つまり、日本ではごく普通の、「手続きを厳格にし、それをきちんと守ったらズルのしようがない」というシステムではなく、
「原則に則って勝手に個々人で正しいと思うことを粛々と進めるべし。途中でチェックはしないが、嘘を付いたら(そしてそれがバレたら)大変なことになるぞよ」
というシステムなんですなして、このアメリカのシステムが上手く運用される鍵は
「嘘はいけない」
という原則が徹底していること。「嘘ついてもばれなきゃいいやー」となったら、大変です。
On Off and Beyond: 嘘と手続き:ストックオプションのバックデート
アメリカでは、仮に手続きを厳格に守っていたとしても、それがイコール悪いことをしていないという風にはならない模様。なので、手続き上のルールにプラスアルファして、自分のしたことは嘘でもなく、悪いことでもないという説明責任を個々人がおうという風土があるとのこと。
一方で最近話題のSOX法は、ある意味「手続きにのっとれば悪いことには絶対につながらない手続きの構築」を強いる法律。上記の渡辺さんの指摘するアメリカとは一見すると全く逆の考え方のように見える。
これは、
- 個々の企業人を「自分のしたことは嘘でもなく、悪いことでもないという説明責任」から開放する
現象としてとらえることもできるし、
- 派手に悪質な嘘をついて、バレてしまった輩がいて、文字通り「大変なこと」になってしまった
と解釈することもできる。
ただ、仕事でアメリカ本社の人間とSOX法からみのやりとりをすることが多いのだが、そのやり取りの中で実際感じるのは、SOX法に従って手続きを作ったところで、結局は「ズルを未然に防ぐ手続き」というより、「正しく処理をしているという宣誓ポイント、もう少しくだいて言うと『嘘をついていない』という宣言をするポイントを細かく設けた手続き」を作っているにすぎないということ。
例えば、処理を進める上での証憑を添付するのが正式な手続きであっても、「証憑はないが、確かにこれは正しい」ということを宣言するメールがあって、その文面をデータベースに貼り付けておけば、意外とSOX法のチェック上は特にお咎めなしということが多い。「こんなんで、本当にいいのか・・・」と思うことが多々あるが、渡辺さんのおっしゃる上記の風土を考慮すれば、なんとなく納得できる。
ちなみに、このSOX法が日本にも輸入されるのはご存知の通り。アメリカでもてんやわんやだが、実はこのSOX法というのは別の意味で日本の外資系企業に隕石突撃くらいのものすごいインパクトを与えている。その話は、また後日・・・。