景気後退に伴い、真っ先に削減の候補にのぼるのがIT予算。積極投資によって、自社のITシステムのさらなる充実をはかるのが難しい中、オープンソースの採用、利用拡大を検討している企業は多いと思う。"How to Talk to Your CIO/CTO About Using Linux"というエントリーでは、専門家の意見を集め、オープンソースをもっと活用しようと上層部に提案する際のヒントやコツが紹介されており、なかなか面白い。本エントリーではそのいくつかを紹介してみたい。
「いかに安いか」ではなく、自社のシステムを「いかに良くするか」に焦点をあてる
オープンソースの採用が検討される時、コストは確かに重要な要素だ。指標としては、一番わかりやすく、説得力もある。だが、コストのみに焦点をあて、長い目でみてオープンソースの採用が自社システムにプラスの効果をもたらすかどうかという視点が抜け落ちていると、話が進まないことが多い。プロプライエタリのソフトウェアにかかるライセンス費用や保守費用は確かに馬鹿にならず、ライセンス費用がかからないオープンソースはたしかに魅力的だ。だが、いざオープンソースに切り換えるとなると移行費用、トレーニング費用などのスイッチングコストが発生するため、それを考慮にいれると、短期的にはコストメリットがそれ程えられないことも多いし、その期待外れ感で頓挫したというのはありがちな話。
なので、3〜4年先を見据え、機能面や性能面での自社システムのレベルアップを今以上の費用対効果で実現できるかどうかがキーとなり、「安かろう」を全面にだすと話が進まないことが多い。*1
コミュニティだけでなく、商用のサポートも活用可能であることを強調する
オープンソースはインターネット上に転がっている無料のソフトウェアで、一から十まで自社で面倒をみないといけないという印象を上層部が持っていると説得が難しい。実体のある会社から質の高い保守・サポートサービスを受けることが可能なことをきちんと理解してもらうことが必要。もちろん、お金を払わず、コミュニティの支援だけで乗り切るという手もなくはないが、いくらかでも商用のサービスをうけるほうが一般的ではないだろうか。保守・サポートに対してお金を払ったとしても、ソフトウェアのライセンス料はかからないため、コストメリットは実現可能だ。オープンソースと言えども、セキュリティ・パッチを定期的に入手したり、知的財産権侵害への補償なども受けることがものによっては可能なことを理解してもらう必要がある。
LINUXを採用するということはWindows環境を捨てるということではない
「Linuxの採用=Windowsの廃棄」なんて単純な構図は、私はあまり聞いたことはないが、オープンソースへの移行はAll or Nothingではない。むしろ、LinuxとWindowsが混在しているケースの方が圧倒的に多いと思われるし、段階的、試験的に導入することももちろん可能だ。あまり、オープンソースに慣れ親しんでいない上層部の方と話す場合は、まずは小さいところから始めるというのが、アプローチとしては正しいように思う。
継続的なサポート受けることの不確実さはプロプライエタリも同じ
保守・サポートサービスを有償で受けることは可能にしても、長期間に渡ってそれが提供されるかどうか不安というのもよくでてくる話ではある。でも、プロプライエタリのソフトウェアだからといってアプリケーションやハードウェアに対して、長期間のサポートを提供してくれるのかというとかなり疑わしい。ライセンス契約書を読んでみて、特定バージョン、そのバージョンとアプリケーション、ハードウェアの組み合わせについて長期間のサポートを明確にコミットしているソフトウェアなどあるだろうか。
上記はかなり原文に肉付けしており、殆ど原型をとどめていないが、興味を持った方は原文をあたって頂くことを勧める。
*1:もちろん、そのシナリオを実現できる魅力的なソフトウェアがあることが大前提だが。