梅田さんのブログで紹介されていた"The Rise of Crowdsourcing"を読んでみた。
企業を複数の機能に分解して、どの機能を自社に残し、どの機能をアウトソースし、どの機能は他社と提携するかを検討することにより、最適なビジネスモデルを構築するのかというのは最近の企業戦略の議論でよくでる話。この"Crowdsourcing"という考え方により、最適な組み合わせを検討する企業の選択肢が一つ増えたことになり、非常に興味深い。
Crowdsourcing represents the act of a company or institution taking a function once performed by employees and outsourcing it to an undefined (and generally large) network of people in the form of an open call.
"Crowdsourcing"とは、企業や団体が従来従業員やアウトソースによって実施していた業務機能を、不特定多数のネットワーク上の人に対して公に発信することにより受託することを意味する。
という定義を確認した上で、
いずれにせよ「Crowdsourcing」は、「アマチュア論」みたいに「Crowds」側に焦点を合わせてモノを見る見方ではなく、企業・組織の側から見るんだ、ということを、定義として徹底する必要がある。
という点が梅田さんのエントリーで強調されており、これには大いに同感し、議論がよれそうで非常に気になる点。
大勢のアマチュアと少数のプロのどちらが優れているかなんて議論になると興ざめで、ポイントは
- 効率性を維持しながら一企業が物理的に自社に抱え込むことができるリソース・スキルセットには限界がある
- 従来はその限界を打破するために、経理処理専門の会社に業務を委託したり、コンサルティング会社にプロジェクトを委託するというアウトソース・業務委託という形を企業はとってきた
- ただし、経理処理専門の会社やコンサルティング会社も所詮は一企業であるため、抱え込むリソース・スキルセットに限界がある
- 企業対群集というスキームにより、企業対企業で生じていたリソース・スキルセット面のボトルネックを解消し、企業経営の効率性を高める
という点にあるはずだ。
「群衆の叡知」を利用して企業や組織が価値を創出しようという営みだから「Outsourcing」を想起させる「Crowdsourcing」という名称をつけておきながら、・・・
もう1点気になるのは、"群衆の叡知"を利用することが"Crowdsourcing"の前提か否かという点。梅田さんは上記のようにそこが前提というようにとらえられているようだが、"The Rise of Crowdsourcing"の中では下記のように様々な事例が紹介されており、
- "群衆の叡知"を活用した業務委託(InnoCentiveの例)
- "労働市場のロングテール"を活用した業務委託(Amazon Mechanical Turkの例)
- "CGM"を活用した業務委託(?)(iStockPhotoの例)
「群衆の叡知」を利用することは、"Crowdsourcing"という幅広い考え方の中のあくまで一手法にように語られている。
直感的には、確かに"群集の叡智"に限定したほうがすっきり腹におちるのだが、提唱者がそれに限定していないのであれば、まぁ仕方がない。この辺りはそのうちきちんと議論がなされ、あるべき形に収束していくことが想定される。
ただ、"Crowdsourcing"という言葉を含むブログを読んだり、自らブログを書いたりする時は、そこの区別を意識することが重要だろう。On Demandに労働力を売ったり買ったりするという"労働市場のロングテール"を"群集の叡智"とワンセットで考えると議論がややこしくなるので注意が必要だ。
"Crowdsourcing"、興味のある内容なので、今後本ブログでも多くとりあげていきたい。