Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

社内異動から垣間見るアメリカのキャリア模様

アメリカで働き始めてかれこれ6年ほどになるが、この11月から今まで働いていたファイナンスの部署を離れ、自分で希望をだして別の部署に異動した。渡米以後、初めての異動となり、その経験を通して、いくつか興味深い発見があったので本エントリーで共有したい。

 

仕事は社外にも社内にも等しく開かれている

私の勤める会社では、人を採用する場合は、まずマネージャーが職務記述書(ジョブディスクリプション)を作って、採用システムに登録をする。財務や人事のレビューをへて、外部に開かれた採用ページにそのポジションが掲載され、はれて募集がスタートすることになる。

今のアメリカの職場でまず驚いたことは、社内の人もその採用ページを滅茶苦茶まめにチェックをしているということ。どの部署のどのポジションがオープンであるというのは昼御飯の際の良く出る話題の一つだ。私は今の会社で長く働いているし、顔も広いので、同僚から「あの部署でこういうポジションを募集しているみたいなんだけど、どう思う?」と相談を受けることが結構多いし、自分の部下からさえも同様の相談をたまに受ける。

アメリカ人はキャリアアップに対する欲望は肌感覚としては日本人よりかなり強いので、今勤める会社でどんなキャリアアップの機会があるのか、常にアンテナをはって、貪欲により良い機会を社内でも狙っているというのが、私にはとても新鮮であった。

 

辞令が上から降ってくるということはない

私の会社では、上の方で人事を決めて、それが決定事項として下に振ってくることはまずない。所属長同士で話を進めたとしても、最終決定の前に必ず本人への確認も入り、本人の希望が最も尊重される。唯一の例外として、本人の希望が考慮されずに決定がされるのは、クビくらいのものだ(これも頻繁におきるが)。

なので、私の今回の異動も、同じ会社の中で面白そうな部署が設立されたので、そこの役員にまずは相談をして、私向けにポジションを作ってもらい、所属している部署に異動をしたいという意思表示をするというように、私主導で進めていった。希望をだしたとしても、もちろん所属部署と異動先の部署の合意は必要ではあるが、異動先と本人の間で合意形成がされていると、所属部署がそれを止めるのは正直かなり難しい

なお、私は所属していた部署からはかなり強く慰留をされ、最終的にはCFOに呼び出され、「私がこれだけ遺留しているのに、それでも異動するというのか」と迫られ、「遺留頂いているのは光栄ですが、やっぱり異動したいです」と答えて、無言のまま3分間睨まれるという、貴重な経験もした。CFOに呼び出された時には「これは流石に無理かなぁ」と思ったが、それでも自分の意思表示をすればそれが尊重されて通ることが実感できた得難い経験であった。

 

引き継ぎ期間が短い

上記のようなやりとりがあり、渋々ながらCFOから異動の了解をとりつけたのだが、その際に強く言われたのが、「君の意思が堅いのはよくわかった、でも今の部署の状況を考えて、少なくとも3ヵ月は引継期間をとってもらうからな!」ということ。ものすごく強い語調で言われたので少し怯んだのだが、その時に内心思っていのが「えっ!?すっげー普通!!」ということ。

そのポジションは4年半ほど務め、オフショアセンターも含めると10人近くマネージしていたので、ビジネスに支障がでないように引継ぎをするのが少し悩みのタネではあったが、怒れるCFOから異動の条件として提示されたのが「3か月の引き継ぎ期間」というのに少し拍子抜けしてしまった。
それでもアメリカでは異動が決まってから1ヶ月というのが通常なので、3ヵ月というのは異例の長さの模様。異動先の部署や同僚に引継は3ヶ月というと、物凄く気の毒そうな目でみられたり、中には「Crazy!!」と憤る人もおり、興味深いリアクションであった。

 

新しい挑戦は良いことで、みんなが祝福をする

私の異動の話は、私は自分のチームと、新旧のマネージャー、異動の決定プロセスにあった役員にしか私は話していなかったのだが、みんな噂話が好きなのでまたたく間に社内に広がっていった。私が異動の希望をだした時に、実は私の直属の上司が丁度会社を辞めてしまったので、正直異動するタイミングとしてはあまり良くない。私までいなくなってしまうと困るだろうなぁ、という懸念は私にもあり、「今のタイミングはないんじゃない?」という批判もされるだろうという覚悟はあった。

が、話す人話す人が「新しい部署に異動するみたいじゃん、おめでとう!」と口々に言ってくれたことには驚いた。周りから”Cool!!”、"Congratulations!!"、"Great opportunity for you!!などの言葉のシャワーをあびると、おめでたい性格なので当初の懸念はどっかにいき、「きっと今回の異動は素晴らしいものに違いない」と前向きな気持ちに自然となる。

こういうリアクションの背景には、会社や部署の事情より個人のキャリアアップが一番大事という考え方にプラスして、「挑戦をすること」と「挑戦する人をサポートすること」は美徳というアメリカの文化があると思う。それは日々のアメリカの暮らしでも実感していることであり、色々苦労はあるが「自分の人生を生きやすい社会」であると思う。

1ヶ月前の通知でいつでも解雇されるという可能性もあり、決して優しい環境ではないが、私にはこちらの方が働きやすいかな。

 

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