『外資系トップの仕事力II』を読んだので書評を。
外資系トップの仕事力II―経営プロフェッショナルはいかに自分を高めたか
- 作者: ISSコンサルティング
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2008/10/03
- メディア: 単行本
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本書を読めば、外資系トップと一言でいっても、それが如何に多様であるかがよくわかる。新卒から外資という生粋の外資系の人もいれば、日本企業で長く勤めて転職した人もいれば、留学が契機となって外資系企業に身を投じた人もおり、そのキャリアは本当に様々。唯一共通している点をあげるとすれば、全員が訪れた機を逃さず、主体的なキャリアを選択を積み重ねていった結果、今に至っているということだ。この訪れた機を逃さないというのがなかなか難しいのだが、本書に登場する10人は、初めに入った会社のレールから、遅すぎることもなく、早すぎることもなく、一歩踏み出しているように見受けられる。では、機を逃さないためには、どうすればよいのか。本書の中には万人向けのこの問いに対する答えはないのだが、ボストン・コンサルティング・グループの御立氏の下記の言葉に、私は強く共感できる。
転職を決断できたのは結局、勢いだったんじゃないかと思う。人生って、ほんの何回かですが、偶然も重なって流れがどんどんやってきて、その流れが抗せないような圧倒的な力になってくることがあるんです。どっちがいいかって頭で考えても、誰にもわからない。こうなると、感覚で決めるしかない。私は相談されるとよく言うんですが、人生をずっと振り返ってみて、この流れに乗るのが今までの流れに即しているかとらえて、嫌な感じがしなかったらゴーだし、なんかちょっと違うなと思えばやめればいい、と。
『外資系トップの仕事力II』 〜御立 尚資 隆久 P.138〜
外資系トップというのは、おとなしい表現を使えば多種多様、カジュアルな表現を使うとぴんきりである。所詮は本社が別の国にある会社が外資系なので、ある意味外資系の日本法人トップというのは社長ではない。名刺に代表取締役社長なんて名前を冠していても、会社経営の全てを掌握している真の経営者もいれば、日本支店長もいれば、単なる営業部長もいる。先日、とある外資系ソフトウェアベンダーの社長を日本の販売店に紹介したのだが、その際に下記のようなやりとりがあった。
販売店 「うちは仕切率XX%じゃないとうけないからね」
社長 「いや、それはちょっと無理です」
販売店 「えっ?どうして無理なの?」
社長 「本社の承認がそれではおりません」
販売店 「ん?ビジネスになればいいんでしょ・・・」
外資系企業に勤めていると、日本としてビジネスになると判断しても、本社の承認をとらなければならないケースが多々あり、その承認取得が結構大変なのは事実。だが、それを取引先の前で出してはいけないのだと、この時に身にしみて思った。はたから見ていると、上記の社長の発言というのは「自分には権限がありません」と宣言しているだけなのである。当たり前といえば当たり前のことなのだが、外資系にどっぷり浸かっているとたまにそういう当たり前の感覚が麻痺してわからなくなってしまうので、注意が必要だ。
ノバルティスファーマの三谷氏が上記に絡んだことで本書の中で良いことを言っている。
特に外資の場合は、ついつい「本社はどうなんですか」と社員が聞いてきたりするわけです。僕は冗談で、「本社ってオレのことか?」と聞き返すんですけどね(笑)。実は「本社」なんて言っているうちは、ベクトルは最大の力になっていないんですよ。「我々は一生懸命やっているのに、本社が勝手に決めている」。でもそれは、自分の会社が大したことない。本社が決めるから、日本には発言権がないといっているようなものなんです。お客さまからしてみれば、それでは逃げ腰でしょう。
『外資系トップの仕事力II』 〜三谷 宏幸 P.165〜
「本社ってオレのことか?」、こういう気概は外資系トップにとってとても重要。真の経営者と単なる営業部長をわけるのは正にこういう気概なのだろう。
他にも紹介したい内容がたくさんあるが、長くなるので本エントリーはこの辺で。冒頭にも述べたが、本書は10名の外資系トップのキャリア、仕事観、哲学にふれることのできる良書。幅広い方々が読んで参考になると思うが、特に外資系企業に勤めている人、そこへの転職を検討している学生には、一押しの一冊。