Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

社会人としての仕事の極意はみんなバイトの中華料理屋で学んだ

私は、学生の頃に大学の近くの中華料理屋でバイトをしていた。勿論、聘珍樓のような中華の名店ではなく、大学のある東京都国立に昔からある「町中華」で、多い時でも社員2名、バイト2名体制でまわす、客席30くらいの小さな店だった。友人は家庭教師などで時給3千円近い謝礼をもらう傍ら、せっせと時給8百円で皿洗いをしている私は、変な奴と周囲には思われていたかもしれない。学生の頃は色々なバイトをしたが、中華料理屋のバイトは通算で3年ほどやり、長く続いたのはきっと自分にあっていたからなんだと思う。働いている社員の人たちは気の良い人ばかりで楽しく仕事をさせて頂いた。「俺、卒業したのラーメン大学だから」とかとぼけながらも、ホール担当が読み上げた注文を10オーダーくらいは頭に入れ込むその記憶力に舌を巻いたものだ。

 

中華料理屋のバイトに楽しかった記憶は勿論沢山あるが、そこから学んだことも大きかった。勿論、麺上げのタイミングとか、プロの下味の付け方とか、音で餃子の焼き色を把握する技術とか、料理に関することも多く学んだが、それ以外にそこで学んだ多くは社会人として仕事をする上で多くが役立っているし、私の強みの多くはバイトの経験を通して培われたと言っても過言ではない。本エントリーでは、私が「町中華」で学んだ仕事の極意を共有したい。

 

仕事やトラブルが一斉に舞い込んでも冷静に対処する力

仕事をしていると、忙しい時に限って、盆暮れ正月が一気にきたように立て続けに色々舞い込むことはよくある。ただでさえ忙しいところに、追い込みをかけるようにトラブルが並行して起きるという経験がある方は多いに違いない。私は、そういう状況においてこそ、仕事人としての真価が試されるといつも考えている。慌てふためいては駄目だし、過酷な状況を呪ってふてくされても事態は好転しないし、投げたり逃げたりするのは論外だ。結局、優先順位をつけて一つ一つ淡々と対処をしていくしかない。わぁーっと仕事が舞い込んだ時に、パニックにならず、一呼吸おいて前に進むためのアクションを粛々ととっていくことは、私は自然とできるのだが、その能力はおそらく中華料理屋のバイトで培ったものだ。
私がバイトをしていたのは小さな町中華なので、店員が4名いても店がガラガラなこともあるが、昼時に一気にお客様が舞い込むということはよくあった。5分前までがらがらだったのに、あっという間に満席になって、てんてこ舞いになるということは日常茶飯事だった。3つくらいのテーブルからお客様がオーダーするために手をあげ、カウンターに運ぶべき料理が一度にあがり、さらにお会計をしようというお客様が2名ほどレジで待っている、それを全部自分で対応しないといけない、なんてことはよくあった。バイトを始めたばかりの頃は、あわあわとうろたえただけであったが、場数をこなすごとに、色々舞い込んでいる状況を理解して受け入れ、百点は諦めて大失点しないことを念頭におき、状況を落ち着かせるために粛々と一つ一つ対応する、対応力と胆力を学んだ

 

自分が苦手な人ともそれなりにやっていく能力

楽しく仕事をする上で、誰と一緒に仕事をするかはとても大事な要素だ。私が会社や部署を選ぶ際に、「一緒に仕事をしたい人」がいるかどうかは、最も重要な指標だ。だが、仕事をしていると、自分が苦手な人とも付き合わないといけない。私は、特に敬意をもって人に接することができない人や自信のなさの裏返しで横柄な態度をとる人とはあまり楽しく仕事ができない。が、そういう人というのは驚くほど多く、そういう方ともうまく付き合わないといけないのが現実だ。
そういう苦手な人への耐性、対応能力というのも、中華料理屋のバイトで学んだことの一つだ。接客業というは本当に大変な仕事だ。飲食店では「お客様」という立場を活用して、上から目線で顎で使ってくる人というのはとても多い。私のバイト先では、特に家族連れのお父さんというのが鬼門であった。「今日はお父さんがご馳走するから好きなモノを食べなさい」だけなら良いのだが、家族にお父さんの威厳を見せるために、ホールの担当に横柄かつ高圧的な態度で接する人というのは本当に多かった。私は苦手な人にはそれが伝わりやすいタイプなので、そういう高圧的なお客様がきた場合は、「この人はこういう人なんだ」ということを心理的にまず受け入れた上で、態度にでないように特に丁寧に対応をするようにしていた。横柄な態度というのは自信の無さの裏返しということに気づくのは社会人になってからであったが、感情をあまり交えず、相手をあるがままに受け入れ、その上でこちらは敬意をもって接するというのはバイトで学んだ姿勢は、苦手な人に対処するためにその後のキャリアで役に立ったことの一つだ。

 

状況を見て、やるべきことを咄嗟に判断する能力

細かな指示がなくても、状況をみて、優先順位をもって取り組むべきことを判断し、実行するというのは仕事を進めていく上でとても大事だ。指示待ちをしている間は一人前とは言えないし、また役割を超えて全体の目的を達成するためにやるべきこと適切に判断し、行動に移す能力は、短期間で大きな成果をあげることが求められるプロジェクトに従事している際は特に大事だ。現状からなるべく多くの情報を読み取り、その情報を適切に読み解いた上で、なすべき行動に落とし込む、その一連の流れというのは理屈だけでなくセンスが問われ、それらの質そのものが、その人の仕事のできるできないを決めると言っても過言ではない。
私のバイト先は、昼食時と夕食時は混沌としていた。鍋担当、麺担当、ホール担当、皿洗いと食材出し担当という役割分担があったが、地味だが私がポジション的によく入っていた皿洗いと食材出し担当は、混雑時に他をカバーする臨機応変さが求めれるポジションであった。最初の頃は、「ホール出て手伝ってあげて!」、「麺、後1分であがるから、よろしく!」、「餃子は注文は2枚だけど、4枚焼いて!」とか、支持を受けて他をサポートするという感じだったが、経験を重ねてくると、他のポジションのカバーも含めて、状況に応じて臨機応変に対応することができるようになった。頭で組み立てて考えるというよりも、状況をぱっと見て、やるべきことがすっと感じ取ることができるようになり、積み重ねた経験を元に直感力を鍛える能力を養うことができ、社会人として仕事をする上で、今でも特に役にたっている。

 

大学に入る前は自分が中華料理屋で3年も働くなんて想像さえしていなかったが、学生の時にやったバイトで一番心に残っているバイトはと言われれば、その中華料理屋のバイトが真っ先に浮かぶ。もう20年以上も前の話で、私がバイトをしていた支店は閉鎖になってしまったが(本店は未だに健在であるのは涙がでるくらい嬉しい)、今でもその活気ある中華料理屋で自分が働いていた姿はありありと思い出すことができる。「みんな、勉強になるから飲食店でバイトしたほうが良いよ!」などと言う気はさらさらないが、思わぬ出会いや勉強の機会があるので、色々なバイトを経験することはオススメしたい。

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