Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

Googleはコンピューターを外販するか、しないか?

グーグルは、間違いなく超並列分散処理コンピュータのOSまでは「垂直統合」することに決めて、粛々と開発を進めている。
そしてその先に半導体まで作るんじゃないか(「垂直統合」していくのではないか)という話を書いているところが、この記事のもう一つの面白いところだ。・・・<中略>
「グーグルは何でもかんでもゼロから作りたいとは思っていないけれど、自分たちが思うベストのものが世の中から調達できない場合には自分たちで開発することもやぶさかではない」という考え方は、グーグルの本音であり、今彼らが持っている万能感の表れだろう。
My Life Between Silicon Valley and Japan グーグルの垂直統合思想

圧倒的なコスト優位を実現するコンピュータを自社で構築できているのがGoogleの大きな強みであり、その領域はいよいよ半導体にまで及ぶんじゃないかという噂まである。世の中にベストなコンピュータがないから、自分達でベストなものを作ってしまう、そんな考えにふれると、「じゃぁ、なんでそれを外販しないんだろう?」という素朴な疑問が浮かぶ。
AmazonAmazon S3というeコマースのエクセレントカンパニーとして培ったストレージ技術とスケールメリットを活かしてサービスの提供をしているように、Googleは何故ハードウェアを販売しないのか(もしくはホスティングサービスなどを提供しないのか)。圧倒的なコストパフォーマンスのあるコンピュータであれば多くの企業は喜んで買うだろうにと素人考えで思ってしまう。
また、仮に半導体製造までてがけてしまったら、自社使用を超えたボリュームがでないとコストメリットはかえって活かせないのではないか。ソニーがCELLを開発できるのも、PS3というコンシューマ向けの製品によってある程度のスケールメリットがでるからに他ならない。


では、コンピュータの販売を手掛けるためには、どんな阻害要因がGoogleにあるのか考えてみたい。

  • 物販に伴い発生する「スーツ」処理

モノは売るのももちろん大変だが、売った後がさらに大変というのは最近学んだこと。クレーム・返品対応、修理対応、品質管理など頭の痛い問題がすごく多い。モノの販売後の多くの諸雑用から開放される世界というのは正にメーカーにとってはパラダイス。「売るはよいよい、メンテは怖い」というのがモノ売りの世界。そんな、ごりごりの地道なスーツ処理に、ギーク王国のGoogleは果たして耐えられるのだろうか。外販した瞬間に、自社システムの最適化のみに注力ということは間違いなくできなくなるだろう。

  • 財務情報開示に伴うコスト構造の公開

「圧倒的なコスト優位を実現」というのは話しだけで、その詳細は実はかなりベールに包まれている。Googleはご存知の通り、広告収入が98%をしめているが、コンピュータを外販するとなれば、広告とは別セグメントとなり、少なくとも売上と売上原価を赤裸々に開示することとなるドリコム/mixiなどの財務諸表をみてもわかるとおり、事業が立ち上がったばかりで、規模がそれ程大きくなく、収益源が多様化していない状況では、かなり丸裸で財務情報を公開するはめになる。社外秘としてあえて、表にデータをだしていないコンピュータのコスト構造を、丸裸で開示してまで外販の意欲は強いのだろうか。

  • 「世界中の情報を整理しつくす」というミッションとの整合性

Google Baseにアップロードしたデータを検索可能にすることはできても、自社で販売している、またはホスティングしているコンピュータ上のデータを自由に検索できるようにするというのは流石に難しいだろう。そういう応用ができないと考えると、単なるハードウェア販売事業となり、Googleのミッションとの整合性はそれ程ない。


自分で問題提起しておきながらなんだが、上記のことを考えるに、やはりGoogleがハードウェアを販売する、もしくはAmazon S3のようなサービスを提供するというのは現時点では考えにくい。ただ、垂直統合を進めていけば行くほど、コストメリットを活かすための外販への欲求は強くなるに違いない。そのせめぎ合いの中で、どれだけGoogleが垂直統合を進めることができるのか、注視してみていきた。

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