Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

30歳、40歳からのビジネス英語 英会話学校に通うなんてやめなさい

2008年に「30歳からのビジネス英語 英会話学校に通うなんてやめなさい」という記事を書いたが、当ブログの中で唯一継続的に大きなアクセスがある。私は今でこそ米国に住み、日本人が私一人という職場環境でほぼ英語のみで仕事をしているが、30歳になるまでは英語は「全く」話せなかった。日本語だと饒舌なくせに英語だと微動だにしないとよくからかわれて口惜しい思いをしたものである。

上述の記事へのアクセスが高いのは、日本人の30-40代のビジネスパーソンの英語の習得意欲の高さからくるものであろう。多くのビジネスパーソンが、何度も一念発起して英語の勉強に取り組みながらも、多忙な日々に流されて英語を習得するに至らない状況もよくわかる。私もぶっちゃけ5度目くらいの一念発起でようやくマシなレベルまで持っていくことができたからだ。

そんな私も先日とうとう40歳になってしまったが、今なお座学を続けつつ、日々とはいかないまでも月単位では少しずつ進歩を実感している。私の妻は私と同い年だが、コミュニティカレッジに通って英語を勉強し、仕事と家事と育児をこなしながら、早朝に宿題と格闘しつつ、こちらは日々英語力をアップさせている。要するに40歳でも遅すぎることはないのだ。

改めて読み返してみても「30歳からのビジネス英語 英会話学校に通うなんてやめなさい」という記事のエッセンスは今なお多くの方にあてはまると思う。が、書いてから6年も経ち、本格的に英語に取り組み初めて9年近くになるので「30歳、40歳からのビジネス英語」というタイトルで、前回の記事に加筆・修正を加えたものを改めて紹介したい。

 

英会話学校に通うなんてやめなさい

自分でお金を払ってジムの会員となっている人は多くいるが、それがゆえに健康なスリムボディーを皆が皆、保っているわけではない。むしろ、きちんと体を鍛えることができている人のほうが少数派なのではないだろうか。それと一緒で、同年代で英語ができない人が英会話学校に通ったという話はよくきくが、それによって話せるようになったというサクセスストーリーはあまり聞かない(いないわけではない)。
手段の一つとして有効であるのは認めるが、「英会話学校に通えば、よほどサボらない限り英語が話せるようになる」なんてことはまずないし、英会話学校に通っているということだけで、勉強した気になってしまっている人がいれば、むしろ逆効果だ
「ある程度英語が話せるが最近仕事で英語を使わないので今ある英語力を維持するために英会話学校に通う」のように、何を求めるかがはっきりしていれば良いが、漠然と英会話学校に通えば何とかなるだろう、という気持ちで通おうとしている人は、多額のお金を払う前に、本当にそれが自分にとって最良のオプションかどうか考えたほうが良い
私は英会話学校に一切通わず、英語が仕事のボトルネックにならなくなったので、「英会話学校への通学」という勉強方法については正直懐疑的だ。時間とお金をかけて英会話学校にこれから通おうかと悶々としている人に、あてはまるかどうかはさておき、私のやってきたことを共有し、是非判断の材料として頂きたい。


お金をもらいながら「英語を使う環境」を何とか探し出す

英会話学校に通うということは、つまるところ「英語を使う環境」を買っているにすぎない。そりゃ英語で会話をするために必要な知識を教えてくれるところかもしれないが、本屋に行けば腐るほど英語を勉強をする教材があり、インターネット上にも英語勉強素材がごろごろころがっていることを考えると、彼らの提供してくれる「知識」に高いお金を払うだけの付加価値は、私には見いだせない。なので、提供される価値というのは、週に一定の時間、日本語の世界から切り離され、外人相手に英語で会話をするという「英語を使う環境」がメインとなるといってよいだろう。
一方で、私がビジネス英語をモノにする過程では、1週間のうち10〜18時間程度は業務の都合として英語をつかっていた。業務外で座学の時間は別途作っていたので、業務内外で比率のばらつきはあれど、週に20時間は平均して毎週英語の勉強にあててきた。少なくとも私のような凡人には、業務の時間外に、お金を払って英語の勉強の時間を週に20時間確保することは不可能に近い。お金をもらいながら「英語を使わざるをえない環境」を獲得したことが、今の私のビジネス英語力に不可欠のファクターであったことは確信できる。
なので、何となく英会話を勉強したいという人はさておき、キャリアデベロップメント上、英語を必須アイテムとしている人は、英会話学校にかけるお金と時間があれば、そういう環境を構築することに労力を振り向けることを私は勧める。そういう基盤を作った上で、補完的に英会話学校にも通うのはよいかもしれないが、英会話学校は決定的な要因ではなく、あくまで補完的、もしくは苦肉の策であることは認識した方がよい。

 

実践だけでなく、座学も取り入れる

海外勤務経験が長かったり、20年以上ビジネスで英語を使っているという人と一緒に仕事をする機会が多い。英語20年選手という人に、はっきり言ってヒアリング能力で勝てることはまずない。電話会議などで音割れした英語に四苦八苦して理解できないでいるところ、「こんなこと言ってるよ、どうする?」と意見を求められ、「すんません、わかりませんでした・・・、よく、こんなの聞き取れますね・・・」と脱帽することはしばしば。
ただ一方で、20年以上ビジネスで英語を使いながら、いわゆるブロークンイングリッシュしか話せないという人が多いことには驚かされる。英語の勉強を始めた頃、5年間の海外勤務経験があるという人と仕事をする機会があったが、英語での意思疎通力は私より確かに上なのだが、話す英語は発音、正確性ともに本当のブロークンイングリッシュで、「どうすれば、きちんとした英語を身につけられるのだろう」とショックを受けた記憶がある。そんな時に、出会った言葉と本が下記。


英語上達完全マップ―初級からTOEIC900点レベルまでの効果的勉強法

英語上達完全マップ―初級からTOEIC900点レベルまでの効果的勉強法


海外生活を英語の上達に役立てられないこうした語学留学生を毎日相手にして、「英語が話される国に行って暮らせば自然と流暢になる」というのは幻想に過ぎないことがよくわかりました。成人が海外で英語力をつけるのは、子供が言語を吸収するのとは随分違います。私自身の会話能力の向上を客観的に振り返ってみても、大人の場合はもともと備えていた基礎力が実際に英語を使い状況の中で活性化するというのが適切でしょう。
『英語上達完全マップ』 〜P.18〜

一定の年齢になってから、学習と訓練により英語を身につける場合、英語を自由に使用するための基盤となる力があり、私はこれを「基底能力」と呼んでいます。この基底能力は文法・構文や語彙の「知識」とその知識を円滑に活動させるための「回路」の2つの側面があります。
『英語上達完全マップ』 〜P.41〜

上記の言葉に従い、「英語の基底能力」をきちんと身につけるところから、英語の勉強を始めたところ、実践とあいまって、かなりきちんとした発音で、正確な英語を話せるようになった。座学により「英語の基底能力」をあげ、実践でそれを活性化させ、さらに座学をすすめて「英語の基底能力」を一層高め、実践でさらなる活性化を促す・・・、というサイクルを回すことにより、きちんとした英語を身につけながら、英語の意思疎通能力を高めることができた。また、発音がきちんとし、話す英語が正確だと、実際の英語力以上に「英語ができる」と思われるというアドバンテージもあり、転職時の英語の面接などではかなり得をした分も正直ある。

問題はどうやって大人になってから「英語の基底能力」を養うかだが、数多く読んだ英語勉強本の中で、私が最もお勧めし、成果を約束できるのが、上で紹介した『英語上達完全マップ』*1。方法論の紹介について説明することはここではさけるが、「英語の基底能力」を養うことの重要性が理論的に語られ、それを如何にして構築するかという方法論が超具体的に記載されており、これに勝る英語の勉強本は私は見たことがないさくっと英語力を養うハウツー本が世にあふれているが、そんなのよほどいい加減か、よほど筆者の能力がずばぬけているかのどちらかで、凡人にはまず参考にならない。英会話学校に多額のお金を投じる前に、是非一読を勧める。サイトで全文を読むことはできるが、1400円という本書の値段は費用対効果を考えると破格である。


ビジネス英語にフォーカスする

英語で仕事ができるようになりたいという人が心がけるべき大事なことは、ビジネス英語にフォーカスするということだろう。さすがに最近の英会話学校は目的に応じたクラス分け、コース分けがされていると思うが、私が新卒の際に会社から通わされた英語学校はひどいもので、単に講師の外人と1時間半おしゃべりをするというだけのもので、殆ど効果はなかった。
英語のドラマや映画をキャプション付きでみることも勉強方法として紹介されることが多いが、ビジネスの英語とドラマと映画の英語は、初学者にとっては全く別物といっても過言ではない。TOEICで測定不能なレベルの「英語の基底能力」が養われた後で、ドラマや映画に派生するというのは可能かもしれないが、海外のドラマや映画を入り口にするというのは、ボーゲンでちょろちょろとしか滑れない人を国体のコースに放り込んで練習させるようなもので、効果の程は疑わしい。
また、英語の勉強をしていると、とてつもない退屈感、倦怠感におそわれるステージが必ずくるこの倦怠期を如何に飼い慣らし、乗り切るのかというのが、英語の勉強を継続させるものすごく重要なファクターだ。そして、それを乗り切る一つの原動力は、どうなりたいのかという「超具体的な成果のイメージ」である。ビジネスの世界で通用する英語を身につけようとしているのに、殆ど意味のとれない英語の映画をみたり、何となく外国人相手に日常会話をしているだけでは、必ずやってくる倦怠期を乗り切ることはできない。目的にかなった勉強の素材を選び、自分の目指すゴールに向けて、日々成果を感じるということが、長く続けるためのコツである。くどく繰り返すが、自分がどうなりたいかという成果のイメージを超具体的に考え、そこに向けての勉強をする、これもビジネス英語を身につけるための絶対条件といって過言ではない。


「継続力」よりも「機をとらえた爆発力」が大事

「継続は力なり」というのは素晴らしい言葉だと思うし、こつこつ英語の勉強を続けることはとても大事なことだ。が、「あまり英語が話せない」状態から、殻をやぶってビジネスで通用する英語力を養う際に最も求められるのは、こつこつと地道な努力を重ねることではなく、半年から1年くらいの間、ガツンと英語の勉強を暮らしの中心に据えることだと思う。

私は「全く」話すことができない状態で30歳から英語を勉強し始めて、そこそこ英語ができるようになったということで、勉強法を聞かれることが多い。上記のような話をすると共に、親しい人には『英語上達完全マップ』をプレゼントしたりしているが、残念ながら続かない人のほうが多いようだ。

語学の習得というのは時間がかかり、日々成果を感じるには、かなりの努力と集中が求められる。さらっと「うまくいった」という人の方法論に触れ、「これならできるかも」と思い手をつけるが、成果を感じる前に倦怠期を乗りきれずに玉砕する人が殆どなのではないだろうか。私の周囲の英語ができようになった人と挫折人を思い浮かべ、違いに注目すると、やはり一番大きな違いは、英語の習得に向けて掻き立てられる何かをもって、瞬間最大風速的に爆発的に英語に没頭する時期があったか、なかったかなのではないかと思う。即ち、殻を破るには「継続力」よりも「機をとらえた爆発力」が大事なんではないかと思う。効果的な方法論はもちろん大事だが、それにプラスアルファして愚直な努力に立ち向かう気合が結局のところ不可欠なんだと思う。

 

日本人の英語の勉強法なんてブログで書き古されたトピックではあり、あまり目新しいところはないかもしれないが、当記事を読んでみて参考になって助かったという方が少しでもいれば、これに勝る喜びはない。Good Luck。

*1:『英語上達完全マップ』というサイトもあり、内容はサイト内で全て読むことができる

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