Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

Google初の減収 2009年第一四半期決算考

Googleが2009年の第一四半期の決算を発表した。売上は前年同期比で6%増加しているものの、前四半期比では、3%減少と初の減収。かろうじて前年同期比でプラスをキープしたものの2008年第一四半期の前年同期比は42%増、2008年第4四半期の前年同期比は18%増だったことを考えると減速感は否めない。


このニュースを報じている各サイトのタイトルを見る限り、アナリスト予想を上回る利益を実現とPositiveなメッセージを発信しているサイトが多い。グーグルは業績予想を発表していないので、仕方なくアナリスト予想を基準に報じているのだと思うが、はっきり言ってアナリストの予想より上か下かなんてことはかなりどうでもよいことだと思う。本エントリーではグーグルのこの時期での減収について、私なりにいくつかの視点を提示してみたい。

グーグルは特定の期間の経営成績を評価される入り口にたった

今回の減収をもって、財務的な視点でグーグルの期間経営成績を評価する入り口にようやく我われは立ったとみることができる。グーグルは過去2桁成長をずっと続けてきたわけだが、それは特定の四半期や半期の経営成績の結果というよりむしろ、検索分野で寡占を築いた結果と見るほうが正しい。2007年や2008年は、グーグルは誰が経営したって短期的なFinancial Resultsは2桁増を実現できただろう。どんな優良な新興企業でも、一定の時期が経ち、一定の規模に達すれば、成長率に陰りは見える。グーグルもようやくその時期にさしかかったということだ、もう一段の成長を遂げるかことができるかどうか、経営者の真価がこれから問われることになる。

AdWords AdSenseに続く収益の柱が築けなかったつけがきた

今回の減収は、AdWords AdSenseに続く収益の柱をここ数年で結局築くことができなかったつけとみることができる。ずっと成長をとげていながらも、AdWords AdSenseで99%の売上げを稼ぐという構図はずっと変わらない。Googleが別の収益の柱を築こうとしているかどうかは不明だが、新しいことを色々やれども、AdWords AdSenseのような同社の事業にすさまじいビジネス上のインパクトを与えることをここ数年グーグルができていないことは事実。3本目の成長エンジンが未だに構築できていないこと、その結果が今回の減収とみることができる。

価格コントロール力の無さとそのもろさが明るみにでた

今回の減収で、グーグルは、市場に対して価格コントロール力がなく、市況の悪化が業績にダイレクトにつながることが明らかになった。
グーグルの業績発表資料に、"Paid Clicks"という面白い項目がある。

Paid Clicks
Aggregate paid clicks, which include clicks related to ads served on Google sites and the sites of our AdSense partners, increased approximately 18% over the fourth quarter of 2007 and increased approximately 10% over the third quarter of 2008.

Paid Clicks
Aggregate paid clicks, which include clicks related to ads served on Google sites and the sites of our AdSense partners, increased approximately 17% over the first quarter of 2008 and increased approximately 3% over the fourth quarter of 2008.

要は広告収入につながるクリックが何件あったかという指標で、自動車メーカーで言えば、自動車販売台数、ソフトウェアベンダーで言えば、ソフトウェアの出荷本数にあたるものだ。2008年第4四半期は前年同期比18%増、2009年第1四半期ですら前年同期比17%増を記録している。即ち、販売量そのものは2桁増えているにもかかわらず、売上の伸びはそれを大きく下回っている。原因は広告単価が下がっていることしか考えられない。
グーグル同様に不況でどこの会社もコストカットに走るわけだが、マーケティング費用はコスト削減対象となりやすい。広告単価はオークション形式で決まるため、各社が一斉にビットする価格を下げれば、提供しているサービスは同様でもその分単価が下がることになる。"Paid Clicks"が伸びているにも関わらず、売上が落ち込んでいるのは、不況そのものとその影響をもろに受けやすいグーグルのビジネスモデルことが主要因とみることができる


例によって、かなり好き放題書いたが、それでもYahoo!などと比較して、この不況下でもきちんと数字を作っているのはさすがというところ。向こう1〜2年くらい、成長がひと段落ついたグーグルの業績がどのように推移するか、引き続き目が離せない。

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