保護者の善意で「元気玉」を作りたい
運営委員の経験を通して、子どもたちのために自分ができることをしてあげたい、という保護者の皆さまの善意を強く感じた。もちろん、人によって濃淡はあるのだが、それらの善意を「元気玉」のようにすくい上げる良い方法はないか、ということをずっと考えていた。
私が運営委員をやっていた頃、わが補習校では保護者によるファンドレイズ活動はあまりさかんではなかった。支援を頂いている商工会からも「企業の支援を待つだけではなく、補習校自身も何かすべき」という、もっともなご指導も頂いていた。とは言っても、運営委員の他にも様々な役割があり、保護者の負担も相当だったので、追加で新しい役割を作るのは、良いアイデアのように思えなかった。また、保護者の善意を「役割」という枠に押し込めるのではなく、もっと自由に解き放つ方法があるように思えてならなかった。
保護者の部活動ーファンドレイズ部設立
そこで、多めの熱意と善意を持った保護者による有志のボランティアグループを発足することにした。とにかく色々な事情をもった保護者で運営されるのが補習校なので、「自分はできるし、やりたい!」と手をあげてくれる人を中心にスタートさせるのが現実的と考え、「ファンドレイズ部」という保護者の部活動をたちあげたのだった。
仲の良い保護者同士で協力し、毎年コンスタントに$6000くらいの寄付を集めることができるようになった。ファンドレイズ部の初代部長として、自分が運営をしている間は、こうしたいというルールをいくつか決めていたので、そのルールを紹介したい。
実施する保護者自身が楽しむこと
ファンドレイズ部の活動はその名の通り「部活動」である。なので、やりたいことだけを楽しんでやることを大原則とした。なので、色々な活動が実施したが、参加者の方々には、「あまりやりたくないことは無理にやらないように」とお願いした。逆に理事や運営の方から、ファンドレイズ部で「こういうことをやってくれないか」ということをお願いされても、やりたくないことは全てお断りした。例えば、日本のノートの販売とかできないかと相談されたが、正直利幅の薄い小売りとファンドレイズは相性が悪い。それなりの金額を集めないと楽しくないし、寄付額をのせて販売すればどうせ保護者から高いと言われるに決まっている。それも気分は良くないので、お断りした。
支援の間口を広げること
保護者の皆さんは多かれ少なかれ学校のために何かをしたいという気持ちは持っている。その気持の多い人からは多いなりの、少ない人からも少ないなりの支援を受けるファンドレイズを実施できれば、多くの保護者の善意を「元気玉」のように集めることができる。なので、色々なオプションを用意して、参加の間口を広げることを心がけた。
その取組の一つとして、お手製のお菓子を保護者の方に寄付頂き、それを販売するという「ベイクセール」を実施した。ファンドレイズ部員として「ベイクセール」の実施運営をする、「ベイク品」を寄付する、「ベイク品」を購入する、どのやり方でも補習校のファンドレイズに貢献ができる。寄付する品も別に手作りのお菓子である必要はなく、おにぎり、焼き芋、餅、はたまたコストコで購入したマフィンなどでもよく、「できる方ができることをできる範囲でする」という考えを追求した。
皆さん、補習校が終わる頃はだいたい小腹が空いている。また、アメリカのあまーいお菓子に飽きていて、日本の繊細な味のお菓子へのニーズは非常に高いので、「ベイクセール」はいつでも大盛況であった。
見返りを何も求めないこと
「権利は主張しないが、義務も負わない」ということ大原則とした。年によっては10,000ドル以上のお金を学校に寄付できるようになると、「自分たちはこんなにやってるんだから、、、」という意識がどうしてもでてきてしまう。「他の保護者より補習校に貢献しているのだから、補習校の運営についての自分たちの意見がより尊重されてもよいのではないか」という気持ちを持たれている方もファンドレイズ部内にいたが、「自分たちがやりたいことを、自分たちが楽しむためにやっているのだから、何も権利は主張しない」ということを私は徹底した。
「ファンドレイズ部」という名前をつけていると、色々な雑事がどうしても降ってくる。「とある保護者から不要な着物を寄贈されたので、ファンドレイズで販売して欲しい」、「旅行会社からファンドレイズプログラムの申し出があったので対応して欲しい」、などの様々な依頼が部長である私に飛んできた。正直殆どは「煩わしく、やっても楽しくないなぁ」というもので、それを全て受けていたら、徐々に活動の楽しさが色褪せてしまいそうだったため、丁重にお断りしていた。この「やりたくないことはやらない」というストロングスタイルを貫くためには、「権利を主張しない、活動の見返りを求めない」ということが大事だった。
新しい組織の形を求めて
組織を運営するために、ある程度の役割決めと指揮命令は必要だ。だが、その枠組に全てを押し込めようとするのは無理がある。多様な人で構成される組織はそれほど単純なものではない。補習校のような非営利の団体は特にそうだ。
補習校関係者には企業で働いている方が多い。そのため、上意下達の運営を当然と思っている方が多く、引力に引き寄せられるように「あれやってくれ、これやってくれ」という依頼が理事から落ちてきた。仲間との場を守るために、既存の組織運営のプレッシャーからの防護壁になることを自分のリーダーとしての使命と位置づけ、うまく折り合いをつけていった。
自由闊達に好きなことを楽しみつつ、組織全体に活気と利益をもたらす、そんな集団を作りたくて「ファンドレイズ部」を設立した。もちろん苦労もあったが、気の合う仲間と楽しみながら、子どもたちのためになることができたことは、私の40代の一つのハイライトだ。共に協力してくれた仲間と支えてくれた保護者の皆さまに心から感謝をしたい。