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ktdiskのブログ

読んだ本の感想、所々の雑感、日々のあれこれを綴るブログ。

こてこてのアメリカ資本主義に対する不信

私が引用したグーグル幹部の発言や創業者二人が持つ黄金株に、id:ktdiskさんが言う「妄想」つまり「市場に対する根本的な不信」を読み取るのは、そんなに無理筋ではないと思う。
Googleの特異な「垂直統合」思想に「文系が悪いメソッド」を見る

本論とは関係ないがGoogleの幹部が持っているのは「市場に対する根本的な不信」というよりむしろ、ウォール街のアナリストを中心とした「こてこてのアメリカ型資本主義に対する不信」だと思う。
よく「アメリカの経営は株価の上昇や短期的な利益のみを追求しすぎ、長期的な企業戦略に基づいていない」なんて批判がされるが、意外と具体性をもってどの程度短期的な利益を追求しているのか、ということが語られることが少ない。
Googleの経営者が毛嫌いするウォールストリートのアナリストの期待に応えるためにどんな短期的な利益の追求の仕方をこてこてのアメリカ型資本主義企業はしているのか、私の経験ベースに紹介をして見たい。

翌四半期の話をしたら鬼が笑う

とある企業は徹底した四半期経営。別に業態が3ヶ月という経営サイクルを求めているわけではなく、決算の開示が四半期単位で、四半期単位でうるさいアナリスト軍団とそれに追随する投資家がいるから。
金額の大きな契約をお客様から獲得するためには3ヶ月というサイクルがあまりに短く、翌四半期どころか、翌年度のビジネスために如何に種をまくのかは非常に重要。しかし、業績の評価や報酬の支払われ方が強烈に四半期単位であるため、"翌四半期"は一般の日本企業でいうところの"翌年度"という意識の方が非常に多い。
あまりに短期指向で、先々を考えていない自転車操業的なことをやっているので、「翌四半期、及び翌々四半期に向けてのビジネスプラン策定」という会議を実施することを提言したところ、「翌四半期の話しなんてしたら鬼が笑うよ〜」と本気で馬鹿にされた・・・

ある四半期の経費目標が決まるのは当該四半期末月

お客様から契約をもらうことよりも、社内の経費を削減するほうがはるかに簡単。なんだかんだ言っても社内の経費についてボールを握っているのは自社だからだ。この経費削減というカードの切りやすさがこてこてのアメリカ企業では思わぬ害を及ぼすことがある。
流石に最近は売上至上主義を脱してもっとも重視されるのは利益。なので四半期単位で投資家に対して「いくら利益をだすか」を経営者は約束するわけである。ビジネスが順調に推移している時はよいが、売上が思ったほど伸びず、それに伴い利益も目標に到達しなそうな時に、"経費削減"というカードは非常に便利。削減した経費の分だけ利益は確保できる。売上に対する経常利益が20%の会社であれば、2千万円経費を削減すれば、1億円の売上をあげたのと同じことになる
売上予測は当然上下に変動するものなので、"経費削減"というカードはなるべく沢山もっておきたいもの。すると売上の実績にあわせてカードをきるというゲームが始まってしまう。即ち、「売上が目標の100%いきそうなら、経費は1億円使ってもいいが、売上が90%にとどまりそうなら経費は8千万円までしか使ってはダメ」というコントロールをその四半期中にやるのである。
当然四半期末に近づけば近づくほど予測値が確かなものになるため、踏ん切りが悪いと当該四半期残り2週間で当該四半期の経費のターゲットが決まるなんて珍事が発生してしまう。


「馬鹿なことを・・・」と感じる方も多いと思うが(実際に馬鹿なことだが・・・)、組織が巨大になり、システマティックにしか動けなくなるとこんなこともでてしまうもの・・・。別に肯定をするつもりはないが、盲目的に批判をするのではなく、『ルービン回顧録』で紹介されているウィルケンマンの指摘についても念頭においておく必要はある。

ルービン回顧録

ルービン回顧録

・・・<中略>、四半期ごとの収益への関心の高まりは百害あって一利なしとは言わないが、善悪の両面があったことは否めない。・・・<中略>、この問題をマーク・ウィンケルマンと話し合ったことがある。・・・<中略>「アメリカの経済システムの甚だしい欠点は短期的な視野にばかりとらわれていることだ」と私は指摘した。

ウィンケルマンは私の考えに同意しなかった。短期重視は企業が問題点を見直すよい機会だととらえていた。理想的な管理職なら、長期的展望さえ持っていれば最適な経営ができるだろう。しかし管理職も生身の人間なので、長期的展望を、問題に取り組まない言い逃れに利用しがちである。・・・<中略>確かに短期的な業績に責任を負う必要がなければ厳しい決定を下さず、長期的な展望をその言い訳に使いがちである。「将来に投資している」というのがその決まり文句だ。
しかし、次第に短期的な動向ばかりが重視されるようになり、バランスが崩れ始めた。確かに短期の業績重視は企業の管理職が問題点を見直すよい機会になったが、長期的な展望があまりにないがしろにされるようになった。・・・<中略>しかし企業が短期的な業績を上げるように強いられる状況が続けば、企業は長期的にみて利益を上げることができず、結局はアメリカ経済全体も伸び悩むことになるかもしれない。

『ルービン回顧録』 〜第十二章 P.439〜441〜

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