Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

『なんでもわかるキリスト教大事典』 キリスト教を横軸で捉える

先日読んだ『キリスト教から読む世界史』がキリスト教を歴史という縦軸で捉える本だとしたら、本書『なんでもわかるキリスト教大事典』は教派という横軸で捉えている。

 

なんでもわかるキリスト教大事典 (朝日文庫)

なんでもわかるキリスト教大事典 (朝日文庫)

 

 

筆者八木谷涼子女史はキリスト教徒ではないにも関わらず、その幅広い教派横断な知識を元に、協会運営者の勉強会などに登壇する変わり者だ。教会とそこにおける教徒の振る舞いなどの「現場」の視点からキリスト教は語る独特な視点は、工場という現場から製造業を語るような独特の凄みがあり、興味深い。


「第2章 比べてみよう教派いろいろ」は、本書の屋台骨であり、各教派の特徴が紹介されているが、その構成こそが本書の真骨頂。

  • 名称の由来と起源
  • 特徴と教義
  • サクラメント
  • 組織形態
  • 礼拝に行ってみると
  • 人の傾向
  • 外から見るとこんな側面も
  • 四方山話
  • 翻訳者や作家へのアドバイス

というフレームワークで9つの大きな教派が紹介されている。これはかなり大胆な構成だ。何が大胆かと言えば、フレームワークを作りあげるのは困難ではないと思うが、9つの教派について書き上げることが容易ではない。机上の学習だけでなく、教会に足繁く通い、各教徒と色々なことを話し込んでえた情報、そして多くの映画や文学作品やニュースなどの幅広いソースからとりいれたあらゆる知識が、これでもかとばかりにてんこ盛りに、惜しげもなく提供されており舌をまく。

が、その内容も決して冗長ではなく、簡潔なのがありがたい。「外から見るとこんな側面も」という箇所は、他の教派との対比が中心に語られつつも、他の教派からの「あいつらの、ああいう点はどうなの?」みたいな話もマイルドかつ知的に語られており興味がそそられた。そして、どのカテゴリーにも当てはまらなかったが開陳せずにいられなかった知識が「四方山話」にぶち込まれており、またこの「四方山話」の分量が半端でないところも本書の特色の一つだ。


長くアメリカに住んでいるの読書はもっぱらキンドルで、本書もキンドルで読んだ。キンドルの弱点はぱらぱらと拾い読みをしたり、手軽に読み返しができないことにある。本書は、是非実際の本を是非手元に置いて、たまに見返したり、他の本を読む際の参考にしたいと思った。タイトルで謳っている「大事典」という言葉に偽りはない。

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