Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

習慣の効用と功罪

友人の薦めで“WHAT THE MOST SUCCESSFUL PEOPLE DO BEFORE BREAKFAST”を読んだ(Kindle Storeでのみの販売)。要点をまとめると、

  1. 朝食前の時間は邪魔の入りにくい最もコントロールのしやすい時間帯である
  2. 意思の力というのは一日の終わりになるほどに減退するものである
  3. 緊急ではないが、重要なことは、コントロールしやすく、かつ意思の力が充実している朝食前に実施するのが良い

という感じ。
山のようにやることがあると、長期的な視点で見て非常に重要なことは、どうしてもその瞬間の優先順位により後回しにされ、結局手付かずになることが多い。日々の忙しさに忙殺されず、長期的に重要なことをこなすには、早朝の時間を有効活用することが効果的であり、成功している人によく見られる特徴であるとのこと。簡潔に、要点がまとめられておりなかなか面白かったし、最近サボリ気味な早起きを再開し、自己投資の時間をもっと確保せねばと思いを新たにするきっかけとなった。


いいことが色々書いてあるが、その中でも一番興味をひいたのは下記。

“Getting things down to routines and habits takes willpower at first but in the long run conserve will power,” says Baumeister. “Once things become habitual, they operate as automatic processes, which consume less willpower.”
何かを習慣化したり、決まった手順におとすことは、始めは強い意志の力が必要となりますが、長い目で見ると負担は逆に軽減されます。一度、習慣化し、決まった手続きとしてながれるようになれば、それを実施する時に求められる意思の力はぐっと減ります。
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物事を習慣化することの効用を「負荷の軽減」という視点でとらえていることが私には新しかった。習慣化の利点を私は「継続」という点でしかみていなかったが、筆者がいうとおり、一度習慣化してしまえば、その負荷は確かに格段に減る。本文では歯磨きが例にとられている。食事の後に洗面所に行き、歯を磨くというのは、それなりの負担ではあるが、一度習慣となってしまえば、初めほどの負荷はないし、むしろしないことに違和感を感じるようになるものだ。
筆者は習慣化まで持って行くことが、とにかく大事であり、そのために最初はハードルを下げるとか、進捗を可視化するとか、自分に多めにご褒美をあげるとか、いくつかのアイデアが共有されており、参考になる。


一方で、習慣化というのは純粋に善であるかというと、実はそうではなく功罪もある。その点については、最近読んだGuy Kawasakiの"Enchantment"で下記のようにふれられており示唆に富む。

Enchantment: The Art of Changing Hearts, Minds and Actions

Enchantment: The Art of Changing Hearts, Minds and Actions

Most of the time, habits simplify life and enable fast, safe, and good decision. But they can also prevent the adoption of a new idea that challenges the status quo.
ほとんどの場合は、習慣は日々の暮らしをよりシンプルにすると共に、迅速で、手堅く、妥当な選択をとることを容易にする。しかし、一方で現状を打開するような新しいアイデアを採用する上での阻害要因となりうる点も見逃せない。

一度習慣として取り込まれてしまうと、その習慣がうまく機能しなくなり、見直す必要が出た場合でも、なかなかやめることができない、というのがGuy Kawasakiのポイント。これは企業の業務プロセスによく起きがちな話で、「なんでこんなことやっているのか」と聞くと、前にいた人から引き継いだから以外に理由がないということはよくある。
我が身を振り返ってみても、週末なんとなく家族と買い物に出かけるとか、長く読んでいるからというだけの理由であんまり面白くないブログを読んだり、あまり効果のない定例会への参加など習慣として染みついた無駄というのは結構あるものだ。


習慣というのは内容次第でプラスに働くこともあれば、マイナスに働くこともある。また、プラスに働いていた習慣が、状況が変わりマイナスに転じることもある。こう考えると、習慣として続けること、現在の習慣であるが見直すべきこと、習慣として生活に新たに取り込むことを決めることは自己管理を考える時に中心にすえるべき重要なテーマのように思える。
時間、意思の力などの自分の有限性と、善なる習慣をマッピングする、月に一度はそういう検討をすることにしよう(早朝に・・・)。

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