本屋に溢れかえるWEB 2.0本の増殖傾向はとどまるところを知らないが、その大半は礼賛本であり、骨の太い批判本というのはあまり見たことがない。WEB 2.0の大きな可能性をうたった解説本や礼賛本のみではなく、気合のはいった中身の濃い批判本を是非読みたいと思っているのだが、食指が動くものが残念ながらあまりない。
そんな中で、"YAMDAS現更新履歴 - 海外におけるWeb 2.0批判本の本命?"で紹介されていたAndrew Keenの『the cult of amateur』は、海外の著名ブロガーが結構反応しており、色々話題になっている模様。スルーされずに、議論の対象となっているところを見ると中身がそれなりに濃いことが推察されるので、先週から読み始めてみた*1。
- 作者: Andrew Keen
- 出版社/メーカー: Crown Business
- 発売日: 2007/06/05
- メディア: ハードカバー
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まだ、IndtroductionとChapter1しか読んでいないが、総論は初めの30ページでおおよそカバーされていそう。骨子は下記の通り。
- アマチュアが生み出す、もしくは選び出す情報は信憑性・品質の両面で疑問が残り、プロの成果のただの模倣であることも多く、「ユーザ参加型」の有効性は大いに疑問が残る
- 「ユーザ参加型」というアマチュア崇拝の昨今の流れが新聞社、出版社といった伝統的なメディアの存在を脅かしいることは甚だ遺憾
- 伝統的なメディアは「高い専門性をもった才能」の育成機関としての機能も保持しており、それが失われる社会の損失はWEB 2.0が社会にもたらす利益よりはるかに大きい
- 不特定多数無限大の生み出した情報の氾濫は、真実と虚偽、専門家と素人の境界線をぼやかすだけで、それが望ましい世界をもたらすわけではない
筆者は"Audiocafe.com"というデジタル音楽サイトの創業者で、伝統的メディアサイドではなく、シリコンバレーサイド*2の人である点は興味深い。「プロ」のミュージシャンの作った音楽を、「技術の力」を使ってオンデマンドかつユビキタスに楽しめる世界を作るという構想を目指して起業をしたが、「技術の力」は脇におかれ、変わりに台頭してきた「アマチュア崇拝」の文化に嫌気がさした*3というのが、問題意識の起点となっている。
Nicholas Carrの"The amorality of Web 2.0"の主張を具体的な事例を用いながら拡張しているという印象をうけ、ところどころ首をかしげるところはあるものの、かなり過激かつ、一方的にWEB 2.0を批判しており、懐疑的な視点をもって「ユーザ参加型」というスタイルをとらえなおすにはもってこいだと思う。海外の著名ブロガーの反応も含めてかなり楽しめそうだ。