Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

転職活動のすすめ 初めの一歩を踏み出す方への3つのポイント

先日、日本の上場企業に新卒からずっと勤めている40代の方に転職の相談を受けた。私は新卒から外資系企業にずっと勤めているので、転職市場には明るい。採用側として中途の面接を日米通算で200〜300回はしているので、転職活動の「いろは」から、面接の際の勘所まで色々なことを共有できた。

今回の相談では、面接でのアピールの仕方などよりも、より基本的な下記のような質問への回答が中心となった。

  • 転職活動を始めるベストのタイミングはいつか?
  • 転職する気がないのに面接をするのは、相手に失礼にならないか?
  • 転職エージェントを選ぶ際のポイントは?

おそらく、転職活動などしたことなくて、「一体どこから手をつけたら良いのか?」わからないという方は少なくないと思うので、上記の問いに対する私なりの答えをまとめてみたい。

 

転職活動をするベストのタイミングはいつか?

転職活動を始めようと思うタイミングは、現在の職場に何らかの不満を覚えた時という人が多いと思う。ただ、その不満のレベルというのは人によって下記のように異なる。

  • 今の職場も良いところも沢山あるので、転職を考えるほどではない
  • 色々価値観が合わなくなってきており、良い仕事が他にあれば転職したい
  • もう限界で、今すぐにでも他の会社に転職したい

その上で、転職活動をするベストのタイミングはいつかと問われれば、「転職を考えるほどではない」という気持ちの時から、ある程度は外にアンテナを張っておき、転職活動をゆるくでもしておくのがよい、というのが私の答えになる。

「一刻も早く転職をしたい」とか、「既に会社を辞めてしまった」というのは転職活動をするには明らかに遅すぎる。タイミングを焦るあまりに選択肢が狭まってしまうというのが最大の欠点だ。労働市場にある様々なポジションから、自分の強みが活かせ、企業文化や人が自分にあっており、条件も魅力的という最適なものを見つけるのは簡単ではなく、時間がかかる。「すぐに次を見つけたい」という切迫した状況で、その見極めをし、ベストの選択をするというのは至難の技だ。

また、現在の会社への不満が転職活動へ駆り立てる強い動機となっているケースでは、そういう後ろ向きの姿勢は面接者に必ず伝わってしまう。今の会社の不満が面接で露見すると、「この人はうちの会社に来ても何某かの不満をいつも言うんだろうな」と捉える面接官は非常に多いので注意は必要だ。

転職活動を長い期間とって実施すると

  • 自分の市場価値をある程度把握できるし、
  • 自分が本当にしたいこと、職選びで重視する点が明確になるし、
  • 多様な機会を天秤にかけることができ

より良い結果をえることができる。なので、「転職を考えるほどではない」という気持ちの時から、早めに活動をすることは、よい転職をする上で非常に重要だ。なお、私は初めの転職をするのに2〜3年くらいは時間をかけた。

 

転職する気がないのに面接をするのは、相手に失礼にならないか?

上記のタイミングの話をすると、聞かれがちな質問が「転職する気がないのに面接をするのは、相手に失礼にならないか?」というものだ。それに対する私の答えは、「相手が自分のことを選び、自分が相手のことを選んで、はじめて中途採用というのは成立するものだから、全く失礼にあたらない」というものだ。

他の候補者より有能であり、その会社にとって採用する価値が十分にあるとあなたが評価されれば、企業からオファーが提示される。それと同様に、募集ポジションが、今の会社も含めて他の会社の提示する職よりも魅力的があり、自身のキャリアアップによりつながるとあなたが感じれば、あなたがそのポジションを選ぶことになる。採用側と採用される側というのはあくまで対等であり、企業があなたを選ぶように、あなたも企業を選ぶ権利があるのだ。なので、企業側が面接の結果、あなたを選ばないように、あなたも面接の結果、その企業を選ばないということも対等に発生しうる。また、当初は全く転職するつもりはなかったが、面接を通して素晴らしいチャンスだと思うに至り、転職を決めたという話はよく聞くので、会ってみるまでわからないものなのだ。

勿論、面接で「今、転職する気は全くありませんが、幅広い選択肢を持っておくために時間を頂きました」というのはうまくない。「今の職場もとても良い職場だが、もっと良い機会があれば転職するつもりです」という程度の受け答えをするのは、お作法ではある。大人同士の話し合いなので、きちんと相手に敬意を払うことは忘れてはならない。

 

転職エージェントを選ぶ際のポイントは?

私の経験上、転職エージェントというのは当たり外れが大きい。転職エージェントは、自分が紹介したポジションが成約したら、その年収の35%くらいの金額を報酬として受け取ることを生業としている。即ち、成約までこぎつけることに強烈な金銭的なモチベーションがあるのだ。なので、たちの悪いエージェントは、こちらの都合や適性お構い無しで、転職をがんがんと薦めてくる。一方で、こちらのキャリアプランも含めて、親身になって相談や助言をくれる、「クライアントのキャリアディベロップメントを支援することに生きがいを感じる」エージェントもおり、そういう方の支援を受けることができれば、とても心強いパートナーとなる。

30代後半から40代にかけての転職であれば、自分の強みの棚卸しから、中長期的なキャリアプラン作成の支援をしてくれるようなエージェントを見つけると色々スムーズに進む。私の経験から、良いエージェントと悪いエージェントのポイントを以下にあげるので参考にして頂きたい。

  • 良いエージェントは、自分のキャリアプランに興味関心を持ってくれる、悪いエージェントは手元にある転職案件を紹介することに注力する
  • 良いエージェントは、こちらの時間、都合、ペースを考慮、尊重してくれるが、悪いエージェントは応募先の企業や自分の都合ばかりを優先する
  • 良いエージェントは、応募先の企業の採用担当者と蜜にコミュニケーションをとり、採用のポイントをよく把握しているが、悪いエージェントは面接予定のスケジュールと最終の条件交渉くらいしかできない

 

自分の市場価値を把握し、社外にどのような機会があるのかを知ることは、自分のキャリアプランを考える上で、ものすごく重要だ。また、対外的に自分のバリューを説明する機会をえると、現在の会社でどのようなことにより積極的に取り組まないとならないのか、ということも見えてきたりする。「転職なんて考えたことない」という方も日本にはまだ多いと思うし、「転職30台半ば限界説」なんて都市伝説も実しやかに世間では語られて、信じている方も多いように思う。是非、一歩を踏み出して、自分のキャリアのコントロールを自分自身に引き寄せるきっかけとして頂きたい。

 

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