- 作者: David Kusek,Gerd Leonhard,yomoyomo,津田大介
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2005/12/06
- メディア: 単行本
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は、デジタル経済における著作権であるとか知的財産の考え方を整理する上で非常に役に立つ。「そんなことはもう知っている」という方以外は一読の価値あり。
私が理解したポイントは4点。
- 音楽にしても芸術にしても、既存の「なにか」を土台に創作しているものなので、大きな視点でみれば、「完成」というステータスには永久にならない
- 著作権の存続期間の延長などにより、「なにか」を土台にした創作活動に過剰な制限をかけることは、社会における活発な創作活動にブレーキをかけることにつながる
- 技術進歩により既存の「なにか」を土台に創作することが革命的に容易になった結果、それを過剰に制限することは物理的に不可能となった
- 土台となる「なにか」を作った人の権利を守るためには、他の人間による創作活動を制限するのではなく、技術進歩を活用し商用利用の測定手段を整備するべきである
特に最後のポイントについては
作品が模倣される作者に対する補填、もしくは最低限でも創作の源への帰属が現在より少なくてよいと言っている訳ではない。いまやあらゆるテクノロジーが利用できるのだから、既知の作品の商用利用をより確実に測定、報告する手段を見出すことに今後取り組むべきだ。現在、作品の商用利用は作者の許可を経て監視されるが、未来のシステムは知識とアイデアのより流動的な流れや、現行システムに替わる分担補填システムを通じた教諭を基礎にできるだろう。
『デジタル音楽の行方』 〜第3章 P.74〜
というように巧みに表現されており、創作者をないがしろにするのではなく、優れた創作活動の功績に報いる仕組みを技術や環境変化に応じて作ることが肝要であると提言している。
功績を報いる新しい仕組みの必要性を唱えることにより、既得権益を守るエスタブリッシュメントは創作をする人ではなく、置き換え対象となる仕組みを支えている人間であることを鋭く指摘している点が興味深い。
上記のようにデジタル経済における著作権であるとか知的財産の考え方を整理すると『マッシュアップ--仮想空間と現実をつなぐ地図』の
今のところ、Googleはマッシュアップサイトに広告を配信していないが、こうしたサイトに供給している地図画像に広告を表示する権利は留保している。また、ユーザーは利用規約により、これらの広告を手を加えずに表示しなければならない。
という内容への理解も深まる。Googleは土台となる「なにか」を作り、利用状況の把握と対価の回収の仕組みまで自らが構築した上で、その上にのっかった創作活動をしっかり奨励している。本質をおさえながら、それに即して実行に移す実力があるという点で、Googleはやはり強い。