Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

『投資の大原則 人生を豊かにするためのヒント』 若者が読むべき3つの理由

シックで重厚な表紙、「投資の大原則」という背筋の伸びるタイトル、バートン・マルキールとチャールズ・エリスという著書の厳つさから、とっつきにくそうな印象を受けるが、本日紹介する『投資の大原則 人生を豊かにするためのヒント』は、誰にでも実現可能な資産形成の原理原則が、わかりやすく簡潔にまとめられている名著だ。時空を超えて賢人から学びをえることができるという読書の素晴らしさを再認識させられるような本であった。

 

老後に向けた資産形成というワードが頭にちらつき始めた私のような中年にも参考になるが、本書はむしろ若い世代に是非手にとって頂きたい。本エントリーでは、内容を紹介しつつ、私が何故若い人に本書を推すのかを説明していきたい。

 

投資の王道を学ぶことができる

日本では株式投資というと、何故かデイトレードやビットコインのような投機的なイメージがつきまといがちだ。内容が刺激的で注目が集まりやすいからだと思われるが、そういう「邪道」の投資のイメージが先行し、株式投資を敬遠する人が多いのは本当に残念なことだ。学びの入り口は「王道」であるべきで、本書は文字通り投資の世界の賢人が指し示す「投資の王道」である。

  • インデックス・ファンドを活用した分散投資の重要性
  • 定期定額長期積立投資の有効性

などの大原則が非常にわかりやすく、データを元に説明されているので、若い人が投資を学ぶための最高の教科書といっても過言ではない。また、本書では、バートン・マルキールとチャールズ・エリスが「王道」からそれた投資をしていることも正直に語られていることも見逃せない。杓子定規な原理原則だけでなく、賢人たちが脇道へ逸れる際の判断基準を学べるのは本書の売りの一つだ。

 

投資で大事なのは時間を味方にすること

「もっと早くこの本に出会いたかった」、それが本書を読んで一番初めの感想た。何故かという、本書は、投資の中でも「長期投資」を前提に書かれており、本書の学びは若ければ若いほど有効に活かせるからだ

投資をするのにタイミングは大切だ。しかし、タイミングよりも、いつから投資を始めるかというほうが重要だ。

『投資の大原則 人生を豊かにするためのヒント』 驚異の72の法則

 本書は投資をするのであれば早ければ早いほうが良いという立場をとっている。何故か、それは投資のリターンを再投資し、それを長く続ければ続けるほど複利の力を利用することができるからだ。その一例として「72の法則」というシンプルな法則が紹介されている。これは非常に単純だが示唆に富む法則で「”お金が2倍になる年数” X ”リターンの年率”=72」という等式だ。例えば、年利が6%の投資をし、そのリターンを全て再投資に回すと12年で元本が2倍になるということが導き出せる。若い頃からこつこつと貯めるだけでなく、そのリターンを再投資し続けることで雪だるま式に資産を増やすという考え方を簡潔かつわかりやすく教えてくれる。私も、若い頃から貯蓄はしていたし、個別銘柄投資はしていたが、銀行貯金の利率は皆無、そして配当はそのまま銀行預金口座に貯蓄していたので、複利の恩恵を受けることができなかった。若い人ほど時間を味方につけることによる効果が高いので、「複利の力」を理解して、資産形成に活かしてほしい。

 

節約と貯蓄の重要さを学ぶ

『投資の大原則』という投資の本でありながら、本書で取り扱われる一番初めのテーマは、投資の仕方ではなく、節約と貯蓄の仕方であることが何とも心憎い。筆者たちは、余計な出費を抑えることが、長期投資を成功に導く一丁目一番地であることを知っているのでこういう構成にしているのだろう。「こうすれば儲かる」という投資理論を記載した本はあれど、その前に「種銭を作るための節約の考え方」、「再投資を実現するための蛇口の締め方」を懇切丁寧に説明している本は少ないのではないか。理論より実践に重きを置く、筆者たちの質実剛健な姿勢が良く表れている。若い時は、とかくあればあるだけ使ってしまいがちであるが、節約という習慣が長期的には人生を豊かにするという教えからスタートするというのが何とも教育的ではないか。



本書は高校生でも十分に読める内容であるため、高校生の課題図書などにすると、日本人の金融リテラシーの大幅な向上につながるであろう。本エントリーでは、若者に推す理由を中心に記載したが、「王道」を理解し、早く始めることが大事なのは、別に若者に限った話ではないので、広く多くの方に手にとって頂きたい。

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