ある著名なベンチャー・キャピタリストは、辛辣に言い放つ。「私は冗談で投資先の起業家に言うんだ、『もし君の会社が売上高や利益を計上するようになったら、企業としての評価は地に落ちるだろうね』とね」。だが、統計データを見るかぎり、これは冗談どころが真実なのである。企業が利益を出すと、それはつまり、投資家が実際に株価収益率を計算できるということになる。インターネット・バブルの時代において、それは一般に、評価が大幅に低くなることを意味するのである。
- 作者: アンソニー・B.パーキンス,マイケル・C.パーキンス,斎藤精一郎,吉川明希
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
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- メディア: 単行本
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『インターネットバブル』 〜2章 P.101〜
売上・利益がでない間は、オンラインの顧客数、トラフィック、今風の言い方で言えばインターネット上のアテンションを如何に集めているかなどの代替指標で評価をされるが、一度伝統的な物差しで測定可能なフェーズに入ると、冷や水を浴びせたかのように株価が下がってしまう、なんとも逆説的だが、いかにもインターネットバブル時代っぽい話だと思う。
今年の2月にドリコムが東証マザーズに上場した。赤裸々に財務諸表が公開されたが、冷や水がかかることなく、高株価を維持して、滑り出しはまずは順調の模様。6月4日時点で時価総額は約340億円。平成18年3月期の売上高が約7億円、当期純利益約1.2億円ということを考えるとバブル風味が漂うが、まぁこれはドリコムの将来性に投資をしている投資家の方々が沢山いるということで、それについてはとやかく言うつもりは特にない。
ただ、売上高が7億円くらいの会社が上場するということは本当に赤裸々に自分の台所事情をさらけ出す行為なんだなぁ、ということは平成18年決算短信をみて強く感じた。いくつか例示すれば、
など。
売上規模がそれなりに大きければたかだか7千万円の売上で顧客名を公開されることもないだろうし、事業セグメントがもう少し多岐にわたっていれば粗利益などももう少しオブラートに包まれるだろう。生まれたままの姿で白日のもとにされている感があり、インターネット企業のIPOというと華やかなイメージがあるが、やっぱりPublicにその身をさらすということは大変なことだなぁと改めて思った。
Googleのようにきっちりタキシードを着込んでからベールを脱ぐ場合もあれば、ドリコムのような場合もある。後に続くインターネット企業がどんな装いであれわれるのか(特に、はてな)、それもまた一つの楽しみではある。