- 作者: アンドリュー・S.グローブ,Andrew S. Grove,佐々木かをり
- 出版社/メーカー: 七賢出版
- 発売日: 1997/11
- メディア: 単行本
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- 環境の変化を受け入れ、新しい環境に向き合うことは大変な苦痛が伴う
- 環境変化の最中で進むべきベストの道を指し示すことはどんなに有能であっても不可能である
など、機械ではない生身の人間としての経営者の葛藤が、生々しく語られており、読み物としての面白みも充分にある。
その中で最近のインターネットの動向を考える上で、参考になったフレーズが下記。
顧客がそれまでの購買習慣を変えるということは、最も見えにくく、油断のならない戦略転換点の要因である。なぜ見えにくく、油断できないかといえば、それはゆっくりと時間をかけて進行するからだ。
『インテル戦略転換』 〜第四章 P.79〜
「競合企業との競争度合い」、「供給業者の交渉力」、「顧客の交渉力」、「新規参入の脅威」、「代替品/サービスの脅威」というマイケル・ポーターの5つの競争要因にプラスし、「補完関係にある企業の状態」という6つの力のいずれかに大きな変化が発生すると、それまで企業を運営していた暗黙のルールが崩れ去り、事業のあり方を根本から見直さなければならなくなる「戦略転換点」をむかえるというのが本書の中心となるメッセージ。そして、テクノロジーの進歩による代替サービスの出現のような競争要因の変化と比較し、顧客の購買行動に変化が発生することは、一足飛びではなく時間がかかるため、把握がしにくく、油断ならないというのが上記の引用の主張。
既存メディアと新しいメディアという競争の構図の中で、「顧客」、即ち情報の消費者の振舞い方にどのような変化が生じるかは非常に重要である。例えば、新聞やテレビのようなマスに対して配信されるコンテンツを快適と思う消費者が大多数をしめるのか、ブログのような対象範囲の非常に狭いメディアから自分の興味に色濃くそったコンテンツをえることを嗜好する消費者が大多数をしめるかはその競争において重要な要素となるだろう。上記の引用が正しいとすれば、そのような情報の消費者の嗜好の変化は仮におこるとしても、ゆっくり時間をかけて進行するということになる。
上記のことを考えるに、既存メディアは「ブログ?所詮素人の作るもので、結局大多数の人はテレビや新聞に依存しているから問題にはならない」ときって捨てるのではなく、変化がどの程度進行しているのかを注視すべきである。また、新しいメディアサイドも「顧客の購買習慣を変化はゆっくり時間をかけて進行する」と腹をくくって取り組むことが大事ではないだろうか。