私は色々な価値観が入り乱れつつ、それぞれの個人が自分の人生を自由に生きているアメリカが気にいっている。この国では「いい歳をして!」とか「公衆の面前で!」みたいな世間の目は存在しないというか、そういうことを気にする人は殆どいない。
ジムに行けば自分の身体の一番自信がある部位をこれみよがしに強調した服を来ている人が多いし、肌寒くなった昨今通学する高校生の多くは、「お前さん、それパジャマだろ?」というような暖かそうなスウェットのパンツを履いている。
そんな自分自身の人生を自由に生きるアメリカ人エピソードの中で私が気に入っているのが妻のコーラスクラブでの話で、今日はそれを紹介したい。
私の妻は現地のコーラスクラブに参加している。コミュニティ・カレッジの生涯学習プログラムを活用したクラブであり、アメリカの教育制度の懐の深さも感じる。練習はかなりハードだが、老若男女幅広い人たちが参加しており、結構ご高齢の方も多い。1年に2回、大きなコンサートホールでライブをするのだが、それに向けて13-14曲も暗譜をしないといけないので、なかなか大変そうだ。
とあるライブの舞台衣装について、以下の指示がクラブのディレクターより伝えられたらしい。
ディレクターは以前はハリウッドでも活躍していた本格派。かなり情熱的に指導をしつつも、全体の構成から舞台演出までを一手にコーディネートするやり手だ。
私の妻は青系が好きなので、自分は青で連絡しようかしら、と思っているところ、その申込みを開始してからそれほど時間をおかずにコーディネータから、急に以下の連絡がきた模様。
比率でいうと女性が多いのでわからなくはないが、妻曰く色の制限がかかったのは結局「ピンク」のみだという。「ピンク」どんだけ人気なんだよ。
私もそのライブを見に行ったのだが、ステージの上は確かにピンクが最大勢力のようだ。そして、よくよく見てみると、自信満々かつとても幸せそうに「ピンク」のドレスを纏ってステージに立っている方の殆どはおばあちゃんである。若い女性メンバーに物怖じせず、いの一番に手をあげたおばあちゃんたちによって占められたピンク枠。誰も「この歳でピンクなんて」とか、「若い子を差し置いてピンクなんて」などと気にしないのだ。
そして、ピンクに限らず原色の衣装を纏った特に高齢の男性・女性が。「このステージで歌うことこそが、私の人生の楽しみ」とばかりに、楽しそうに歌っている姿が印象的であった。勿論、舞台の完成度も非常に高く、私自身もパフォーマンスを大いに楽しむことができたが、それ以上に歳をとっても自分が生きたいように人生をいきる皆さんに力をもらった。
アメリカでは、私生活でも仕事でも、「あなたはどうしたいの?」ということを良く聞かれる。そして、「自分はこうありたい」と思っている人たちを応援するという文化が社会の隅々まで行き渡っている。ピンクの衣装で楽しそうに歌うおばあちゃんたちを見ながら、世間体よりも「自分の生き方」を追求することが、この国ではずっと大事なんだってことを再認識した。