かなり前の記事だがJoel Spolskyの"Strategy Letter III: Let Me Go Back! - Joel on Software"というエントリーを読んだ。取り扱われているトピックは、圧倒的なシェアを保持し、独占状況にある企業の支配を崩し、自らが覇権を握るにはどうしたらよいかというもの。ポイントは下記の通り。
- 自社が覇権を握る、もしくはその市場において存在感をだすためには、独占を築いている企業からシェアを奪い取らないといけないということをしっかり認識すること
- 自社の製品・サービスに顧客が乗り換える上での阻害要因を全て洗い出し、それを丹念にひとつひとつつぶしていくこと
- 阻害要因の中には明らかなものもあれば、見落としがちなものもあるが、そういった見落としがちだが、重要な阻害要因を把握し、取り除くこと
- 独占の地位を築くまで顧客を囲い込もうとしてはならず、自社の製品・サービスからのスイッチコストを下げること
どの点も的を得ており非常に参考になる。
1点目から3点目は一見すると当たり前のことかもしれないが、この当り前のことをやるのが実は一番難しい。
実は、当たり前のことを当たり前にやるのは、いうほど簡単ではない。むしろ大変難しいことである。人間も集団としての組織も、放っておくと緩い方向に向かう本性を潜在的に持っているのだ。だからこそ、その仕組みを整える必要があるのだ。会社は頭から腐る―あなたの会社のよりよい未来のために「再生の修羅場からの提言」
- 作者: 冨山和彦
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2007/07/13
- メディア: 単行本
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『会社は頭から腐る』 〜第5章 産業再生の修羅場からの臨床報告 P.116,117〜
冨山和彦さんが著書の中で上記のように述べているが、人間は基本的には見たい現実しかみないので、独占を築いている企業からシェアを奪う、そのための阻害要因を洗い出しつぶしこむ、ということはできるようでなかなかできない。本文では、その当たり前のことを、自らが独占状態にあったロータス123の牙城を崩し、Excelの独占を如何に築いたかを例にとり具体的に説明されており、非常に興味深い。
4点目は上記の説明だけではわかりにくいかもしれないので、以下もう少し細かく説明する。シェアを拡大しようとすると、せっかく自社の製品・サービスに乗り換えた顧客が、また他社に乗り換えてしまうのは惜しいので、ついつい囲い込みたくなる誘惑にかられる*1。だが、この囲い込みというのが、実は潜在的な顧客の自社の製品・サービスへのスイッチング・コストを高めているというのが4点目の話。つまり、いざ気に入らなければ元の製品やサービスに手間をかけず、スイッチすることが担保されていれば、試しに使ってみる気になるが、囲い込まれるという雰囲気が強いと顧客の腰はついついひけてしまうということ。これももっともな話だが、そうは言ってもなかなかできることではない。
ウェブ・サービスは一部を除いてまだまだ独占を築いた企業は少ない。だが、上記の話は完全競争状態にあったり、寡占状態の市場で凌ぎをけずる企業にも参考になることは非常に多い。興味のある方はご一読の程を。