Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

議論の土台と今後の動向を捉える視点

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

待望の梅田さんの新刊が出版された。幸運なことに「梅田望夫がブロガーと語る「ウェブ進化論」」という企画に招待して頂いたため、出版前に本が送付され、この土日でじっくり読ませて頂いた。本日が発売日のため、一応解禁ということで読後の感想を書いてみたい。

色々あるが感想をしぼってあげると下記2点になる。

  • 良質な議事録を読んでいるような心地の良い感覚を覚えた
  • 本質をおさえ、日々発生する事柄を見る視点を持つことの重要性を再認識した

まず、1点目について言うと、まず私にとっての読んで心地良い良質な議事録は

  • 皆が思い思いに言いたいことを言って非常に混沌とした会議であっても、要点を適切に抽出し簡潔にまとめられていること
  • 適切にまとめられているが故に、まとめられている内容に対して異を唱える人がでたり、賛成する人もそれを見てさらに考えをおしすすめることができるような土台となること

の2つの条件を満たす。
昨年6月より「インターネットの世界で何が起きていて、今後どこにむかっていくのか?」という点に興味を覚え、色々な方の書いたブログを読んだり、自分でブログを書くことを始めたが、ちょっとひいてみる数ヶ月に及ぶ不特定多数の人間が参加する会議と言えなくもない。人数が多く、時間が長く、しかも言いっ放す人が多いリアルな会議は、ファシリテートするのに骨がおれるし、議事をきちんとまとめようとするとこれまた骨がおれる。リアルな会議では発言は空中に消え形に残らないので、誰かがものすごく良いことを言ってもきちんと議事にまとめられていないと、記憶にも残らなければ、その後言った本人すらも覚えていないなんてことはよくある。
Blogosphereにおける議論も同じようなもので、かかる時間や参加人数は桁違いだし、言語は混ざっているし、文字情報のため形には残るが桁違いの発言の多さ故に消えたに等しい状態になるものが殆どといっても過言ではない。そんな、膨大な発言の中から、本当に大事な考えや議論をすくい、オーガナイズし、フォーマルな形で適切かつ、巧みに表現されているが故に本書を読んでいる最中に、「会議中でどっかで誰かが確かこれに近いことは言っていたかもしれないが、きちんとまとめるとこういうことか、なるほど腹におちた」と良質な議事録を読んでいる時に私が感じる感覚を覚えることが非常に多かった。で、それが故に、「今までのまとめは無事された、では反対意見も賛成意見も含め議論をもっと前に進めていこう」そんな気運が本書の読者の中で高まるのではないかと予想され、自らもその議論に積極的に参加をしたいと、想いを新たにした。

ここ数年考え続けてきたことをまとめればいいとわかっていても、さまざまな思考の断片を一冊の本へと構造化させるには膨大な集中の時間を要する。・・・<中略>全部書き終えたときはふらふらだったし、今振り返るとその五週間についての記憶が曖昧である。そんなふうにしてこの本はできあがった。
ウェブ進化論』 〜あとがき P.245〜

「それはそうだろう・・・」と本当に思う。梅田さんに心の底から「お疲れ様でした」と申し上げたい。


2点目について言うと、「インターネットの本質」、「インターネットの可能性の本質」、「オープンソースの本質」、「検索エンジンの本質」、「広告の本質」、「Web 2.0の本質」、「IT産業の構造を決定する本質」と様々な事柄の本質に対して、鋭く迫っているというのが本書の大きな特徴であると私は考える。
検索エンジンは使いまくり、広告もお腹一杯になるほど触れているなどの日常の積み重ねがあるため、本書の中である事柄に対して「本質は何か?」という問いかけがなされ、その後に展開される答えを見ると非常にすっきり腹におちる。ただ、そのすっきり感の後に残るのは、「日々それらと接する時にそんな視点で自分は本当に見ていたか、いつもとは言わないまでも一度でも真剣に本質をとらえようと考えたことがあるのか?」という自らに対する疑問感である。
例えば、「検索エンジンの本質」について下記の説明がされているが、

検索エンジンひとつ取ってみても、その本質は「すべての言語におけるすべての言葉の組み合わせに対して、それらに最も適した情報を対応させる」ことであり、グーグルはこの検索エンジンを手始めに「知の世界の秩序」の再編成をもくろんでいると考えればいい。
ウェブ進化論』 〜序章 P.14〜

恥かしながら上記のような視点でとらえたことは今までなかった。「物事の本質をとらえ、そこでえた視点をもって、目の前で起きている事象は何を意味する、何を表しているのかを考える」、この当たり前のようで自分にとっては非常に難しいことの重要性を再認識した。本書からえた視点で今後インターネットの世界で目の前でおきる事象を自分なりのとらえ方をすると共に、自らも新たな視点を確立していきたい、そんな思いに今かられている。

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