Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

ハリスVSトランプテレビ討論会雑感

2024年9月10日に民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ元大統領(以下敬称略)によるテレビ討論会が実施された。私の職場では政治の話がされることは滅多にない。が、今日の部署のリーダー会議の冒頭で、この話題で思いの外盛り上がっていたので、やはり注目度は相当高いのだろう。

正直、ハリスの政策論や政治手腕に懐疑的な私は、テレビ討論会でぼこされるのではないかと心配していたのだが、思いの外ハリスが健闘していたので驚いた。実際の討論の様子やいくつかアメリカの記事を見て思った雑感を共有したい。

 

先制パンチを打ったハリス

討論会の会場に入場するシーンはかなり印象的だった。自分の演台に一直線に向かうトランプに対して、一直線にトランプに握手を求め、“Let’s have a good debate”と発言したハリス。大統領立候補後に公開インタビューなどに応じない消極性を払拭するような先制パンチ。

“Nice to see you. Have fun”とそつなくトランプは握手に応じるも、ハリスの「自分が主導権をとる」という印象付けは成功したのではないか。ゴングがなったら一直線にパンチを打ちにいこうという作戦が功を奏したように見えた。

 

パンチを打ち続けるハリス

先制パンチだけでなく、トランプの経済政策、2020年の選挙結果を認めない姿勢、選挙集会での振る舞いなどを批判し、積極的にパンチを打ち続けるハリス。「過去に執着し、将来をみないリーダー」という印象付けをしようという意図を感じた。これは、「お前、副大統領のくせに過去3年半何やってんたんだ!」という痛い腹を疲れた時の防御も兼ねたヒットアンドアウェイで悪くなかったと思う。

 

「ハリス=バイデン」戦略

一方のトランプは繰り返し“She is Biden!”とバイデンとハリスを重ねあわせる作戦にでたように思える。インフレ、終わらないロシアとウクライナ戦争、イスラエル政策など現政権の痛い腹をつきつつ、ハリスをバイデンと重ね合わせようという印象付けを試みたのだろう。

その等式が成り立てば、バイデンが大統領候補だった際の自分の支持率に戻るのではないかという目論見だったかもしれないが、バイデンの支持率が低かったのは、よぼよぼのおじいちゃんだったことも大きそうなので、浮動票へのメッセージとしてはちょっと弱かった印象を受けた。

トランプの発言中も冷笑を続け挑発するハリスに対して、トランプは挑発にのらないようにこらえていたように見えた。「挑発にのって失言して、失点をつけないようにしてください」とスタッフからあったのだろうか。少し普段の勢いがなく裏目にでたようにみえた。

 

経済政策の論戦は泥仕合

ハリスは、中産階級への手厚い保護を訴えつつ、トランプ政権時の失業率の高さを批判し、トランプは自分が大統領の時の好調な経済をアピールしつつ、バイデン政権におけるインフレを手厳しく非難した。

トランプ政権時の失業率は過去最高、バイデン政権のインフレ率は過去最高と互いに事実無根の中傷合戦をし、未来に向けての具体的な政策が語られることはなかった。具体的な政策論争のない噛み合わない議論で、泥試合と言っても過言ではない。あえて踏み込まなかったというより、両者とも踏み込んだ経済の政策論争ができないという見方を私はしており、アメリカ在住者として今後の景気に不安を覚える内容であった。頼むよ、おふたりさん。

 

妊娠中絶問題はやはりホットトピック

自民党総裁選で妊娠中絶問題が主要政策として語られるということは考えられない。が、アメリカ大統領選挙で妊娠中絶問題がとりあげられないなんてことは同様に考えられない。その位、保守とリベラルの構図の中で、この問題はホットトピックなのだ。ハリスはこの点については流石に入念に準備をして、「女性の権利保護」という大きな言葉で包んで、うまく浮動票層にメッセージを発信したと思う。

 

「移民がペット食べる」問題

今回はトランプ節がなりを潜めていたが、やっぱりやってくれました。

In Springfield, they are eating the dogs. The people that came in, they are eating the cats. They’re eating – they are eating the pets of the people that live there.
スプリングフィールドでは、あいつらは犬を食べているんだ。そこにやってきたやつらは、猫を食べているんだ。あいつらは、そこに住んでいる人たちのペットを食べているんだ。

「ハイチから移民が居住者の犬や猫のペットを食べている」というトランプ節を見事に展開。この日のために練習してきた冷笑スマイルをここぞとばかりに浴びせるハリスも若干下品であったが、下品勝負では元大統領に軍配があがる。

これに対して「事実無根でけしからん!」と忌み嫌う人もいるかもしれないが、まぁトランプファン向けのマイクパフォーマンスくらいに私は捉えている(勿論、下品だなぁ、とは思うが)。

 

テイラー・スウィフトが民主党支持

人気の著名人がどの候補を推すのかを打ち出すというのも、日本ではあまりない光景で、テレビ討論会後のお馴染みのシーンである。浮動票が雰囲気で流れるというのは日米ともに同じで、これが意外と影響力があるから面白い。日本で、橋本環奈が「私は次期自民党総裁に高市早苗さんを推します」と言っているようなもので興味深い。

 

メディアの反応

アメリカでは多くのメディアの政党の色がついているのでそれを加味して情勢判断をしないといけない。共和党寄りのロイターはハリスの経済政策に具体性を感じず、共和党支持に傾く無党派層が多かったと報じるし、民主党寄りのCNNは討論会はハリスの勝利!、と伝えている。

が、総じて民主党より、並びに中立性のあるメディアはハリス優勢と評価し、保守寄りの方から「トランプ、何やってんだ!」という評価がちらほら聞こえるので、全体の評価としてハリス優勢とみて良いと感じている。

 

まとめ

「まとめ」と題してしまったが、思いついた内容をつらつら書いたのでまとめようがない、、、。が、アメリカ当地ではかなり盛り上がりを見せているアメリカ大統領選は、選挙権がない在米日本人は野次馬的にかなり楽しめる。私の住むカリフォルニアは揺らぐことのない民主党州ではあるが、四面楚歌で「2024 TRUMP」という幟を掲げて車で疾走するトランプ支持者もおり、興味深い。引き続き砂かぶり席で両横綱(大関くらい?)のがっぷり四つの相撲を観戦したい。以上、アメリカから速報でした。

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