- 作者: 高杉良
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2009/12/04
- メディア: 文庫
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- 作者: 高杉良
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高杉良と言えば、ビジネス小説の大御所だが、実は彼の著作を読むのは今回がはじめて。上下あわせて文庫版で1000ページの大作だが、目まぐるしく変わる展開に引き込まれてあっと言う間に読了できた。
主人公は、アメリカ資本のグローバルカンパニーである"ワーナーパーク”に日本法人の経理本部長として就任した池田岑行。10年間役員として勤め上げるのも困難とされる(?)外資系企業において、30年もの間日本法人のCFOとして卓越した財務戦略で生き抜いた男の物語、という設定。
"ファイザー"に買収されてしまった"ワーナーランバート"が"ワーナーパーク"のモデルであり、細部の生々しさから想像するに実際のモデルとなる人に入念にインタビューをして、書き上げられた小説と推察する。ずっと外資系企業に勤めている私の視点から見て、「わかるわかる!」と共感を持てる部分が多く、なかなか楽しめた。具体的には、
- 仕事はそれほどできず日本法人への貢献は低いが、英語の言語能力が高いことを本社から重宝されているだけの「英語屋」という人種が外資系企業には必ずいる
- 日本法人でのトップ経験というのは、本社の外人にとって出世の登竜門であり、日本法人で結果をだせば、本社でそれなりのポジションが用意されている
- 財務経理部門は本社直轄という位置づけの一方、日本法人の社長というのは「日本営業所」の所長的側面が強く、日本法人の経理部長(CFO)は日本法人の社長(CEO)の部下というわけではない
- ディストリビュータ経由のビジネスはマージンを沢山とられるので、自社の営業を増員し直販したほうがビジネスは伸びると、アメリカ人は考えがち(かつ、それは日本においては間違っており、強行すると大体失敗する)
などなどの点。特に最後の点は、「わかる!わかるぞぉ!!」という感じで読んでいて痛快だった。
一方で、首をひねったり、期待はずれだった点は下記のとおり。
- 日本法人の外人トップが秘書と関係を持つことが、当たり前かのような書かれているが、昔はどうかしらないが、昨今はそういうことは非常に稀と思われる
- 「卓越した財務戦略で三十年にわたって生き抜いた」というような触れ込みの割りに、メインバンクの変更以外に財務上の具体的な施策が登場することはなく、人事抗争が中心になってしまっている
- 米系の外資系企業はスリムでなければ自己管理ができていない人間としてみなされ、出世もできないし、解雇になることもある、というのは私の中では都市伝説
- "ライザー"から敵対的買収をしかけられるという小説最大の盛り上がりのシーンで快刀乱麻の活躍をみせるかと思いきや、定年延長で既に一丁あがっており、早々に仕事を切り上げスカッシュに日々興じる池田氏に少しがっかり
まぁ、部分的に「これはどうよ・・・」という点もあるものの、読み物としては私はかなり楽しめた。軽すぎず、重すぎずという感じなので、結構長時間のフライトのお供にはよいかもしれない。『社長の器』も文庫版で購入したので、翌月の海外出張の際の時の飛行機の中の楽しみとしたいと思う。
- 作者: 高杉良
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2009/02
- メディア: 文庫
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