Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

IBMのSun買収考

IBMによるSun Microsystemsの買収がいよいよ大詰めにはいっている模様。2000年のピーク時には時価総額が2,000億ドルをこえたこともあった(尚、現在IBM時価総額は1,372億ドル)Sun Microsystemsが、10年も経たないうちに、その価値をわずか63億ドルほどに落として、こうも簡単にIBMの軍門にくだってしまうとは・・・。厳密に言えばまだ軍門にくだったわけではないが、"I.B.M. Reportedly Will Buy Rival Sun for $7 Billion "というNYTの記事では、

Some 100 lawyers have been working in a hotel in Silicon Valley on intellectual property matters.
100人近くの弁護士がシリコンバレーのホテルで知的財産がらみの取り扱いを決めるために缶詰になっている。

People familiar with the negotiations say a final agreement could be announced Friday, although it is more likely to be made public next week
とある関係筋からは4月6日(金)には交渉が最終合意にいたり、4月9日週には発表される可能性が高いとのこと。

なんて報道がされているので、まぁ時間の問題だろう。


本件について、いくつか思うところがあったので、いつものごとく書き散らしてみたい。

買収合戦にならないモノ悲しさ

Sun Microsystemsは落ち目といってもFY09に売上139億ドル、粗利65億ドルをたたき出している会社。さらに超優秀なエンジニア、知的財産などの資産も潤沢にもっているこの会社が目の前でわずか63億ドルでIBMに買収されようとしているのに、誰も他に手をあげないということに、正直私はかなり驚いている。富士通はさておき、Unix市場でそれなりに存在感をださなければならないHPやサーバ市場に進出しようとしているCiscoは微動だにしていないように見える。
ハードウェアに大きな投資をすることに腰がひけているということと、折からの不況で財布の紐がかたくなっているということが原因だろうが、買収合戦の競合が全く出現しないので、ほとんど言い値になっておりIBMは笑いがとまらないはずだ。IBMって会社は本当に買い物運があると思う。その反面、あのSun Microsystemsが破格の値段で買収されようとしているのに、買収合戦にならないというのはなんともモノ悲しい。

今回の買収におけるIBMの狙い

知的財産やソフトウェアなどのSunの潤沢な資産が如何にIBMにとって価値があるかという点を先ほど紹介したNYTの記事は強調しているが、私はIBMは今回2つの大きな目的があると思う。
まず、1つ目は非常に夢のない話。おりからの不況で企業のIT投資がものすごく冷え込んでいるのはご承知の通り。根強いファンがいるとはいえ、高級感の強いIBMのハードウェアがこのご時世にシェアを大きく伸ばして成長するというのは考えにくい。むしろ、不況のあおりをうけて売上が下がっていくのは目に見えている。この状況の中で、ハードウェア部門が対前年比で成長するためには、買収がもっとも確実で手っ取り早いIBMのハードウェア部門の人間がFY09の成長戦略を昨年描いた際に、真っ先にあがったのが買収という案で、本気か冗談かSun Microsystemsなんて名前があげられていたところ、あれよあれよという間に話が進んでしまった、話は意外とこんな単純なものだと私はにらんでいる。
2つ目はもう少し夢がある話。今回の買収は向こう5年、10年を見すえたIBMのハードウェア事業の戦略の答えだということ。仮想化技術の進歩、Cloud Computingの出現などの時代の流れを考慮するとハードウェア事業というのは今後はゆっくりと衰退していくことは間違いない。数多のハードウェア企業の統廃合がこの10年間で進んできたが、今幸いにも生き残っている会社が引き続き生き残れる保障などどこにもない。撤退に向けて準備をするのか、統合する側にたってもう5年、10年生き残りをかけて戦うのか、選択肢は2つに1つしかないが、IBMは結局後者を選択したというのが、この買収から読み取れることだ。
今後も引き続き統廃合が進んでいくだろうが、Sun Microsystemsを買い損ねたHPは後から自分の失敗に気付き、多分egeneraでも買うのだろう。


栄枯盛衰の激しいIT業界。富士通NEC、日立という国産企業の動向も含めて、統廃合がどのように進んでいくのか注目していきたい。

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