Jeff HoweがCrowdsourcing:Rent A Coderというエントリーでオンライン労働市場の"Rent A Coder"というサイトを紹介している。概要は下記の通り。
- "Rent A Coder"には14万人のプラグラマーが登録をしており、5.5万人の雇用者がそのサービスを活用し、毎月なんと1.1万のプロジェクトが完了している
- Clint Witchallsという人がウェブデザインの作業依頼したところ、63名からの応募があり、結局サイトの構築からホスティングまでを$150で完了させた
- 尚、とあるウェブデザイン会社に確認したところ、上記の作業は$2,000から$10,000が相場とのこと
これは正に"Crowdsourcing"の中でも労働市場のロングテールの活用に焦点をあてたものだと思う。本エントリーでは自分の整理のために、労働市場と"Crowdsourcing"についてかみ砕いて考えてみたい。
労働市場と死に筋商品
労働市場とは、労働力を求める人がお金を払うことにより、ある人の労働力を買う市場のこと(逆を言えば、ある人が、自分の労働力を売る市場)。
市場で取引が成立するには、報酬、拘束する時間帯、場所、スキルなどの沢山の条件を買う人と売る人の間で合意形成しなければならない。例えば、引越しのアルバイトなどは1日1万2千円程度という報酬は殆ど決まっているが、売買が成立するためには「8月14日に9時から千葉県で1日しゃかりきに働ける元気と力のある人間」というように他の細かな沢山の条件もクリアする必要がある。
なので、「全国どこでも8月中であればフルタイムで引越しのアルバイトしまっせ」なんてタイプの労働力は売れ筋商品となるが、「8月14日神奈川県限定で午前中のみ引越しのアルバイトしまっせ」なんて制約の多い労働力は死に筋商品となり、市場で取引される機会は非常に少なくなる。
死に筋商品に日の目があたるとどうなるか
今までは、市場に埋没していた死に筋の労働力は沢山あったわけだが、技術とネットワーク効果により時間と場所に成約をあまり受けず、労働力が活発に売買されることが可能になってきた。"Rent A Coder"の事例などは、この点を理解するのに非常にわかりやすい。
で、この死に筋商品に日の目があたると、労働力を買う側はより柔軟に、効率的に労働力を調達することができる。引越しのアルバイトを例にとれば、千葉県から神奈川県への引越し案件があった時に、午前中のみ千葉県在住の人を1人雇い、午後は神奈川県在住の人を1人雇うことも可能になる。
よって、企業側は労働力が確保できないというリスクを減らすことができるし、そういったリスクを回避するために人を抱えておくなんていうオーバーヘッドを解消することもできる。
効果は「欲しい時に欲しいだけの人」をということだけか?
上記で見たとおり、On Demandに労働力を売ったり、買ったりしやすくなるというのは、企業の効率性を考えた時に重要な要素であるが、「群集」から労働力を調達することのメリットはそれに限定されるわけではない。
「群集」からの労働力を買おうとすることは、より多様なスキルセットの中から労働力を調達しようということに他ならないため、知識集約型の作業については、調達コストやOn Demandさより、「群集の叡智」による効果の方をより大きく期待することができる。
ただ、「高度に知識集約型の作業を、群集の持つ情報量とスキルの多様性に期待し、委託をする」というケースだけではなく、「ボリュームの多い単純作業を、群集の持つ潜在的な労働力の総量に期待し、委託をする」という対極にあるケースもあるため、そこを区別をして議論することが必要だ。