アメリカ企業と聞くとレイオフ、首切りというイメージを持つ方もいるだろう。解雇規制が厳しい日本企業と異なり、アメリカの殆どの州では理由なく従業員との雇用契約を解消することができる。理由も告げられず、予告なくぶった斬られるなんて話はあまり聞かないが、先日「やっぱおっかねーな」と思ったことがあったので、共有したい。
アメリカ企業でよくある問題
私はFP&A(財務企画部)という会社の財務資源をどういう風に配分するかを決める部署に勤めている。先日、FP&Aの事業部長である私の上司と彼の部屋で会議をしていたら、製品事業部長が部屋に入ってきて不満をぶちまけた。彼のポイントは
-
担当製品の認知度向上のために、来四半期にホテルを使ったマーケティングイベントの企画申請をした
-
予算の確保は今四半期の会社業績によるため、来四半期にならないと実施の可否は判断できないと財務企画部から差し戻された
-
ホテルを使ってのイベントはどんなにギリギリまで待ったって60日前には会場をおさえないといけないので、今判断できなければ困る
これは上場アメリカ企業あるあるなのだが、売上の目標達成が「カタイ」と使える経費に見通しがつきやすいのだが、売上が目標を下回る可能性があると、利益率を確保するために短期的にコントロールのききやすいマーケティング費用は保留になりがちなのだ。四半期という短期の業績への投資家からのプレッシャーのきつい上場しているアメリカ企業でよく起こる問題だ。
ぶちギレる製品事業部長への対応
その辺りの事情やホテルへのキャンセル手続きの可能性の検討などの押し問答となったが、遂にぶちギレた製品事業部長が強い語調で
「困ったなぁ、あんただって業績が渋いと出るお金も渋くなっちゃうことくらいわかるだろう」と内心思いつつ、返答に困っていると、私の上司が助け舟を出してくれた。
これは意外な返答であった。強く言われたからって、簡単にオッケーを出すなんて彼らしくない。「ようやくわかったか、この杓子定規の石頭どもめ」と言った感じで微笑む相手にさらに私の上司が続けて言ったのは、いかにも彼らしい厳しい言葉だった。
それでも解雇はなるべく避けたい
なお、私の上司は別に血も涙もないわけではない。期末になると彼からの数字に対する重圧は半端ないのだが、その時にいつも切々と言うのが
ということ。アメリカ企業は容赦なく首を切るというイメージの方もいるかもしれないし、正直容赦がないこともたまにはある。但し、多くの場合はそこに躊躇もあれば、残る側にも痛みはある。なるべく解雇しなくて済むようにできる限りの努力はする。が、新陳代謝をある程度重ねて、筋肉質な身体を維持しないと、厳しい競合との戦いに勝てずに、従業員共倒れか、誰かにパクリと買収されて結局その人たちにリストラされてしまうことも皆知った上での苦しい決断なのだ。
まぁ、投資家の期待に応えることが優先されすぎ、従業員が犠牲になりやすいというのは、アメリカ資本主義の行き過ぎたところではあるが、それはまた別の話で。
まとめ
-
アメリカ企業の雇用契約の厳しさ:
アメリカのほとんどの州では雇用契約を理由なく解消することが可能であり、会社都合で職を失うということも時として起こりうる。 -
四半期ごとの財務圧力とその影響:
アメリカの上場企業では、四半期ごとの業績に対する投資家からのプレッシャーが強く、売上が目標に達しない場合、利益率を維持するためにマーケティング予算が凍結になったり、時として人員削減が行われる。 -
解雇を避ける努力とその複雑さ:
経営陣にとっても人員削減というのは苦渋の決断であり、企業の上層部も解雇を望んでいないし、解雇対象外の従業員や外部からの買収から身を守る手段でもある。