Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

オープンソースとクラウドコンピューティング雑感

O'Reilly Radarの"Open Source and Cloud Computing"を読んだ。id:yomoyomoさんにどうやら先を越されてしまったが、本稿についての最も質の高い日本語情報である"オープンソースとクラウドコンピューティング"のブックマークがこんなちょびっとしかないというのも驚き。世間の関心はそんなに低いのだろうか?
まぁ、それはさておき、自分の解釈も交えながら要点をかいつまむと以下のようにまとめることができる。

  • ソフトウェアの再配布、修正を認めるライセンス形態をとることにより、オープンソース「多くの人が自由に使えば使うほど洗練されていく」という仕組みを作り、大きく繁栄をとげた
  • 最近注目を浴びているクラウド・コンピューティングでは、オープンソース・ソフトウェアと蓄積されたデータベースを組み合わせ、コードではなく、サービスを提供するようになる
  • クラウド・コンピューティングの世界では、誰でも自由に使用・再配布・修正ができることを強制するGPLのような仕組みがあるわけではなく、オープンソースの恩恵をフルに受けながらも、専有・囲い込みが可能となってしまい、「多くの人が自由に使えば使うほど洗練されていく」という力学が働きにくい
  • ただ、特定の企業が専有や囲い込みをするとその企業の利益は短期的には実現できるが、よりよくするために開発に関わる人の数が減ってしまい、イノベーションが加速されない
  • クラウド・コンピューティングでより高い価値を実現することを目指すのであれば、再利用可能で他のサービスと相互に連携しうるコンポーネントを作り出し、再利用・相互連携の輪を広げることに注力するほうが良い
  • コードだけでなく、そこに蓄積されたデータというものが今後非常に重要な価値を持つが、データそのものもAPIにより開放し、再利用・相互連携しやすいアーキテクチャにするのが良い


で、色々ポイントが多いが、特に心に残ったのが下記のくだり。

but I continue to believe that many of the key subsystems in this evolving OS will be data subsystems, like identity, location, payment, product catalogs, music, etc. And eventually, these subsystems will need to be reasonably open and interoperable, so that a developer can build a data-intensive application without having to own all the data his application requires.
けれども、私は進化を続けるインターネットというOSのキーとなるサブシステムの多くは、データ・サブシステムであると信じ続けている(そこで蓄積対象となるデータは、認証、位置、決済、製品カタログ、音楽などが考えられる)。そして、実質的には、これらのサブ・システムは適切なレベルで開示され、相互連携可能な形式をとる必要があり、その結果として開発者は自らのアプリケーションが必要とする全てのデータを保持する必要なしに、データ駆動のアプリケーションを作ることができる。

世の中にはデータが囲い込まれているが故に著しく非効率が生じてしまっているエリアが山のようにあり、データベースと連携したクラウド・コンピューティングにそういった問題を解決する強い可能性を感じる。例えば、例としてあげられている決済情報というのは、個別の企業ごとに与信情報・機能をもったり、結構な値段でそれ程質の高くない情報が様々な企業から提供されていたりして、全体として著しく非効率なエリアであるように私には見える。現在、ばらばらに管理され、かつ法外な値段がつけられている与信情報を一元的に管理し、そこに集まった人の取引状況などを集約することにより、特定の企業では絶対到達不可能なレベルの情報を作り出すことが可能となる。


id:yomoyomoさんも指摘している通り、オライリー自身もまだまだ核心は見えていないようだが、本文中に照会されている関連エントリー、およびコメントにも目を通し、もう少し思索を深めていきたい。

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