ICPFセミナー第19回「政府の知的財産戦略」に参加してきた。政府の知的財産戦略推進事務局の方が「知的財産推進計画2007」の骨子を前半部分で説明してくださり、後半部分は参加者がディスカッションをするという形式だったが、この領域について不勉強な私にはえるものが多く有意義だった。*1
ただ、「知的財産推進計画2007」への全体的な印象について言えば、「コンテンツ流通促進」や「幅広い人の創作活動の関与」というコンテンツ大国日本に向けての立派なビジョンを掲げているわりには、具体的な施策レベルにうつると「政府は場を提供するにとどまる」とか、「基本的にはそういう問題は民と民で」とか、「まだ検討は始まったばかり」とか、「文部科学省の宿題になっている」とか、腰のひけた心もとない発言ばかりで、ビジョンに向けて力強い牽引力を知財戦略推進事務局が果たすという気概も、それに向けての説得力のある施策も提示されなかったのが非常に残念。
なぜ施策がへっぴり腰になってしまうかというと「一部のコンテンツ保持者の既得権益を如何に損なわない形で」という「但し書き」が施策を考える起点となっていることに起因すると思う。
私が「その権利者とは誰か。文芸家協会の会員は2500人だが、ブロガーは800万人以上いる。この著作者の圧倒的多数は、表現の自由を侵害する著作権の強化に反対だ」というと、大塚氏は「そういう視点は、今回の計画には抜けている」と率直に認めた。
セミナーでも、ブログでも池田さんが強調されているが、上記は非常に重要な点。著作者の対象を勝手に既にコンテンツを保持している人に限定してしまえば、既得権益者に有利な権利保護的施策のオンパレードになることは目に見えている。「コンテンツの海外展開を推進したい」とのこともおっしゃられていたが、国内に楽で、甘く、おいしい市場があるのに、競争の激しい海外に敢えて進出する人が増えるわけはない。
「政府の役割はなるべく小さくし、場を提供するに留める」というのは大いに結構だが、その前に政府がなすべきことにまずきちんと取り組むべきだ。で、私が考えるに政府が本当にすべきこととは、既得権益者の権利保護を前提とした施策策定ではなく、一旦権利保護を忘れ、まず全体の利益になるような枠組み作り・法整備をし、その結果生み出された利益を下に、権利を剥奪された既得権益者に対するセーフティネットを設けることだ。
パッチワークをはることではなく、一旦壊すことにフォーカスする、そういう骨太な取り組み方をしなければ、コンテンツ大国なんて夢のまた夢だ。
*1:なお、参加メモは"ICPFセミナー第19回「政府の知的財産戦略」参加メモ"に格納