Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

新卒で入った会社をすぐに辞める人が理解しておくべきこと

先日とあるYouTubeの番組で「【新卒】すぐ退職するってダメ?自分にあった働き方とは?」という企画をやっていた。厚生労働省の調べによると、大学を卒業した新卒の32.3%が3年以内に会社を離職する模様。この傾向はここ30年くらいは変わらないようだ。3割が3年以内でずっと辞めているという統計は、若者の我慢強さも変われなければ、いつの世も長く勤めるに値しない会社が沢山あるという現実を表している。

私は、日本で働いている時は新卒の後輩から不思議と頼りにされ、転職などの相談を受けることが多かった。私は別に3年以内に離職をすることが悪いこととは思わない。他によりよい将来の展望が開けていればチャレンジしろよって思う。ただ、相談された際はいつも、辞める判断をする前に考慮すべきこと、理解しておくべきことを伝えていた。今回はそのポイントを短くまとめて紹介したい。

 

片道切符か、往復切符か

「転職先は、今勤めている会社と比べて知名度が低く、規模の小さい会社か?」という問いへの答えがYesなら片道切符、Noなら往復切符だ。往復切符なら、今回の転職がうまくいかなかったとしても、同程度の規模・知名度の会社に転職できる可能性が残るためリスクはそれほど高くない。が、片道切符なら、それ以上の規模・知名度の会社への転職は飛躍的に難しくなる。

既に手に職がついており、自らの専門性で食っていける実力が備わっていれば、あまり片道、往復にこだわる必要はないが、まだそれほどの専門性がない場合はその切符が片道か、往復かはちゃんと理解した上で判断した方がよい

今回が片道切符の場合は、次の会社がもしあわなかった時はさらに行先の限られた片道切符しか買えないということを理解しておこう。要するに結構リスクの高い賭けにでているってことだ。

 

将来性の下駄を履けるのは新卒だけ

新入社員面接で、今までの経験をどんなにアピールしようが、採用側はあなたの経験が直接仕事に活きるなんてこれっぽちも考えていない。その時点では何もできない新卒の将来性を判断するのが新入社員面接なのだ。

言い換えれば、新卒の面接は「何ができるか」は殆ど求められず、将来性という高い下駄を履いて勝負をしているのだ。その将来性プレミアムを最大限活用して到達できたのが今のあなたの勤め先であることは理解しておいてほしい。

初めての転職の際に下駄の高さは間違いなく新卒採用の20%くらいしかないだろう。減ってしまった80%を埋めるものは何か。それは専門性と経験だ。自分が仕事を通してえた専門性と経験は、失った将来性プレミアムを埋めるに十分であれば問題ないが、まだ何もえていないのであれば少ないカードでのゲームを強いられる、即ち選択肢が狭くなることは理解しておこう。

 

ジョブホッパーになるリスク

きれいな履歴書、汚い履歴書って表現が転職業界にはある。色々な要素があるが、「一つの会社での在籍期間が短く、転職経験の多い」ことをジョブホッパーと言い、短い勤務経歴が履歴書に入ることを、「履歴書が汚れる」という。要するに、新卒の会社を3年以内で辞めることは履歴書を汚すということだ。世の中きれいであるばかりがいいことではないが、きれい好きが多いってことは理解して欲しい。

ジョブホッパーというのは、中途面接では嫌われる。複数の会社で働いた幅広い経験が高く評価されることはあまりなく、「どこの会社でも高く評価されることはなかった人」とか、「しんどい局面でそれを打破する踏ん張りのきかない人」というような目で見られることが多い。

新卒として入った会社を3年以内で辞めるということは、ジョブホッパーにリーチがかかるということだ。今回の転職がそういうリスクを犯しても決断すべき魅力あるものか、十分に評価した方が良い。

 

「早すぎる最適化」になっていないか

「好きを貫け」、「喜んで週末働きたくなるような仕事を選べ」とか、色々言われている。そういうことを聞き、「今の自分の仕事は本当にやりたいことではないのではないか」とか、若者が色々思い悩むのもよくわかる。ただ、今の会社がつまらなく思え、外の機会に対する期待感が膨らみ、「自分はもっとやりたいことがある」という思いが大きくなった時、それが「早すぎる最適化」ではないか自問して欲しい。

「やりたいことを追い求め、キャリアのゴールに一直線に進む」というのは聞こえはいいが、「そのゴールが正しいのか」、というのは結構難しい問いだ。入社3年以内の経験というのは、その問いに答えるにはかなり心もとない。とりうるオプションが沢山あり、自分の可能性に一定のあたりがつくと、最適化をしやすくなるが、限られた選択肢の中で、自分が何者かよくわからない状況で、最適化を試みるのはキャリアにおいては博打的要素が強い。そういうリスクは理解しておいたほうが良い。

 

嫌いと付き合うのが会社員

「人間関係で退社を決意」っていうのは良く聞く。冒頭で紹介した動画にもそういう人がでてきた。が、だるい人間関係が存在しない会社なんてそうそうない

そもそも会社員っていうのは、「嫌い」と付き合う職業と言っても過言ではない。今の会社の人間関係、非効率性、無駄に嫌気がさして辞めたとしても、転職先が自分と気の合う人たちばかりで、効率的な最適化された職場なんて保証は何もない。というか、多かれ少なけれそういうものと付き合うのが会社員って職業だ。だから、転職の面接の際は、自分の異なる性格・利害関係の人と上手くやり、組織の抱える非効率的な面を短期的にはいなし、中長期的には解決した実績がある人が評価される。

どうしても「嫌い」と付き合うのが苦手な人はフリーランスや起業という道もある。もちろん、そこには専門性と経験が求められるし、会社組織では人事や総務がやってくれていた、だるい事務を自分でこなさないといけないという新たな非効率性がでることは理解しないといけない。

 

まとめ

以上、新卒で入った会社をすぐに辞める人が理解しておくべきことを紹介した。リスクを散々あげたので誤解されるかもしれないが、私は新卒で入った会社をすぐに辞めてはいけない、なんてことは言っていない。冒険家の角幡唯介さんの言葉だが、「後悔しないのは決断できた人生で、後悔するのは決断できなかった人生だ」と思う。自分のキャリア、自分の人生なんだから自分が主体性を持って決めればよい。
ただ、起こり得るリスクを事前にそれなりに認識した上で決断をすることは必要、と言っているだけだ。想定されていたリスクが顕在化しても、それは自分の決断なので、きっと乗り越える活力も生まれるだろう(生まれるべきだ)。が、「こんなはずじゃなかった」となってしまうと、折角の決断が後悔につながりかねない。
抑えるべきところ抑え、色々な人の意見や話を聞き、自分のキャリアと人生を前に進めるために熟慮断行して欲しい。Good Luck。

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