- 作者: 梅田望夫
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/03/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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まず、読みながら思い浮かんだのが、「自分の器を大きくするには、自分より器の大きい人と接するしかない」という、最近自分が考えていること。
「器」なんてものは、生まれもった才能、育った環境の違いという現時点ではいかようにもし難い要素によってある程度形作られてしまっているのは事実。ただ「自分より器の大きい人と接する機会を意識的に作る」という努力を通して、後天的にも「器」を大きくすることができるというのが私の考え。
なので、一緒に仕事をする人を選んだり、仕事以外で人と会う機会をつくったりして、直接的に自分より「器」の大きい人と触れ合う機会を積極的につくるとともに、良書をなるべく多く読むことを通して、間接的に自分より「器」の大きい人にふれる努力をしている。
そういう間接的なふれあいという点で評価をするに、本書の私の中での良書度合は、今まで読んだ本の中で間違いなくトップクラスにはいる。エッセンスが凝縮されていることもさることながら、偉人伝ではなく現在進行中の革命の渦中からつむぎだされた金言にふれることのできるという点が、他にない点ではないだろうか。
また、本書に登場する偉人たちは、名前だけ見ると異次元感が強いが、やはり同じ生身の人間であることにかわらないことがわかることには勇気づけられる。
より革命的な変化に、私は魅了され続けてきた。
自分でもなぜだかわからない。
なぜなら、それを選べば、もっと困難になってしまうからだ。
より多くのストレスを心にかかえこむことになる。
みんなに、おまえは完全に失敗した、
と言われる時期もおそらくあるだろう。−スティーブ・ジョブズ
I've always been attracted to the more revolutionary changes.
I don't know why. Because they're harder.
They're much more stressful emotionally. And you usually go through a period where everybody tells you that you've completely failed. - Steve Jobs
『ウェブ時代の5つの定理』 〜第一定理 アントレプレナーシップ P.21,22〜
当然といえば、まぁ当然だが、あのジョブズでさえ、'more stressful emotionally'なのである。ジョブスだって他の人間と同様に、iTuneの展開にあたり「できない言い訳をあげろ」と言われたら350個くらいは間違いなくあげられたわけで、その思い浮かぶ言い訳の数だけ、ストレスを感じ、時には自分は間違っていたのではないだろうかなどの不安にかられながらも、それらにひたすら立ち向かい、「革命的な変化」を実現したわけだ。それを想像するに、凡人である私などより努力をしなければならないし、また30個くらいのできない言い訳に疲れたりしていてはいかんなぁ、と発奮するところがあった。
最後に、本書が今までの梅田さんの本と違うなぁと思ったところを1つ。本書は登場するビジョナリーを前面にだして、著書自身は後方から解説するという形式をとっているため、ビジョナリーの切れ味のある言葉に多くふれることはできるが、梅田さんの切れ味のある言葉はそれ程は登場しない。まぁ、それは本のコンセプトだから仕方がないが、そこが今までとは違うところ。
だが、ビジョナリーの言葉の解説という役割から解放され、自らが前面にでれる「あとがき」という少ない紙面では、すごく「らしさ」がでていて面白かった。
イノベーションやブレークスルーはどのようにすれば創出できるのか。
この難題に対する美しい答えなど存在しません。
しかし答えがないからこそ、いくらウェブ上に叡智や情報が集積されようと、いくらコンピュータが進化しようとも、ここだけが最後まで「人間に残された可能性の聖域」であり続けるのです。ここに人間ならではの可能性が存在するからこそ、私たちは未来に希望を持つことができる。そう、私は思います。
『ウェブ時代の5つの定理』 〜あとがき P.261〜
あえて「あとがき」の言葉をかりれば、本書は「人間に残された可能性の聖域」における達人、及びその金言にふれる最良の機会。是非ご一読のほどを。