリカ東海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

『その後のとなりの億万長者』富と収入の違いを理解し、富を築く

「お金持ちになりたい」、そう思っている人は世の中に沢山いるだろう。野村総合研究所の調べによると、日本の全世帯の中での億万長者(純金融資産1億円以上)の割合は2.5%ほどの模様。50人いたら1人は億万長者というのはそんなに悪い数字ではないが、少数派であることに変わりはない。一方で、アメリカの億万長者比率は9%と日本よりはるかに高い。それを聞いたら、

  • 年収数十億円のプロスポーツ選手や大企業の経営陣
  • 大きくインターネット事業であてた起業家
  • 巨額の報酬をえる医者や弁護士

などのいかにもアメリカンドリームのイメージが浮かぶ人が多いかもしれない。本日紹介する『その後のとなりの億万長者』はそんなイメージを良い意味で壊してくれる良書だ。

 

本書は、アメリカで高い金融資産を保有する層にアンケートに回答してもらい、そこから彼らに共通する行動パターン、特性を導き出している。そして、その調査結果が示している行動特性は、

  • 規律ある消費
  • 堅実で長期間にわたる貯蓄
  • 地道かつ勤勉な資産管理

といった手堅いものばかりで、アメリカンドリームのイメージとは程遠い。本書で紹介される億万長者たちは「年収数千万円稼ぐ」といった手の届く感の薄い遠い世界の人々ではなく、それこそ隣近所にいるおとなしめの老夫婦のような親近感のわく人物像が多い。超高収入、一攫千金という飛び道具を使わずに「お金持ち」になるための基本が凝縮されており、「億万長者も決して夢ではない」という勇気を与えてくれる。

 

富とは収入ではない、また収入は富ではない。

 この言葉を聞いて、目が泳いだ方は、飛び道具を手にしない限りお金持ちになるのは難しい。ここでいう富とは、資産から負債をひいた純資産のことで、筆者は本書で

  • 収入と富をきちんと分て考えるべき
  • 収入と富は相関を示す傾向にはあるが、イコールではない
  • 「お金持ち」かどうかは、収入ではなく、富によってはかられるべきである

ということを何度も強調している。日本では「年収1千万円」という数字はよくでているが、「純資産3千万円」のような数字はあまりでてこない。自分の年収を答えることができない人はいないと思うが、自分の資産額はいくらなのかを把握していないという人は、結構多いのではないだろうか。「お金持ち」への第一歩は富と収入の違いを理解して、富を築いていく意識を持つことから始まる。

 

本書では、蓄財優等層と蓄財劣等層という二つの言葉が良く出てくる。収入がいくら多くても、それらをそのまま派手に使ってしまえば、決して「お金持ち」にはなれなく、そういう人たちを蓄財劣等層と呼んでいる。転職を繰り返してスキルアップと年収アップを重ねていくアメリカ人は、収入の増加にあわせて生活レベルをあげ続ける人が非常に多い。大量消費社会で、日本よりお金がものをいう世界なので、あればあるほど使ってしまう誘惑は高い。高級な住宅街に住み、高い車に乗り、高価なワインを嗜む、というように収入を消費にそのまま回してしまい、富を蓄えない人は瞬間最大風速の生活を楽しむことができるかもしれないが、お金持ちにはなれない。規律を守って富を蓄え、地道かつ勤勉に資産を管理運用した人の中にこそお金持ちがいると言う事実が本書では繰り返し実証研究から語られている。

 

「年収2000万円問題」で政府に批判が巻き起こる反面、NISAやiDeCoの認知度が40%にも満たない日本人は決して資産形成のリテラシーが高いとは言えない。だが、貯金額の多い日本人が、長期かつ勤勉な資産運用という最後のステップにさえ踏み込めば、お金持ちへの道が大きく開けるという点で本書は勇気を与えてくれるだろう。「富と収入の違いを理解して、富を築いていく意識」をまだ持っていない方は是非本書を手にとって頂きたい。

『スマホ脳』 時間泥棒から身を守るための脳科学

スマートフォン、略してスマホを使わない日は私は一日もない。朝はスマホの目覚ましで起き、眠気ざましにSNSをベッドの上でだらだらチェックし、起きぬけに計った体重と体脂肪率を登録し、顔を洗ったりヒゲを剃ったりしている間に音楽を流し、YouTubeで朝ヨガの動画を流して軽く体を動かし、カレンダーアプリでその日の仕事の予定を確認し、朝食をとった後は教育系のYouTubeの動画を視聴し、仕事前に英語発音練習アプリでウォーミングアップをし、いざ仕事を開始すると矢のように各種連絡がテキストやチャットアプリに入るなど、朝起きてから休むことなく稼働し続けている。私の一日の使用時間は3ー4時間ほどであり、平均より少ないのではないかと思うが、それでも起きている時間の多くをスマホと向き合っていることには変わりはない。

 

2人の子供にもスマホを買い与えているが、親としては彼らの使用頻度の方も気になる。高校生になる娘は、一時期目が飛びでるような時間をスマホに費やしてきていたが、自分なりにコントロールする術を模索して、決して少なくはないが、ティーンの平均よりは少ない時間におさめ上手く付き合っているが、中学生になる息子は伸び盛りの時期にスマホの利用時間も伸び盛りのようで、少し助けが必要なようだ。

 

本日紹介する『スマホ脳』は、本棚に平積みされているベストセラーであるが、自分自身、並びに家族のスマホ利用に頭を悩ませている方は必読の書と言えるだろう。本書が面白いのは、スウェーデンの精神科医であるアンデシュ・ハンセン氏が、ドーパミンが人間の脳の中で放出される仕組みを解説した上で、時間泥棒を企む企業がその脳の仕組みを如何に活用しているかを、説得力をもって語っている点だ。また、本書で語られているドーパミン放出のメカニズムは、決してスマホ利用時間という特定のトピックに限定した知識ではなく、自分の感情やストレスのコントロールに活用できる汎用的な知識だ。

 

もう少し内容を深堀する。本書で語られている脳とドーパミンの関係を私なりにまとめると下記のような感じだ。

  • ドーパミンは、人を何がしかの行動に駆り立てるために放出される
  • 現代の人間の脳は、サバンナで狩猟をしていた頃の原始人の頃から変化は特に無く、サバンナで生き抜くことができるような行動を駆り立てるようドーパミンを放出する
  • 具体的には、環境の変化を見逃さないために、感知した新しい情報の内容を確認させるよう仕向けたり、集団からの孤立を避けるために人との繋がりを維持するような行動を駆り立てる、などの働きをする

太古の昔は、周囲の環境を理解すればするほど、より早く危険を察知することができ、また生き延びるための食糧を手に入れることができた。なので、新しい情報を探そうとする本能が人間にはあるのだという。また、技術の全く発展していなかった時代は、人は集団で暮らさなければ生き延びることができなかった。集団から外れるということは、それそのものが死を意味していたため、社会的な繋がりを作る行動を駆り立てるように脳は機能するのだという。

 

Facebookのアイコンに赤い更新通知が表示される、Twitterのアイコンに未読の通知が表示される、投稿した内容に知人や友人が「いいね!」を押してくれる、ブログで書いた記事がバズる、などのことに微弱ながらも刺激を受け、ついスマホに手を伸ばししまう、というのは脳科学的には理にかなった行為であり、その脳の仕組みを理解した上で頻繁にユーザがアクセスしたくなるような仕掛けを各SNS企業がかけている、というのが本書の肝である。この現代人の脳の仕組みが狩猟時代から変わっていなく、それが現代社会に適合していないというのは、ダイエット関連の書籍にはよくでてくる話であるが、それをスマホと結びつけたというのが私には新しかった。

 

新しい視点を提供してくれたという点で読んだかいがあったのだが、少し物足りなさも残る。本書の中盤は、スマホが如何に集中力や記憶力を削ぐのかが、各種の実験結果と共に語られている。それはそれで興味深いし、感覚的にもわかるのだが、原典がきちんと表示されていないので、アカデミックさが欠けており私には物足りなかった。また、後半部では、いよいよ解決策が語られるのだが、その内容が「運動しよう」であったため、正直こけてしまった。運動の効果を否定するものではないが、本書の骨子からの論理の飛躍感が否めない。もっと、「逆に脳のこういう特性を利用して、このように利用時間を減らすのが良い、時間泥棒からこのように身を守ればよい」、などの提案があったほうがより面白くもあり、参考になったと思う。

 

最後は若干勝手な見解を述べたが、本書は一読の価値あり、ということには何ら変わらない。本書で、紹介されている時間泥棒から身を守るための脳科学は、スマホの利用に少しでも悩んだことのある人は、必修事項だ。本エントリーを読んでいるスマホは横において、本書を手に取ることをお勧めしたい。

『歴史を活かす力』 「何故、歴史を学ぶのか?」のかという問いへの答え

「何故、歴史を学ぶのか?」、そんなシンプルな問いを子どもから問いかけられたら、小難しい説明はおいておき、「まぁ、この本でも読んでみなさい」と取り敢えず渡してしまいたい、『歴史を活かす力 人生に役立つ80のQ&A』はそんな本だ。

歴史を活かす力 人生に役立つ80のQ&A (文春新書)

歴史を活かす力 人生に役立つ80のQ&A (文春新書)

  • 作者:出口 治明
  • 発売日: 2020/12/17
  • メディア: Kindle版
 

 筆者は、本ブログでお馴染みの出口治明氏。本書は、「織田信長が明智光秀に討たれたのは、どこに失敗があったのでしょうか」、「スペイン風邪が第一次世界大戦を終わらせたというのは本当ですか」、「ローマ帝国がキリスト教の迫害から一転して、国境としたわけは」などの歴史をからめた80の質問に筆者がテンポよく答えていく、という形式で進んでいく。わかりやすく平易な言葉を使いつつ、関西弁の口語も交えながらのユーモラスな文章が展開されるので、中学生や高校生でも楽しみながら読め、「あぁ、歴史って面白いなぁ」と感じることもできるだろう。

 

どの質問も単なる歴史の知識の開陳で終わることなく、筆者の膨大な歴史の知識を元に「タテ思考(ある歴史の事柄を他の時代の似たような出来事と関連づけて類似点と相違点に着目しとらえる考え方)」を最大限に活かした独自の着眼点で解説されるている。個別の歴史の出来事が、新な物語りとして語られる小気味良さが味わえ、一度読み始めたら、なかなかやめられない本であった。目次をみればわかるが、あげられている80の質問は、まとまりがあるようでない雑多なテーマの集合体だ。それらが、矢継ぎ早に投げられても、常に軸をぶらさず的確に、そして楽しそうに打ち返す筆者の姿をみれば、歴史を学ぶ理由は「自分の頭で考えるための思考軸を自分の中に作る」ことにあることを読者は自ずと実感できるはずだ。「連合王国(イギリス)の歴史で、最大の失敗といえば何でしょうか」に対する答えが2020年の1月のEU離脱(ブレグジット)と断じ、それを「ナポレオンによる大陸封鎖令を自ら実施するようなもの」と喝破しているが、現在進行形の事象を独自の思考軸でとらえている好例だ。色々な意見がありうる内容についても、「私はこう考えますよ、でも他の見方があれば、是非教えてください」というオープンなスタンスで臨んでいるのも、勉強を続けて思考軸を磨き続けている筆者ならではの余裕だろう。

 

本書は、その他にも「消費税10%増税と徳川吉宗の享保の改革」、「毛沢東と西郷隆盛」、「ラグビー日本代表と鎌倉新仏教」など意外な取り合わせで現代社会を読み解く多様な視点を提供してくれる。発想を自由に飛躍させながら、自分の頭で考えた視点を読者に問う筆者の姿は、「あぁ、歴史を勉強すれば、こんなに色々な物事の見方ができるんだ」と若者もきっと向学心を持つことだろう。『歴史を学ぶ理由は、自分の頭で考えるための思考軸を自分の中に作ることにある』なんて、偉そうに子どもに説教するより、自由に楽しそうに語る筆者の姿をみせることが、子供の向学心をかきたてるにははるかに効果的だろう。

 

そんな、出口氏、本年1月上旬より病気療養中とのことで心配だ。今は治療に専念され、また元気な姿で活躍を頂きたい。くれぐれもお大事にしてください。

在宅生活で健康体を保つ上で重要な三つのこと

コロナ禍で在宅・テレワーク生活をしている人も日本でも大分増えてきた模様。が、その結果として「コロナ太り」や「おこもり太り」なんて造語ができるくらい体重が増えてしまった人がかなりいるようだ。理由は様々あるようだが、運動量の減少がどうも一番の原因だろう。日本で働いていると、通勤でそれなりの歩数を稼げるので、通勤がなくなったことによってその分の運動量がぽっかりなくなってしまい、それが体重増という形ではね返ってきた方が多いのは理解できる。

 

ステイホーム生活が始まって1年くらいたち、私はこの1年間一度も会社には行っていない。私は、元々通勤で500歩くらいしか歩かないアメリカ生活を送りながらも、ランニングなどをして健康体を保っていたが、ステイホーム生活のおかげで、体脂肪率は14%から12%台に落ち、ますます健康になった。筋トレの成果で貧弱な上半身にも筋肉がかなりついてきたし、開脚ストレッチで肘もつかないくらいガチガチの体であったが、今は顎が床につくようになり、コロナ禍のおかげでより健康な身体をつくることができている。

 

増えた体重を「コロナダイエット」に勤しんで減らそうと努力されている方やコロナが沈静化したら体重を元に戻そうと目論んでいる方も多いようであるが、そういう方々の少しでも参考になればと思い、どうやってステイホーム生活でも健康体を保っているのかを共有したい。

 

1. 目標体重にそった生活習慣を作り上げる

「今62キロの体重を58キロにする」という目標設定から入って、ダイエットに成功した試しが私には一度もない。瞬間最大風速で目標に近付くことはあるが、強烈な引力で元の62キロにいつも吸い寄せられてしまう。体調を崩して定期的に実施していた運動が継続できなくなったとか、出張が入ってリズムが崩れたとか、それこそ在宅生活が始まって運動の機会が減ってしまったとか、人生の至る所に「体重コントロール型」のダイエットを阻む罠が仕掛けられている


何度となく失敗した結果、「体重ではなく生活習慣をコントロールする」、「目標体重にそった生活習慣を作り上げる」というように発想を切り替えたら、体重と体脂肪率の管理が容易になった。体重というのは現在の生活習慣の結果である。短期的に摂生をして体重を減らせば、元の生活様式に戻ってもその体重をキープできると思っている人がいるが、それは間違いだ。それぞれの生活習慣に紐づいた体重があるため、目標体重を実現するために大事なのは、短期のダイエット施策をうつことではなく、自分が継続でき、自分が望む体型にそった生活習慣を作っていくことである。


この発想は在宅勤務下でもあてはまり、私も状況の変化にあわせて細かな調整を重ねている。例えば、在宅生活が始まった当初は散歩などをして、一日の歩数は通常の1万歩よりも多い、1万2千歩くらいを維持していたのに体脂肪率が増えがちになった。会社に行くと会議と会議の合間に会議室を移動するためにちょこちょこ動くが、自宅でテレワークをしているとリモート会議から別のリモート会議に入るだけなので一日座りっぱなしになってしまっていた。まとめてどかっと体を動かすのにプラスして、ちょこちょこ体を動かしたほうが良いように思い、会議の合間に逆立ちをしたり、筋トレや柔軟体操をするようにしたら体脂肪率が元に戻っていった。一日の歩数を8千歩ほどに抑えても、隙間時間に頻繁に体を動かせば、体重を維持できるし、筋トレの効果などで体脂肪率も低く抑えることがわかり、今はそういう生活習慣にしている。体重や体脂肪率を毎日測り、生活習慣を常にチューニングしていくことだ大事だ。


2. 生活習慣をコントロールしやすい在宅生活のメリットを活かす

体重や体脂肪率ではなく、生活習慣をコントロールすることの重要性を述べたが、在宅勤務のメリットはより生活習慣をコントロールしやすいことにある。自分のありたい身体にそった生活習慣を作り、維持するためには、この「コントロール」という考え方がとにかく大事だ。例えば、運動する暇も気力もないくらい仕事が忙しいと、とりうる生活の選択肢が狭まり、コントロールがききにくくなる。また、出張や病気の時も、生活の自由度がせばまるので、コントロールが難しい。常時激務で中々運動の時間がとれないという人は、その忙しさを解消することが細かなダイエット施策をうつよりずっと大事だ。


在宅勤務というのは、よくよく意識してみると、選択肢と自由度を大幅に広げてくれる。会議と会議の合間に逆立ちするとか、空いた10分間で散歩や筋トレをするというのは在宅であるからできることであり、やはりオフィスでおもむろに逆立ちや筋トレをするのは難しい。在宅勤務開始当初は、「きちんとした仕事はきちんとした身なりから」というポリシーに従い、襟付きシャツとスラックスで仕事をしていたが、その格好だと逆立ちはしにくいし、ちょっとできた隙間時間に軽く散歩にいくということも難しいので、最近はランニングシャツとパンツにパーカーをはおるみたいな格好で仕事をして自由度を高めている。


会社にいかなければ、付き合いでランチや飲み会にいく機会も減るので食事をコントロールすることも容易になる。自宅の冷蔵庫にすぐにアクセスできるので、作り置きしているサラダチキンをお昼に食べたり、そこに野菜をちょい足ししたり、プロテインを補給したり、オフィスにいる時と比べて色々な調整がしやすい。


上記の通り、在宅勤務というのは、自分が作り上げていく生活習慣の選択肢を広げ、コントロールをきかせやすい。通勤を通して半強制的に一定以上の運動を意識することなくしていた人は、惰性に流されるとその分の運動量が減るだけなので、テレワーク下の生活スタイルを作り上げようとする意識を持つことが第一歩だろう。

 

3. 家族と一緒に運動を習慣化する

何かを継続する時に、自分一人でやるのではなく、誰か他の人とやる方が継続率が高くなる、ということは良く言われる話だ。YouTubeで紹介されている10分くらいのエクササイズなどは、2〜3日続けることは容易いが、一人で1年以上続けることは私には至難の技であった。が、家族と一緒なら思った以上に習慣化しやすいことがわかったのは収穫であった。

アメリカの学校に通うわが家の子供たちは全てオンライン授業であり、その運動不足が大きな心配事であった。なので、昼ご飯の前にYouTubeに投稿されている腹筋と開脚ストレッチの動画を二本こなすことにした。細かな調整はしつつも、昨年の3月に在宅生活が始まってから1年間継続できている。きっかけは子供の運動不足解消であったが、この手のちょっとした運動をここまで継続できたことは私自身が今までなかったので、私もその恩恵を受けている。自分以外の人と一緒にやるこの効果に加えて、「子供の手前さぼれない」という意識が私の場合は働いたようだ。

始めた当初は、開脚して前屈するも、肘と床の間に無限の広がりがあり、家族から「お父さん、本気!?」と馬鹿にされていたが、地道に続けることによって、今ではおでこどころか顎まで床につくくらい柔らかくなった。また、腹筋も40秒間で8種類のサーキットトレーニングを1年続けているので、かなり引き締まってきた。在宅生活というのは、家族との時間が増え、何かを継続的に取り組み、良い習慣を作る絶好の機会なので、運動に限らず是非何かに取り組むことを勧めたい。

 

以上、在宅生活で健康体を保つ上で、私が重要と考え、実施している三つのことを紹介させて頂いた。日米の環境の違いというのは勿論ある(例えば、アメリカには色々な美味いものが手軽に買うことのできる「日本のコンビニ」がない!、とか)が、「体重ではなく、生活習慣をコントロールする」、「理想の体型に紐づいた生活習慣を作り上げる」という原理原則はどこでも変わらないことは最後に強調したい。皆さまがより健康な身体を手に入れるための少しでも参考になれば。

『夢を叶えるための勉強法』 受験は自己肯定感を養う絶好の機会

私は都内の中高一貫の私立学校に通っていた。高校受験はしなかったので、高1の時がおそらく学力の底辺であった。全国模試などは中学受験以来受けたことなどなかったのだが、大学受験に向けて自分の位置を把握するのも大事だろうと考え、高1の終わりに河合塾の「ハイレベル模試」なるものを受けた。それなりの進学校の中で、上の下くらいの成績をとっていたので、「まぁ、偏差値は50の後半くらいで、場合によっては60台にいくこともあるか」と思ってのぞんだが、軒並み40台前半であった上に、英語が30台という木っ端微塵の玉砕ぶりで、鈍り甘えた心を入れ替えるのに良い機会となった。

模試の結果でやる気にスイッチが入り、高2の初旬くらいから緩くロングスパートを開始し、結果としては、志望していた国立大学に無事に現役で合格することができた。今から思い返しても当時はよく勉強したものだと思うが、努力の結果が模試や校内考査に形として表れることでやる気を保ち続けることができたのが大きい。スタート地点が低かったことの恩恵をうけたとも言えなくはないが、受験勉強というのは努力の成果が形に表れやすく、私には取り組みやすかった。。

日本の大学受験は、その出題内容のマニアックさや寒い冬の時期の一発勝負加減など、多くの問題があることは確かだ。が、「勉強の効率性をあげること」と「惜しまぬ努力を続けること」の掛け算によってほぼ確実に成果をあげることができるその仕組は、若者の「正しい努力をすれば報われる」という自己肯定感を育むことの役には立っているのではないだろうか。少なくとも、私はそういう単純明快な若者であった。

 

そんな私ももう45歳のど真ん中のおっさんであり、大学受験などについて思い出したり、考えたりすることもとんとなかったのだが、本日紹介する『夢を叶えるための勉強法』は、そんな30年近い前の青春の一コマを思い出させてくれた。 

夢を叶えるための勉強法【電子特典付き】

夢を叶えるための勉強法【電子特典付き】

  • 作者:鈴木 光
  • 発売日: 2020/12/11
  • メディア: Kindle版
 

 勉強法と言っても大学受験や資格試験向けの勉強方法が中心なので、本書は本ブログの読者のストライクゾーンには恐らく入らない。なんで本書を手にとったのかと言うと、隔週で、私、妻、娘と息子で何か本を読んで書評を書くということをしばらく続けているのだが、たまには全員で同じ本を読んで書評を書いてみようということになり、小6の息子と45歳のおっさん交わり用のない中間点を見つけようとしたら本書にいきついたからだ。筆者の鈴木光女史は、人気クイズ番組『東大王』のレギュラーであり、家族で視聴しており、お馴染だからというのももうひとつの理由だ。

 

日本の受験戦争をくぐり抜けた自分の経験からして、本書は日々学校の勉強に取り組む小中高生には強く勧めたい。体系的に効率的な勉強方法がパッケージ化されているという手堅さがあると共に、常に自分の頭で考えてより良い勉強方法を模索している筆者の姿勢を学ぶことができるのも大きい。まずは、本書に書かれている勉強法を真似して、それを土台に自分の適性にあわせて調整することができれば、受験でそれなりの結果を残すことができるのではないだろうか。また、本書を読めば、受験戦争のトップランナーである彼女は、気づいたらそうなっていたわけではなく、とてつもない努力と改善を重ねて今の位置にいることは容易に理解でき、努力なくして結果はついてこないということも学ぶことができるだろう。

 

受験世代の若者には大いに参考になる勉強法が本書では沢山紹介されているが、筆者の受験勉強に対するスタンスは興味深く、強く共感できた。

勉強というジャンルが「努力すれば報われる」という体験をするのにとても適しているからです。

勉強は結果が点数としてすぐ表れるので、漢字や単語などの確認テストのようなものであれば、少し勉強法を変えたり勉強時間を増やしたりすることで目に見えて頑張った結果を得ることができます。
『夢を叶えるための勉強法』

社会にでて仕事を始めると、正解のない問題に対して、少ない材料で決断を迫られることが多々ある。正解に近い決断をし、それを成功に持って行くために死に物狂いで努力をしても、結果が伴わないことも間々ある。また、呪われているんじゃないかと思うくらい歯車が逆回転し、悪いことが重なる悪循環に陥ることも少くはない。そんな難しい状況に数えられないくらい直面したが、いつも打開の起点になったのは「今は状況はよくないが、正しい努力を一生懸命重ねれば、必ず事態はいつかは好転する」、「うまくいかないことがあっても、きちんと努力をすれば長い目で見れば必ず結果として高い勝率をえることができる」という、正しい努力は報われるという成功体験から紡ぎ出された自己肯定感だ。そして、その自己肯定感を育むきっかけが私にとっては受験勉強であった。本書を手にとった若者が、正しい努力の仕方と共に、努力を重ねて成果をあげてきた筆者の姿勢を学び、多くの自己肯定感の強い若者が育ってくれると、日本はもっとよくなると思う。 

『潜入ルポ amazon帝国』の「潜入ルポ」部分が短すぎる理由

『ユニクロ潜入一年』に引き続いてジャーナリスト横田増夫氏のルポ『潜入ルポ amazon帝国』を手にとる。わが家は家族全員がKindleを持ち、書籍の購入はほぼamazonでし、書籍以外のオンラインの買い物の大半もamazonでするというヘビーユーザだ。幸か不幸かEchoにはまだ手をだしておらず、生活の隅々まで支配されているという段には至っていないが、amazonなしの生活は考えずらいほど浸透はしている。自分の取り皿の上のソーセージの製造工程を見るような怖さは正直あったが、自身の生活に根ざしているものはきちんと理解する必要があるという気持ちで読んで見た。

潜入ルポ amazon帝国

潜入ルポ amazon帝国

 

 

初めにコメントしておくが、本書は『潜入ルポ amazon帝国』というタイトルとなっているが、10章ある章の中で「潜入ルポ」になっているのは、初めの1章だけである。その他の章は、元アルバイトや社員へのインタビュー、他国のジャーナリストへの取材、宅配ドライバーの車に乗り込んでのルポ、マーケットプレイス出店社への取材など通してamazonを多角的に捉えようとするノンフィクション作品になっている。食べているソーセージの中身を知るという私の目的は達成された点で、本書は私の期待値を満たしてはいるが、『ユニクロ潜入一年』のようながっつりした潜入ルポを求めていたので、そこは正直若干期待外れであった。

 

が、この「潜入ルポ」部分の短さがamazonの倉庫の職場としての特徴をとらえているとも言える。要するに書くことがあまりないのだ。本書の1章は筆者自身の「潜入ルポ」であり、渡された端末に従って黙々と筆者が注文をピッキングする様が描かれている。倉庫作業の実情が赤裸々に描かれており、最初は非常に興味深く、読み応えがある。が、一度作業の流れや仕組みを書いてしまうとそれ以外に書くことがなくなってしまったかの如く、文章が細っていってしまっているのが面白い。それは何故かと言えば、amazonが倉庫作業員を完全に大きな機械の歯車の一つとしてしか扱っていないことに起因する。倉庫作業のピッキングなんてamazonに限らず多かれ少なかれ歯車の一つだろうと思う人もいるかもしれないが、そういう人こそ本書の1章を読んでみてほしい。歯車に0.1分の魂も許さないamazonの冷徹ぶりをうかがうことができる。4章ではヨーロッパで同様に潜入ルポを書いたジャーナリストへの取材が紹介されているのだが、他国でも全く同じ状況であることが確認でき興味深い。イギリスのパブで取材をした相手のジャーナリストの一言が印象的でああった。

ここのパブだって、飛びぬけて時給が高いわけじゃない。けれど、ちゃんと働いている人を大切にすれば、人は集まってくるものなんだよ。アマゾンは、人を人として扱っていないことに最大の問題があるんだ。

 

『ユニクロ潜入一年』との対比で見るのも面白い。ユニクロのルポではその職場に、とっつきやすい人もいれば、高圧的な人もいたりして、その職場には人間の顔があった。それぞれ描くことのできるキャラクターがあり、千差万別のお客様が相手であることもあり、描くエピソードにことかかなかったのではないか。また、柳井会長がアルバイトも含めて全員に経営者意識を求めており、それそのものはアルバイトにそこまで求めて檄をとばすってどういうこと?、という疑問はあれど、働く人の潜在能力に期待するという点でamazonと対極で面白くはある。が、amazonは、物流業務についてはそこをマネージする管理者も含めて、「仕組み」に統合された人間性の一切排除された職場であり、一緒に働いている人から雑談をとおして何かを引き出すことも至難の技であることが、伝わってくる。この書くネタの無さ感が潜入ルポとしての読みどころであるというのは逆説的でありながらも興味深かった。

 

ステイホーム生活でamazonでぽちぽち買い物をしている方は多いと思うが、そういう方は興味を持って読めることは間違いないし、付き合い方を考える材料に溢れているのでオススメの一冊である。

『16歳のデモクラシー』

本書『16歳のデモクラシー』は、佐藤優氏が埼玉県立川口北高校の2年生を対象に、ラインホルド・ニーバーの『光の子と闇の子』を題材に民主主義について講義をしたものを書き起こした講義録だ。昨今、政治の混乱と民主主義の危機が声高に叫ばれており、「民主主義」は私の2021年の勉強テーマの一つだ。

 

本書は高校生への講義録という形をとっているため、勉強のとっかかりとしては調度良いと正直高を括っていたのだが、思っていたより遥かに難解で不勉強を痛感する羽目になった。第二次世界大戦末期に民主主義の構造的な脆さとその原理の正当性を主張したニーバーの『光の子と闇の子』を理解するためには、古代ギリシアまで遡る民主主義の歴史、フランス革命から第一次世界大戦を一区切りとした十九世紀史、西欧社会の基盤となっているキリスト教の歴史と思想など、幅広い知識が求められるが、博覧強記の筆者がもれなく解説をしてくれるところは本書の魅力の一つだ。

 

とは言っても、ある程度前提知識があるところは読み進めることができるが、勉強不足のところは本書を読めば、そのまま理解までもっていってくれるという懇切丁寧な初学者向けの解説本までにはなっていないので、個別のテーマについて、さらに深堀する勉強を求められる点は、指摘しておきたい(少なくとも私には更なる勉強が求められている)。そういう点で本書は、読めばパッケージ化された知識がもれなくはいっているという構成にはなっていないが、その反面、何故学習が必要なのか、学ぶことの楽しさ、どうやってわからないことを学んで行けば良いのか、という勉強の要点が熱意をもって語られており、「あぁ、わからないからいいや」とならずに、「もっと学習して理解できるようになりたい」という知的好奇心が刺激される形になっており、そこも本書の良い所だ。筆者は強面のイメージがあるが(事実、顔は怖い)、本書からは若者好きという佐藤氏の私の知らなかった一面が垣間見えて、それも面白かった。

 

アメリカ大統領選挙は、過去に例をみない形での決着がつき、バイデンが新大統領として就任することになった。大きく分断されたアメリカ、その民主主義の危機、新大統領がどのように舵をきるのか、など目が話せないアメリカの民主主義を考える題材も本書には一杯つまっている。「お金が最も価値がある」というアメリカの拝金主義的な風潮も、民主主義の成り立ちを振り返りつつ、啓蒙主義やロマン主義などの言葉を使いながら見事に切り出せれており、大変勉強になった。が、ニーバーの『光の子と闇の子』を読みこなせるかといったらまだその段にはないので、2021年により学習を重ねて、現代社会をもう少し見通せる教養をつけたいと思う。向学心が何にしても大事なので、それがかきたてられたという点では、2021年の良い読書のスタートとなった。

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