Thoughts and Notes from CA

アメリカ在住、外資系企業歴30年の日本人会社員。 アメリカでの生活、海外での子育て、外資でのキャリア構築、そして現地に暮らして見えてきたアメリカ政治のリアルまで、日々の体験を通じて気づいたことをゆるく発信。 グローバルに挑戦する日本人が、少しでも勇気を持てるような発信を目指しています。

40代の軌跡:自分の人生を生きること

歩んだ「獣道」は実は結構舗装されていた

私は、20代と30代は「キャリアの獣道」を歩んできた。新卒で入った会社は当時まだマイナーだった外資系コンサルティング会社で、正直就活する前は名前も聞いたことがなかった。また、初めて転職をする際は、日本法人の従業員が2万人の大手IT企業から60名の中小IT企業に移り、周囲からは稀有な目で見られていた。それぞれで、常識や社会通念に縛られずに、自分の頭で考えて最適解を追求してきたつもりだ。そんな、自分自身のキャリアを作り、歩んでいることを正直イケテルと当時は思っていた。

そして、40代はアメリカへの移住でスタート。さらなる自分の道の追求に高揚感さえ覚えていたが、アメリカでの仕事や暮らしの中で

あ、自分なんて、自分の人生を生きるという点で、まだまだどころか、常識や社会通念に縛られまくっているなぁ

と自分はひよっこであり、勇んで歩んだつもりの「獣道」も結構舗装されていたことに気づく。

 

「自分ファースト」が生み出すアメリカ社会の活力

自分自身の道を追求する、自分のキャリアをオーナーシップをもって果敢に築いていくという点で、アメリカ社会では私はビギナーもビギナーであった。そう、アメリカでキャリアを追求する人たちは遥かに「自分ファースト」なのだ。

アメリカで働いて驚いたのが、今のポジションに留まるべきか、他に良いポジションはないかということを、みんな常に考えているということだ。他により良い給与、より良い機会があれば、社内外問わずどんどん仕事を変えていく。引き継ぎ期間は大体2週間。新しいポジションに移る上で大事なのは、差し支えない引き継ぎプランではなく、「何故その選択をしたのか」という理由のみだ。その理由さえあれば、残された人間は「おめでとう、うまくいくと良いね!」と言うだけだ。アメリカで退職代行のビジネスは成り立たない。
私もCFOの慰留を断り、社内転籍したことがあるが、CFO以外は皆応援してくれた。誰も「あいつは自分勝手だ」などと言わない。何故なら、それぞれが「自分ファースト」でキャリアを追求することこそ、社会に活力が充ちる源泉ということを理解しているからだ。

 

作った「余白」に自分の人生を描く

私生活を大事にし、自分の人生を生きるという点においても、私はアメリカで完全に意識改革された。

  • 私生活を犠牲にして仕事を一生懸命しても誰も尊敬などしてくれなく、むしろ「つまらない奴」と白い目で見られる

  • 家族(犬や猫も含める)と健康は、仕事よりも遥かに優先順位が高く、子どものお迎えはもちろん、犬の散歩も早退の立派な理由となる

  • 2-3ヶ月前に予定を共有しておけば、1-3週間の休みが承認されないなんてことはまずなく、きちんと休みをとらないと「不思議な奴だ」と思われる

  • ボランティアやコミュニティ活動に従事することは、職場でも尊敬の対象となる

  • 「週末をどう過ごし、どんな趣味を持っているのか」というのは、名刺に書かれている肩書よりも、はるかに重要な自分が何者なのかを示す情報である

など、アメリカで暮らしてから、「こういう考え方のほうが確かに人生は豊かになるよなぁ」と感じる瞬間の連続であった。アメリカに移り住んでからというもの、私は

  • 業務時間は3-4割削減され

  • 家族と過ごす時間は、おそらく10倍以上は増え

  • 毎年、夏に3週間休みをとって日本に一時帰国をし

  • 補習校の運営、日本人会の餅つきリーダーなどコミュニティ活動に勤しみ

  • ランニング、筋トレ、ハイキング、料理などの趣味に多くの時間を使い

日本にいる時よりも、仕事の時間を減らして「余白」を作り、私生活をより充実させていった。一時帰国でこういう話をすると「もう、すっかりアメリカ人だね」とよく言われる。日本人とかアメリカ人ではなく、「私自身が何者であるのかこそ大事」という価値観を説明したいのだが、言ったところで「やっぱりアメリカ人だ」と言われそうなので、つい口をつぐんでしまう。

 

人生の選択、仕事はいつまで続けるか問題

私は今50歳で息子が大学を卒業する頃には56歳になる。日本でもアメリカでも、「今後の人生のプランは?」というのは最近よく聞かれる質問で、

息子が大学を卒業したら仕事を辞めて、アメリカを拠点にした方が行きやすい海外を1〜2年ほど妻と旅行してまわり、その後は日本に本帰国して過ごそうと思う

と、最近は答えている。アメリカ人の反応は大体「それは素敵なプランだね、どこが一番行きたい国?」みたいな感じで、互いに老後のプランを共有に話が発展する。
が、日本の友人に話すと「え!?そうなんだぁ、、、」とドン引きされ、それ以上話が続かないことが多い。50代半ばでリタイアすることがどうこうというより、「仕事を辞めるタイミング」を決める判断基準について話をしてみたいのだが、話がそこまで進んだことがないのは残念なことだ。

 

50代の出発点:より自分の人生を生きるために

40代の間に、キャリアの方向性、家族の幸せ、自分の人生の充実ーそのためには何を捨て、何をすべきか、そんな問いを何度も自分に投げかけてきた。そのとき、いつも心に留めていた言葉がある。

選ぶ能力は誰にも奪えない。 ただ、本人が手放してしまうだけだ。
選ぶ権利を手放すことは、他人に自分の人生を決めさせること
だ。
『エッセンシャル思考 ‐ 最少の時間で成果を最大にする』

 

選択肢は限られていても、その中から何を選び取るかは自分次第だ。つい流れに身を任せ、選ぶ権利を手放してしまいそうになる瞬間もある。だが、「他人に自分の人生を決めさせてはならない」という思いが、私は踏みとどまらせ、自らの選択を促してきた。

「いつ仕事を辞めるか?」という問いも、その1つだ。

60歳や65歳といった、誰が決めたのかもわからない線引きに身を委ねるのではなく、自分の意思で「その先」を描くこと。それが、50代を豊かにするために最も重要な選択だ。

この決意に至ったこと、そしてその意思を持って50代を迎えることができることこそが、私の40代の最大の成果なのだと、今は思っている。

 

 

「40代の軌跡」シリーズはこれにて完結となります。拙い文章を読んで頂いた皆さまに心から感謝いたします。

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