OpenSource World 2009に行ってきた。Next Generation Data Center 2009というイベントと同時開催だったのだが、OpenSource Worldのブースで一番大きな出展をしているのがマイクロソフトだったことに、まずびっくりした。時代も変わったものだ。折角だったので、アンケートを書いて、配付資料をもらったのだが、オープンソースに関係する資料は3分の1くらいだった・・・。なお、「選択の世界への参画 〜オープンソースとマイクロソフトについての展望〜」という10ページほどの冊子が配布されていたが、冒頭に
このドキュメントのいかなる部分も、米国Microsoft Corporationの書面による許諾を受けることなく、その目的を問わず、どのような形態であっても、複製又は譲渡することは禁じられています。
と念押しされており、この辺はさすがマイクロソフト・・・。一応、文書のライセンスは、Creative Commons Attribution-Noncommercial-No Derivative Works 3.0だそうだが・・・。
講演にはいくつかでたが、NTT OSSセンターの方の講演が一番面白かった。
NTT OSSセンタは、OSSを利用したICTシステムの構築・運用に対する技術支援を効率よく行うことを目的にNTTグループから技術者が集まった組織です。
と紹介されているとおり、NTT OSSセンターというのはNTTグループ内部でOSSを有効に活用するためにコミュニティ活動、サポート、構築支援、人材育成、ソリューション構築などを一手に引き受けるために設立された組織。以下、講演の中で興味をひいた内容を箇条書きする。
- ダウンサイジングの結果、ハードウェアのコストよりも、ミドルウェアにかかるコストのほうが倍以上に高くなってしまった
- ミドルウェアの中で、もっともコストが高いのがDBサーバ、その次がAPサーバである
- 情報収集手段の確保や保守サポート体制の構築という点がOSSセンター設立時の課題であったが、これはプロプライエタリーのソフトを使う時であっても同様に発生する問題であり、OSS固有の問題ではない
- 過去3000件以上の問題に対応してきたが、実際の不具合解析が必要だったものが全体の30%、その中もコミュニティでは既知の不具合が殆どで実際に修正が必要となるものは3%程度だった
- OSSセンター設立前は、NTTグループのSI会社がそれぞれにOSS室のようなものを持っていたが、1社だけではリソース不足で、カバーできない領域が多く存在した
- 既にミッションクリティカルなシステムにもOSSを活用し始めているが、24時間365日のサポートを求められる領域は、サポートを確保することが難しいため、適用がまだまだ難しい
- OSSを活用する上で一番注意点としてあげたいのは、あるソフトウェアが実装する機能の中で、全ての品質が担保されているわけではないということ(よって保守を提供する会社からのサポートが欠かせない)
- 新規に構築するシステムについては明らかにコスト削減効果がでるが、レガシーシステムに採用する場合はマイグレーション・コストが発生し、なかなかコスト削減が実現できない
- OSSを採用する際には、コミュニティの活性度合いが非常に大事
上記以外にも、実際にどの程度NTTグループ内で採用が進んでいるかとか、生々しい数字が公開されており、非常に面白かった(まぁ、ここでは公表はしないが)。
講演の冒頭で、ユーザという立場の人とOSSのソフトウェアやサービスを提供する立場の人にそれぞれ異なる下記のメッセージを発信されていた。
- ユーザという立場の方、一緒にOSSを使ってよりよいものと作って行きましょう
- ソフトウェアやサービスを提供する立場の方、自分たちだけでは越えられない線があるので一層のサービスの拡充を目指して下さい
NTTグループという伝統的な日本の巨大企業が自らそのようなメッセージを発信するということが非常に印象的だった。OSSは着実に日本のメインストリームに浸透してきていると言っていいのだろう。