夏休みを利用して、『フューチャー・オブ・ワーク』をあらためて読んでみたのだが、やはりこれは名著だと思う。分散化とか、オープン化とか、参加型とか、この手の言葉は使いやすいように見えるのだが、実は危険な思考停止ワードであることも忘れてはならない。流行の言葉だけに、それを使えば一丁あがりでそれっぽい記事や本がかけるのだが、その言葉の本質的に意味するところが何なのかをきちんと自分なりにとらえた上で使わないと、言葉に踊らされて思考が深まらない。本書はこういった思考停止ワードに真正面から取り組んでおり、分量はコンパクトであるにも関わらず骨太感が非常に強い。
ここでは「分散化」を、「問題にかかわる者を意思決定に参加させること」と定義する。フューチャー・オブ・ワーク (Harvard business school press)
- 作者: トマス・W.マローン,高橋則明
- 出版社/メーカー: 武田ランダムハウスジャパン
- 発売日: 2004/09/28
- メディア: 単行本
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Let's define decentralization as the participation of people in making the decision that matter to them.
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜選択の時〜 P.24
以前読んだ時も心に残ったのだが、あらためて読んでみて上記の定義は最近の時流を読むときに頭においておかなければならないことと強く感じた。"分散化=decentralization"を単なる権限委譲ととらえるのと、「問題にかかわる者を意思決定に参加させること」とでは、あれこれ考える時の思考の広がりにかなり差がでる。
オープンソースやソーシャルブックマークを権限委譲という言葉で説明しようとすると、しっくりこないし、今ひとつ思考も深まらない。一方で、オープンソースを「あるソフトウェアの使用者を、そのソフトウェアをどのように良くするかという問題への意思決定に参加させる開発手法」、ソーシャル・ブックマークを「特定のコミュニティの参加者を、インターネット上のどの情報がコミュニティにとって重要かという問題への意思決定に参加させるウェブ・サービス」ととらえると、より本質的な理解が深まる。
また、流行の参加型アーキテクチャというのも、ただ多くの人が集まれば良い、皆の意見や考えを集めて集約すればよいということではなく、「そこで解決しなければならない問題は何で、既存のテクノロジーを使って、どういう人を、どのように問題解決の意思決定に参加させるのがよいのか」ということがスタート地点にならなければならないという発想につながる。
他にも目から鱗のおちる名言があるので、また別途紹介をしたい。