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ktdiskのブログ

読んだ本の感想、所々の雑感、日々のあれこれを綴るブログ。

外資系企業のリストラ・レイオフあれこれ

外資系企業小噺

渡辺さんの『ヒューマン2.0―web新時代の働き方(かもしれない)』でアメリカでのリストラ、レイオフ話が生々しく、かつコミカルに描かれている。
ご自身がより過酷な雇用環境にいるが故に、企業勤めの人のリストラ、レイオフ事情を自嘲も込めてコミカルに書けるのだろう。
私は米国系外資系大企業に勤めるので、書かれている話に「そうそう」と共感できる点が多いし、「ここは日本では違うんだよなぁ」と感じる点がいくつかあったので、カジュアルなタッチで書いてみたい。

ヒューマン2.0―web新時代の働き方(かもしれない) (朝日新書)

ヒューマン2.0―web新時代の働き方(かもしれない) (朝日新書)

「アメリカではクビにするのは簡単なんだろうなぁ」と思っている方も多いのでは。が、アメリカは訴訟大国。クビになった社員が不当解雇で会社を訴えるケースも多い。勤務態度や仕事の成果の評価には、どうしたって主観が入りこむ。「人種・性別・年齢などによる差別で解雇された」と抗議されても対抗できるような客観的証拠を整備するのは結構大変である。
『ヒューマン2.0―web新時代の働き方(かもしれない)』 〜P.83〜

そう、非常にリストラへの道は険しい。本人のパフォーマンスが客観的な事実と照らして本当に解雇するに十分なほど低かったという証拠を集めるのはすごく大変。
客観的な証拠をいざ集めようとすると、意外と抗弁の余地が多いのが現実なのである。


例えば、往々にしてリストラ対象となる人というのは、世間一般で期待されるコミュニケーション能力を備えていないケースが多い。
本人に言わせれば「周囲が自分を理解することに十分な努力をはらわなかった」、よってもって「私の仕事の成果が低いのは周囲とのコミュニケーションの問題であり、それは双方の責任である」なんて話になることが多い。


また、「今以上に活躍できる会社に転籍することは、会社にとっても本人のキャリアにとっても良いこと」というロジックは、プロフェッショナルで構成されるコンサルティング会社などでは成り立つのだが、「私は会社にぶら下がることを決めたんです!」という割り切りと開き直りの境地に達した人には一切通用しない。大企業にはそういう境地に達した人が非常に多く、そこで本当にリストラの対象となるのは、その手の人たちなのだ・・・。だからすごく大変。


そして、訴訟大国ではない日本だって、社員が訴えを起こすケースはある。
解雇された社員が会社を訴えるというのは非常にマイルドな話で、牙をむいたリストラされそうになった社員が会社ではなく、リストラを職責として実施しようとしている個人を訴えるという荒業にでることもままある
戦うなら「強いやつ」より「弱いやつ」と言ったところか。
かなりマイノリティであるが後ろ向きな熾烈なサバイバル競争が日本でも展開されているのである。


よって、最近では、「クビにするよりレイオフ」という傾向もある。労力をかけて個別の社員をクビにするくらいだったら、レイオフの際に「ダメ社員」がレイオフ対象者に含まれるような形でまとめ切りした方が楽だから。いうなればダメ社員のバッチ処理「こいつはイマイチだなぁ」という社員を貯めておいて、レイオフの機会にまとめ切りするのである。
『ヒューマン2.0―web新時代の働き方(かもしれない)』 〜P.83、84〜

なので、個別のリストラではなく、レイオフというバッチ処理(怒られそうな表現だが、かなり適切)に頼るというのは理解できる。
が、日本ではレイオフという手段は残念ながら殆ど使えない。
というのも、「株主価値向上のために企業体制を贅肉の少ない筋肉質に保ち、なるべく多く利益を出す」ということがアメリカの経営者のトップ・プライオリティであるのに対し、日本の経営者にとってのトップ・プライオリティは「従業員の雇用を守る」という点にあるからだ。
よって、利益がだしている会社が、会社都合のレイオフなんてしようとすると、「利益がでてるのに何故従業員をきるんだ?」という話になる
とある弁護士曰く、そういうケースで訴えられたら日本ではその会社は裁判に勝てないというのだ。
これは、レイオフだけではなく、リストラにもあてはまる話なので、筋肉質に保ち、個々の強力な筋肉(有能な個人)にとっても成果に応じて評価をしてもらえる快適な職場環境を整えるというのは日本では残念ながら意外と難しいのである。


そこで、日本人が絞りだした知恵というのが「出向・転籍*1」という技なのだが、本社が「1国1社」という資本政策をとっていたりする外資系企業は、この「出向・転籍」という技も使えない*2


リストラもできない、レイオフもできない、という状況で生み出された苦肉の技が事業売却というこれまた荒業であるが、それについては"外資系企業とフルーツバスケット"という別エントリーで詳述したので、興味のある方はご覧頂きたい。


まぁ、以上書いた話は成果主義を志向する若い方には(私も31歳でまだまだ若いつもりだが)、何とも苦々しい話だが、一方で下記のような事情も理解はしなければならない。

  • 日本は一般的に年功序列賃金システムなので、キャリアの前半は低賃金を強いられ、後半はそれを回収する時期なので、お年寄りが自分の出している成果以上にお金をもらうのは致し方ない
  • 結果を出せば15時に帰ってもいい、結果を出せば1ヶ月休暇をとっていい、という世界とは大分異なり、色々な意味で会社に人生を捧げているという意識の人が多い

それでも、日本も最近は大分バラエティーがでてきたので、就職・転職活動をする際はその辺りを腹をわって話す必要があるだろう。
とっちらかったエントリーの上に、最後無理やりまとめたが、まぁ年の瀬なのでご容赦のほどを・・・。

*1:ここでは詳述しないが、平たく言えば、給与水準の低い子会社にダメ社員を移して、せめて人件費を多少なりとも削減するという技

*2:「1国1社」なので、日本法人を1社作ったらそれ以上は会社を日本に作れない・・・。故に出向させる会社を設立することができない。

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