サイボウズ株式会社経営企画室によるWikiの分析
を参照して
経営企画室 調査日報: wiki の特徴と利用例
経営企画室 調査日報: wiki がブログほどには盛り上がりにくい理由
経営企画室 調査日報: wiki による「共同編集」の難しさ
経営企画室 調査日報: wiki で「たたき台」をブラッシュアップする
を読んだ。
要点は下記の通り。
- "Wikipedia"という圧倒的な成功事例を除くと、世で賞賛されている程Wikiの成功事例はない
- 主観的な感想を書けばよいブログと異なり、Wikiは客観的な事実の記載を求められるため、ブログほど手軽さがなく、利用者が増えないことも普及が今ひとつの要因ではないか
- 汎用的(=相当数の人が関心を持っている)でありながら、ニッチ(=未だWEB上で有効な情報源がない)なテーマの設定が必要となるが、なかなか難しい
- 互いの顔や素性をしらない複数の編集者間で見解の相違が生まれると、それを調整することは難しい
- インターネット上の見知らぬ他人(ボランティア)同士で協働するのは困難なため、企業内のようにお互い顔の見える同士の間で活用するとより効果を発揮しうる
確かにWikipediaという大成功案件を除いてしまうと、不特定多数の人間の集合知がうまい具合に活用された便利なWikiサイトは私はあまり目にしたことがない。サイボウズの経営企画室の調査日報には、その背景や理由がよくまとまっていると思う。ただ1点に気になるのは、
明示的に「自分が行う作業が他人の利益になる。他人の利益のためにコミュニティに貢献する」という意識で参加者の足並みが揃っていることが望ましいといえそうです。
という記述。「自分が行う作業が他人の利益になる。他人の利益のためにコミュニティに貢献する」についての重要性の認識が少し甘いように思う。これは「望ましい」というレベルではなく、「必須」なのではなかろうか。また既存Wikiサイトがパッとしないのはこの点を軽視しているからではないかと感じる。このポイントについてはトーマス・アローンの『フューチャー・オブ・ワーク』のWikipediaに関する記述の中で下記のようにふれられている。
多くの参加者にとって主な魅力は、おそらく事典を作ることそれ自体の知的快感と、改良のために与えられた大いなる自由と、そして、大きな目的に向かって協力しあうことの満足感なのだろう。
『フューチャー・オブ・ワーク』 〜ゆるやかな階層制〜 P.73
知的快感とか目的を共有したコミュニティへの強い帰属意識のような強く駆り立てるものがなければ、ブログと比較しヘビーな投稿はできないし、そういう求心力が強くはたらかないと質を高めるに十分な数のヘビーユーザを確保することはできないだろう。
もし、上記を必須と捉えるとすれば、汎用的でニッチという巧みなテーマ設定をすることに苦心するのではなく、特定のテーマについての既存のコミュニティを基盤にWikiサイトを作ってしまうほうが手っ取り早いように思う。MixiやGREEにはその手の求心力が十分にはたらくようなコミュニティーは既に無数にあるように思う。意外とぽつぽつとでてきている成功事例はそんな流れからできたものではないだろうか。
wikiとコミュニティというエントリーで
というような記述があるが、上記の点から私もその考えに同意する。