コラボレーションがもたらすものとは、ピアプロダクションにより、いままでありえなかったほど効果的かつ効率的に人間のスキルと才能、知性を結集できるようになるということだ。いくらなんでもそこまではと思うだろう。しかし、膨大な参加者の水平ネットワークという集団がもつ知識や能力、資源を活用すれば、一企業では不可能なことも可能になる。
- 作者: ドン・タプスコット/アンソニー・D・ウィリアムズ,井口耕二
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2007/06/07
- メディア: 単行本
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『ウィキノミクス』 〜第1章 ウィキノミクス〜
上記引用したピアプロダクションの典型的な成功例として、最も多く引き合いにだされるのは、LINUXの開発だろう。そのLINUXの開発に参加をしているエンジニアの方々は、その新しい力を肌感覚としてびしびし感じているので、何もピアプロダクションなるこ難しい言葉で説明されずとも、その威力は十分に理解可能と推察される。一方でコードを書かない文系の人間にとっては、ビジネスの成功をみれば疑う余地はないが、開発そのものがどのくらい効果的で効率的なのかは今ひとつ具体的なイメージがわかない。
先日、the LINUX Foundationが出したレポートは、そんなコードを書かない人間にとって非常に貴重な資料となっている。過去3年のLINUX Kernelの開発に関する様々な分析データが盛りこまれており、興味深いをこして、純粋に面白い。貴重な歴史的文献と言っても言い過ぎではないだろう。
以下ポイントを記載するが、データが主体でかなり優しい英語で書かれているので、興味のある方は原文をあたることを強くすすめる。
- 2005年からの約3年間でLinux Kernelは3678名の開発者、271の企業によって修正がなされてきた
- 2005年からの約3年間でLinux Kernelは平均して2.7ヶ月の頻度でリリースがされてきた
- 2005年からの約3年間でLinux Kernelは平均して1時間に2.83個のパッチが適用されてきた
- 過去2年半の間でLinux Kernelは平均して、1日に3,621行のコードが追加され、1550行のコードが削除され、1,425行のコードが修正されてきた
- 2005年からの約3年間でLinux Kernelの開発には3678名の開発者が参加する一方で、上位10名の開発者がおよそ15%の修正を実施している
- 2005年からの約3年間でLinux Kernelの開発に参加した3678名のうち、少なくとも70%以上の人は特定の企業がスポンサーとなっている
- 2005年からの約3年間でLinux Kernelの開発に参加した271の企業の中で、貢献度の高い上位3つの企業は、Red Hat(11.2%)、Novell(8.9%)、IBM(8.3%)の順番となる
- 一方で、企業に属していない開発者(13.9%)、特定の企業の所属をしているか、どこにも属していない個人かが不明な開発者(12.9%)が、いずれもRed Hatよりも高い貢献をしている
ベンチマークとして過去3年間のHP-UXの同様のデータなどが公開されるともっと面白いのだが、自分の首を絞めることになるので、まぁまずはHPは公開しないだろう。