Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

新卒で入った会社を2−3年で辞める前に考えるべきこと

先日、会社の若者から転職について相談をうけた。今年入社3年目のうちの会社では珍しい新卒組。色々話を聞いてみると、どうも危なっかしい。転職候補の会社が危なっかしいというのではなく、転職時に考慮すべき事項がきちんと検討、評価されていないのではないかという危なっかしさ。キャリアは自分の選択の積み重ねなので、新卒入社3年目であっても、転職先を本人が決めたのなら、それについて周囲がどうこういう話でもない(と、私は考える)。ただ、転職前に考慮すべき事項を考慮してないという状況については、先輩として「もうちょっとこういうことも考えておきなさいよ」と助言しても良いのではないかと感じ、思いつくままにいくつかのポイントをアドバイスした。キャリアの長い人の考慮事項と異なる点もあり、私としても新たな発見があったので、今までのエントリーとかぶる部分もあるが、まとめてみたい。

片道切符か、往復切符か

「今勤めている会社と同じ業界、同規模の会社に再度戻ってくることできそうか?」という問いへの答がYesなら往復切符、Noなら片道切符。往復切符なら、今回の転職がうまくいかなかったとしてもリスクはそれほど高くないが、片道切符なら将来の選択肢が大幅に狭まることになる。既に手に職がついており、自らの専門性で食っていける実力が備わっていれば、あまり片道、往復にこだわる必要はないが、まだそれほどの専門性がない場合はその切符が片道か、往復かはちゃんと理解した上で判断した方がよい
善し悪しは別にして、伝統的な大企業から新興の中小企業への転職はしやすいが、その逆は難しい。手に職がなければなおさらだ。大企業がいいなんて言う気はさらさらないが、中小企業で学べず、大企業でこそ学べることもある。自分の切符が片道なら、本当に「いま」がそれを使って旅立つ時か否か、もう1-2年転職を遅らせることにより失うモノ何か、ということを考えた方がよい。
私も従業員が数万人の会社から60人の会社に転職したが、人生の先輩方に相談した際に「お前、それは片道切符だぞ、そんなに急ぐ必要が何故ある?」とさんざん諭された(まぁ、それでも飛び出しちゃったし、選択として正しかったと思っているが・・・)。

「早すぎる最適化」になっていないか

「好きを貫け」、「喜んで週末働きたくなるような仕事を選べ」、「There is no reason not to follow your heart.」とか、色々言われている。そういうことを聞き、「今の自分の仕事は本当にやりたいことではないのではないか」とか、「この業界は自分に向いていないのではないか」とか、若者が色々思い悩むのもよくわかるし、それ自体は悪いことではない。入社2−3年もしてくると苦労も多くなり、手詰まり感を感じ始め、他の仕事、業界に目移りする時期でもある。ただ、今の会社がつまらなく思え、外の機会に対する期待感が膨らみ、「自分はもっとやりたいことがある」という思いが大きくなった時、それが「早すぎる最適化」ではないか自問して欲しい
「やりたいことを追い求め、キャリアのゴールに一直線に進む」というのは聞こえはいいが、そのゴールが正しいのか、また一直線に思えている道が本当にそうなのか見極めることが重要で、そのために入社2−3年の経験というのは結構心もとない。とりうるオプションが沢山あり、自分の可能性に一定のあたりがつくと、最適化をしやすくなるが、限られた選択肢の中で、自分が何者かよくわからない状況で、最適化を試みるのはキャリアにおいては博打的要素が強く、将来の選択肢を単に狭めるリスクがあることを認識しておいた方が良い。
ゴールにフォーカスして前に突き進むか、最適化を急がず選択肢を広げるべく踊り場に留まるか、というのはキャリア形成において大事な意思決定事項だ。今自分がどちら局面にいるのかを見極めた上で判断して欲しい。

ジョブホッパーになるリスク

一つの会社での在籍期間が短く、転職経験の多い人のことをジョブホッパーという。中途面接の際に履歴書を見て、2−3年で転職を繰り返し、勤めた会社の数が4社以上だと「あぁ、ジョブホッパーだな」と思う。ジョブホッパーというのは、中途面接ではかなり嫌われる。複数の会社で働いた幅広い経験が高く評価されることはあまりなく、「どこの会社でも高く評価されることはなかった人」とか、「しんどい局面でそれを打破する踏ん張りのきかない人」というような眼鏡で見られることが多く、ならなくて済むならそれに越したことはない。
新卒として入った会社を2−3年で辞めるということは、ジョブホッパーにリーチがかかると言っても過言ではない。次の会社が自分にとっていい会社であればよいが、2−3年して再び転職をするような事態になると、ジョブホッピングのスパイラルに入ることになる。「履歴書が汚れる」という表現があるが、履歴書はきれいにこしたことはない(特に手に職がつくまでは)。今回の転職がそういうリスクを犯しても決断すべき魅力あるものか、十分に評価した方が良い。

色々な人の意見を聞く

キャリア形成に答えや王道はない。上記であげたことだって、当てはまる人もいれば、当てはまらない人だっているので参考情報にすぎない。答えや王道のない意思決定事項をを限られた経験の中で正しくするために、色々な人の意見やキャリア観に多く触れることは死活的に重要だ。実際に多くの人の意見を聞けば、実に多様な考え方があることがわかる。同期や友人だけでなく、キャリアを長く積んでいる人に是非意見を求めて欲しい。
また、そうやって人に意見を求める過程で、自分の現在のステータスや考え方を披露することで、くしょっとした自分の考えが整理され、まとまっていく点も重要なことだ。反対意見や自分の見解が論破されることを恐れず、そして「最後に決めるのは自分」という強い決意を持って多くの人と会って欲しい。

最後に

こうやって考慮事項をあれやこれや書くと、私が新卒ではいった会社を2−3年で辞めることを推奨していないように見えるかもしれないが、決してそんなことはないことを最後に強調したい。というのも、私の知人の中で2−3年で会社を辞め、明らかにその判断がその後のキャリア形成上、正解であった人は何人もいる。また、1年すら在籍する価値のない会社もこの世の中に残念ながら多く存在することも事実だ。本エントリーで強調したかったのは、キャリアについての大事な判断をする前に、きちんと考えるべきことは考えた上で、熟慮断行しましょう、ということだ。本エントリーを読んだ人の中に、正にその渦中の人もいるかもしれない。そういった方々に少しでも参考になれば幸いである。

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