Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

The long tail of software. Millions of Markets of Dozens.

ロングテール・ビジネスの対象となるのは、音楽や映画だけでなく、ソフトウェアについてもその対象となる。

Exciteの創業者の一人、Joe Krausのソフトウェアのロングテールに関するエントリーを興味がある領域なので、セットのプレゼンテーション資料のポイントも含めて日本語解釈してみた。このエントリーは基本的には企業向けのビジネスプロセスをサポートするソフトウェアの市場にフォーカスしているが、ロングテールの提唱者のChris Andersonの"The Long Tail of Software"のプレゼンテーション資料は、企業向けに限定せず、ソフトウェアのロングテールをビジネスの対象とする場合、どんなビジネス・オポチュニティがあるのか、どんなビジネスが成り立ちうるのかというもう少し広い視点でとらえており、それも中々面白いので今後解釈予定。

まだ、あまり深くは考えていないが読んで直感的に感じたことは、企業向けに限定すれば、下記の通り。

  • 企業のカスタムシステム開発が未だに相当残っており、なおかつ「かゆいところに手が届いている」和製ERPパッケージがある日本とERPの展開が比較的進んでいるアメリカとでは事情が異なる
  • ERPを導入し、全体最適の号令のもとに、ERPの想定・仕様に業務をあわせることに対してフラストレーションがたまっているユーザは多いと想定されるので(良い悪いは別にして)、市場規模としてはそれなりに大きいと想定される
  • 仮に企業におけるロングテール・アプリケーション市場が拡大したとしたら、システムのダウンサイジングに伴いシステムインテグレーターが現れたように、ロングテール・アプリケーション・インテグレーターと業務全体の設計をするビジネス・プロセス・インテグレーターという人たちが出現すると思われる

以下、日本語解釈。

Long Tail Business〜
ここのところ10年で育成され、そして今後10年間さらに進化をとげるビジネスは、ロングテールを対象とし、ロングテールから収益をあげるビジネスである。GoogleeBay、Amazone、Rhapsody、Netflix、iTunesなどのここのところ10年で大きく育った企業に共通しているのは、ロングテール事業の対象とし、既存のビジネスの仕組の根っこに揺さぶりをかけているという点が共通している。

〜The Long Tail of Software〜
ロングテール・ビジネスの対象となるのは、音楽や映画だけでなく、ソフトウェアについてもその対象となる。

〜These three facts〜
ビジネスにとってソフトウェアは、事業を営むことをサポートすること、即ち採用や発注などの様々なビジネス・プロセスをサポートするためにある。そして、それらビジネスプロセスについて考えるに、下記のことが言える。
 1. 全てのビジネスは、雇用、販売、発注などの複数のプロセスによって構成される
 2. 人材募集のようにビジネスプロセスの中でも、会社の事業形態が仮に異なっても会社間で非常に似通っていると一般的には言われているプロセスもあるが、実のところそういったプロセスも各社固有であるケースが多い
 3. プロセスの独自性が強いため、それをサポートするソフトウェアの市場が小さく、安価のパッケージシステムによってサポートされないビジネスプロセスが非常に沢山ある(例えば、建設会社が顧客や都市計画機構と連絡をとるプロセスなど)
上記が色々組み合わさることを考えると、ビジネスプロセス上の解決すべき問題は莫大な数にのぼり、それらはよりコンパクトなソフトウェアによって解決可能なことが明らかになる。別の言い方をすると、コンパクトなソフトウェアによる解決が求められる各社・各業界に固有の問題というロングテールが存在すると言うことができる。

〜Inaccessible Tail〜
今まで、ソフトウェアのロングテールがビジネスとして成り立たなかったのは下記の理由が考えられる(下記の理由により、例えば建設会社のためのカスタムメイドシステムを構築することは、あまり経済的な合理性がなかった)。
 1. ソフトウェアは、作成するのが大変だったため
 2. ソフトウェアは、作成し、配布するのに高額の費用を要したため
 3. ソフトウェアは、一旦導入してしまうと変更が容易でないため
上記のことから、従来はソフトウェア・ビジネスは、ロングテールにはあまり注目をしてこなかった。伝統的なソフトウェア・ビジネスのモデルは、そこそこの特徴を持ち、同じソフトウェアのコピーを何百万も販売できるような共通性の高い市場に焦点をあてた製品を作成するというものであった。従来は、そのような規模の大きい市場からしか収益をえることができなかったとも言える。

〜How the software tail gets address today〜
「解決が求められる各社・各業界に固有の問題」を解決するためのソフトウェアは存在しなかったため、従来はExcelやE-Mailが使用されてきた。採用者のリスト、TODOの含まれた取引リストのようなExcelのリストを作成し、そのリストについての説明や更新版をE-Mailで配布するという方法が一般的にはとられている。そのようなリストを作成している人はそうは思っていないかもしれないが、実のところそれらのリストを作ることはロングテール・アプリケーションを作っているにほかならない。エンドユーザにより構築され、E-Mailで配信されるカスタム・システムと言うことができる。

〜Doing better (warning, personal plug for JotSpot coming…) 〜
ExcelやE-Mailは、ロングテール・アプリケーションを作成するためのツールとしては、優れているとはいえない。とりあえず作ってみることはそれほど難しくないが、下記のような問題がある。
 1. バージョン管理についての問題
   作成したリストを複数の人に配信するまではよいが、全員でそのリストを更新し、
   E-Mailで更新をすると、どれが最終のバージョンか結局わからなくなってしまう。
 2. 更新についての問題
   E-Mailで連絡をもらわないと、リストが更新されたことがわからない
 3. データが統合されていない

これらの問題を解決し、ロングテール・アプリケーションを作成するために『JotSpot』があり、その特徴は下記の通りである。
 1. Webベースのアプリケーション
 2. バージョン管理が容易
 3. Web/E-Mail/その他のアプリケーションとのデータの統合が容易

〜Please, really Joe, wrap it up…〜
私の起業家に向けてのメッセージは、全てロングテールに関することです。あなたが今後どんなビジネスを始めようと、まずは「dozens of markets of millions」ではなく、「millions of markets of dozens」に何を提供するのかを考えたほうがよいでしょう。「dozens of markets of millions」をビジネスの対象とすることは戦略としては悪くはないが、ロング・テイルに対し、どのようなサービスを提供するかを考えたほうが、爆発的な成功をおさめることができるだろう。

 * 尚、伝統的な企業向けソフトウェアとロングテール・アプリケーションの違いは下記の通り。
  <伝統的な企業向けソフトウェア>        <ロングテール・アプリケーション>
  仕様・機能はそれほど頻繁に変化しない     要件に応じて、機能は素早く、柔軟的に進化する
  カバーする機能の対象範囲が大きい       カバーする機能の対象範囲は小さい
  機能間の連携が強く、一体感が強い       機能間の連携はそれほどなく、つけはずしが容易
  想定ユーザは10万人から100万人        想定ユーザは1人から1000人
  誰でも変更できるわけではない          オープンで誰でも変更できる
  エンドユーザでは開発は難しい          エンドユーザでも開発が容易


 * ロングテールアプリケーションを構築するプラットフォームとして、従来はHyperCard/Excel/Access/Lotus Notes/WIKIなどがあり、それぞれ良いところと悪いところがあった。それらを勘案するとプラットフォームには下記のような特徴が求められると考えられる。
 1. Torelant Development
  バージョンコントロールができており、データモデルの柔軟性も高い
 2. Short Distance b/w Using/Editing
  クリックするだけでよい
 3. Easy to get data in and out
  データの入出力に対する対応方式が豊富
 4. Minimal Object Model
  全てがWikiPage

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