Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

アメリカ移住するにはどのくらいの英語力が必要か

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この度、”自由に生きる海外移住”という新ブログを立ち上げました。より多くの日本人が海外で活躍できるように、アメリカでの仕事や生活についての情報発信をしています。興味のある方は是非御覧ください。新ブログでの”アメリカ移住するにはどのくらいの英語力が必要か”という記事をこちらにも掲載させて頂きます。

 

アメリカ移住に必要な英語力はTOEIC600点

私は、外資系企業の日本法人に勤めて、2013年に米国本社に転籍をしてきた。なので、同じ会社の日本法人に勤める人から、アメリカ移住について相談を受けることは少なくない。海外移住を人生の一つのオプションと考えている人から受ける質問の中で最も多いものがある。


アメリカ移住するためにはどのくらいの英語力が必要か?

アメリカで仕事や生活をしていくために、コミュニケーションというのは全ての基盤となるために、必要な英語力のおおよその目安を何とか知っておきたい、英語勉強の目標の参考値を知りたい、という気持ちはよく分かる。これはよく聞かれる、いつも答えに窮するのだが、敢えてこの難問に思い切って答えるとすると「アメリカ移住に必要な英語力はTOEIC 600点」というのが私の答えになる。この点数を聞いて、「そんなに低いのか?」と疑問に持つ人もいれば、「それは高すぎる〜」と思う人もいるだろう。もちろん、TOEICで600点というのは、こちらで仕事をする上でも、生活をする上でもかなり苦労を強いられる英語力だ。とりあえずの英語力は満たしているが、アメリカで仕事の成果をだし、より楽しくストレスのない生活を送るにためには十分とは言えない。が、とりあえずアメリカ生活を始めるには必要十分と私は考えており、本稿ではその理由を説明していきたい。


TOEIC600点とはどれくらいの点数なのか

以下はTOEICを運営しているIIBCのサイトで紹介されている海外出張や赴任に求められるTOEICの点数の基準だ。

570点から810点というのが日本企業が海外部門の社員への期待値となる。600点というのは「レベルC:日常生活のニーズを充足し、限定された範囲では業務上のコミュニケーションができる」の中央値であり、上述の海外部門社員の期待値の範囲ではボトムの数値となる。「買い物に行ったり、レストランで食事をしたりする日常生活を送る上では大きな問題にはならないが、仕事を適切にするためにはもうちょっと向上が求められる」という感じと思うが、これは私の感覚値ともかなり近い。

次にアメリカ移住を始めるためには、TOEIC 600点という英語力が必要十分と私が考える理由をあげていきたい。先にポイントだけあげると下記のようになる。

  • アメリカは英語が母語でない人への支援制度が非常にしっかりしている
  • アメリカで生活を始めれば、英語力はそれなりにあがる
  • 勉強する習慣こそが、英語力向上の鍵となる

アメリカは英語が母語でない人への支援制度が非常にしっかりしている

アメリカという国は、社会全体の活力を上げるために移民を多く受け入れている国だ。なので、受け入れた移民がアメリカ社会に馴染み、生活力をつけ、そして付加価値を生み出すために多くの投資をしている。コミュニケーションは何事においても要となるために、英語が母語でない人のために様々な語学支援制度がある。

ESL(English as Second Language)は、その中心となる制度で、文字通り英語が母語でない人向けの英語クラスである。小中高のどの学校でも、アメリカにきたばかりの生徒を支援するためにESLのクラスは設置されているし、学校だけでなく市や教会も大人向けの様々なESLクラスを運営している。クラスに参加する前にテストをしたり、講師と実際に話すことによって、レベルに応じたクラスにアサインしてくれるため、授業の内容が難しすぎて全くついていけないということもない。

また、子供が学校に通っていると各種の連絡がSMSで送付されてくるのだが、私が住んでいる市では自動翻訳ではありながらも、そういう内容も日本語で送付してくれるサービスがある。"Good Morning! Parents!"が「おはよう!親!」とか訳されているので苦笑してしまうが、意味が通ればよいので、英語が苦手な人にはかなり助けにはなると思う。また、病院にもよるが、大手の病院では日本語への翻訳サービスなどもあり、英語が母語でない人も基本的な生活が遅れるようなインフラやサービスがかなり整っている

以上述べたようにアメリカには英語が母語でない人への支援制度が整備されているので、こと生活についてはあまり心配しすぎる必要はない。実際のところTOEICで300−400点くらいの英語力の移民がアメリカでは沢山生活をしているというのが私の肌感覚だ。


アメリカで生活を始めれば、英語力はそれなりにあがる

TOEIC600点というのは、とっかかりとしては良いが、楽しく生活や仕事をするためには十分な英語力ではない。が、皆さんが想像、期待している通り、アメリカに住んでいると、英語力は必要に応じてそれなりにあがっていくことは間違いない。幅にもちろん差はあれど、少なくともアメリカに住んで英語力が下がったという話は聞いたことがない。

私は、英語が母語でない人の英語力というのは「学習量」と「環境」の掛け算で決まると考える。一定以上の「学習量」はもちろん必要であるが、「環境」の要素もかなり大きな割合を占めるのも事実で、仕事や生活で周りの殆どが英語話者という環境に放り込まれれば、ある程度までは「環境」に引っ張られて自ずと英語力はあがっていく。私も、移住したばかりの頃は、仕事で一日中英語の会議や議論に参加して、夕方ころには毎日頭が痛くなっていたが、慣れるに従いそういう悩みもなくなっていった。

少し視点を変えると、英語を話したり、聞いたりする機会の限られた日本では、同じ「学習量」をこなしていたとしても、英語力向上の効果は「環境」が原因で限定されてしまう、という見方もできる。勿論、一生懸命勉強すれば日本に住んでいたとしてもTOEICを900点以上とることは無理なことではない。ただ、600点を700点に、700点を800点に、800点を900点にあげるためには、アメリカに住んで日常生活や仕事の中で自然と英語を使う環境のほうが、より少ない「学習」でより大きな学習効果を実現することが可能になるのは間違いない。


勉強する習慣こそが、英語力向上の鍵となる

ここまでのところで、アメリカ移住する上で、TOEICで900点レベルくらいの英語力がないと仕事も生活も立ち行かないなんてことはない、という話をしてきたが、次に400点や500点では何故十分でないのかという話をしたい。上述した通り、英語が母語でない人の英語力というのは「学習量」と「環境」の掛け算で決まる。即ち、「環境」による「英語力向上」というのも同様に限定的であり、「勉強する習慣」というのも英語力の伸びを左右する大きな要素だ。つまり、「勉強する習慣」が身についていない人は良い環境においても、学習効果は残念ながら限定的なのだ。

日本企業に勤める夫の海外赴任に帯同して、家族でアメリカに数年住むという人は結構多い。いわゆる駐在妻の方々の多くは、一点目で紹介したESLクラスなどに通うのだが、私の経験上、途中でドロップ・アウトしてしまう方というのは結構多い。勿論、公的なESLクラスを修了し、お金を払ってコミュニティ・カレッジに通って、さらに英語を学ぶという人もいる。が、「子供には内緒だが、ESLクラスは途中でやめちゃった」という人も少なくないのが現状だ。当たり前だが、アメリカ人はきれいな発音、きれいな言い回しで英語を話す。そういう人に囲まれている環境というのは英語を勉強するには最適なのだが、途中で挫折してしまう人が多いのは何故か。それは、勉強をする習慣が身についていない人は、どんな良い環境におかれても向学心を持って「継続的」に学習に取り組むことができないのだ。まして、異国地で暮らすというのは、初めの頃はささいなことでも相当なエネルギーを要するので、日々の生活を乗り切りながら、英語の勉強に取り組むというのは、勉強慣れしていない人には決して簡単なことではない。

「勉強する習慣」が大事ということを述べてきたが、私にとってはTOEIC600点あたりは「勉強する習慣」が身についているかどうかをはかる一つの基準となる。TOEIC900点というのは座学だけで達成するにはかなりハードルが高いが、TOEIC600点は日本で普通に仕事をし、普通に生活をしながらでも、それなりに勉強しさえすれば誰でもとれる点数だ。一日英語の勉強に1〜2時間くらいあてる地道な努力を1年間続ければ、勉強方法さえ間違えなければ600点はそれほど難しい点ではない。逆に、アメリカに移住したいという思いがありながらも、そこまでの勉強はとてもできないという人は、諸事苦労が伴うこちらの生活にプラスして、さらに勉強をするという苦労を乗り越えることは難しいように思う。


まとめ

以上、アメリカ移住に必要な英語力はTOEIC600点と私が考える理由を説明させて頂いた。もちろん、もっと低い英語力でも私はアメリカ移住をした人もいれば、もっと高い英語力でも苦労してうまくいかなかったという人もいると思うし、そもそもどこを到達点とするのかによっても求められる英語力は変わってくるのは重々承知している。が「その人の状況や何を目指すかによるので一概には言えない」で片付けてしまうと、あまり参考にならないと思うので、敢えて一つの見方を提示させて頂いた。参考になれば幸いである。

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