前回に引き続きドリコムの第一四半期の財務・業績の概況を分析してみたい。今回は売上についてみてみる。利益や利益率はもちろん大事だが、どんなビジネスを語るにしても、売上とその成長率というのは非常に重要。最近は企業のリストラが一巡し、利益を生み出す筋肉質な体制が整えられたため、経営者のフォーカスは再び売上の増加にあたっているらしい。
上記はドリコムの第一四半期の売上高。前年同期比144.5%の成長とベンチャー企業らしい、堅調な伸び率を見せている。営業利益がマイナスである点はかなり目が痛いが、これは年次決算の発表時にも予見されていたことなので、あまり投資家の方々も目くじらをたてることではないだろう。
ただ、売上を分析する時に重要なのは、全体の伸び率ももちろん大事だが、前年同期比の比較対象が同一なのか、セグメント別の伸び率がどうなっているのかなども非常に重要な要素。
例えば、上記は連結ではなく、ドリコム単体の業績の概況であるが、前年同期比△19.7%となっている。これはドリコムマーケティング、ジェイケンなどの期中で会社を買収したことが、連結売上増加の主要因であり、ドリコム単体での事業の成長力には陰りが見えている可能性を示唆する。
もう一つ興味深いのがドリコム単体の売上総利益の大幅な減少。
上記はドリコム単体の損益計算書からの抜粋。1番目の行の前四半期の売上総利益と2番目の行の当四半期の売上総利益を比較すると、前年から当年にかけて利益率が57.9%から12.2%に大きく減少していることが見て取れる。グループ企業の親会社であるドリコムの販売管理費が高くなってしまうというのは致し方ないところがあるが、親会社が推進する事業の利益率・売上が既に減少傾向にあるという点には投資家の方は注意が必要だろう。しかし、売上が落ちているのに、売上原価がなんでこんなに増加しているのだろうか。相当なディスカウントをしているとか、パッケージ販売だけではなくカスタマイズサービスなども提供し、そちらのプロジェクトの火が噴いているなど色々原因は考えられるが、私が投資家なら経営者に突っ込んでみたいところだ。
セグメント別についても見てみたい。ドリコムはこの四半期から事業セグメントをビジネスソリューション事業とウェブサービス事業の2つに変更したが、正しく前年同期比を比較するために、このようにセグメントの変更があった時は、旧セグメントでの成長率がどうかを確認するのは重要。
両方とも古いセグメント別の売上高であるが、上のほうが前四半期で、下のほうが当四半期。ジェイケンの売上が計上されている検索エンジン事業は大幅に伸びていることがわかるが、従来の稼ぎ頭であったブログ事業はかなり落ち込んでいることが見て取れる。
もちろん変化の激しい業界なので、次々に新しい成長エンジンを生み出していくことが最も重要で。上記をもってドリコムの主力事業は成長を終えたと言い切ることはできないし、どの事業が伸びて、どの事業が伸びなさそうなのかについても私は正直わからない。ただ、ドリコムの株を持っている投資家は売上と売上総利益率などをチェックし、事業毎の成長への貢献度を評価し、自分がドリコムのどの事業の成長に期待し投資をしており、その事業にどの程度の成長率を見込んでいるのかは明確にすべきである。