Nicholas Carrが"Why Kindle is no iPod"というエントリーで、「AmazonはKindleを読書という分野におけるiPODにしたてようとしているみたいだが、それは難しい」と指摘している。KindleがiPODと決定的に違うのは下記の2点と強調しており、これはかなり的を得ている。
- iPODをAppleが発売した時は、Portable MP3 Playerの市場は既に構築され、成長段階にあったが、Portable Book Reader市場は以前構築されておらず、発表されている製品の殆どは失敗している(即ち、デバイスの市場を一から構築しなければならない)
- iPODをAppleが発売した時は、NapsterによってiPODに格納することができるMP3形式の音楽が人々に大量に配信されていたが、Kindleの場合は誰の手元にもまだコンテンツが届けられている状態ではない(即ち、Kindle向けのコンテンツ市場を一から構築しなければならない)
iPODは「イヤホンを耳にあてて歩きながら音楽を聴く」という20年以上も歴史のある人々の行動様式や感覚にのっかっているわけだが、Kindleの最大のチャレンジはページをめくりながら紙に印刷された本を読むという行動様式や感覚を変えることにある。本好きの私にしてみればこれはかなりチャレンジング。ここが最大の山場であるのだから、デバイスが手元に届いたら直ぐに利用できるコンテンツを充実させるような取り組みをして、2点目のチャレンジをそもそも無くすくらいの戦術をとらないと普及はおぼつかない。例えば、新規にAmazonで書籍を購入した場合はもちろんのこと、既にAmazon上で購入済みの書籍については、Kindle向けのデジタル・コンテンツも無償提供されるくらいの気前の良さが欲しい。でなければ流石に$399というデバイスに対する食指は動かない*1。
確かに、iPODと比較すると普及に向けての道のりははるかに遠く、険しい。ただ、ベンチマークとなる大成功事例が手元にあるわけだから、それを活用しながら、もう一ひねりも二ひねりも欲しいところだ。
*1:個人的な感想では、あのデザインのデバイスに$399というのはこれまたかなりチャレンジングではある・・・