Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

欧州と米国の商用オープンソースに対するスタンスの違い

スラッシュドット経由で"Commercial Open Source in Europe Versus the US"というエントリーを読んだのだが、これがなかなか面白い。商用オープンソースに対するヨーロッパとアメリカのスタンスの違いを6つの軸で分析しており、それぞれ紹介したい。

オープンソースを採用する一番の理由(Primary reason for adopting Open Source)

米国では、ソフトウェア、保守サービスのコストの低さが採用の一番の理由であるのに対し、欧州ではベンダーによるロックインを回避するというのが一番の理由であるとのこと。もちろん、欧州企業もコストを重要視しないわけではないが、1つの企業に囲い込まれないこと、なおかつ開発プロジェクトの方向性に対して何某かの影響力を保持することに同様、もしくはそれ以上に重きをおいているというのがなかなか面白い。

オープンソースビジネスを作りあげるDirver(Key driver of commercial Open Source business creation)

米国では、次世代のソフトウェア企業を立ち上げ、金銭的なリターンを得ようということがDriverになるのに対し、欧州では、ローカルなソフトウェア産業を立ち上げようという思いがDriverになっているとのこと。米国では既にマイクロソフトのような巨大なプロプライエタリなソフトウェア企業が市場を支配しており、この支配をひっくり返すにはオープンソースという新しいソフトウェアのモデルをレバレッジしないと難しいとの認識の下、ベンチャーキャピタルが投資活動としてオープンソース企業にリスクマネーを投下しているとのこと。一方で、欧州は米国支配のソフトウェア産業において、より欧州発のもしくは自国発のソフトウェア企業を育てたいという思いが強いとのこと。

デュアルライセンスの可否(Dual licensing business models)

米国では、オープンソースライセンスと商用ライセンスを利用用途に応じて選択可能なデュアルライセンスが受け入れられやすいのに対して、欧州ではデュアルライセンスに対する拒否反応が強いとのこと。米国ではオープンソースは往々にして金儲けの道具になりがちだが、欧州ではよりイノベーションを加速する開発手法のあり方に主眼がおかれているということだろう。

ソフトウェアの販売形態(Software sales model)

米国では、直販が多いのに対して、欧州ではリセラーやシステムインテグレータを通した販売が多いとのこと。この違いは本当であればなかなか面白い。米国で直販が多いのは中抜きを志向するからだとエントリーでは書いてあるが、そもそもIT産業の構造としてシステムインテグレータがいないからというのが正しい。欧州では、リセラーやシステムインテグレータが米国と比べオープンソースに対してより投資をしているという興味深い指摘もある。

オープンソースのビジネスモデル(Open Source business models)

米国では、サービスよりもプロプラエタリな追加機能や「企業版」に対する追加ライセンスの徴収というビジネスが多いが、欧州ではサポートとサービスのサブスクリプション販売が主流であるとのこと。まぁ、文脈的にはこういう区分けをすることは想像できるが、これが本当かどうかは正直疑わしい。基本的には欧州でも米国でもサポートとサービスが主流だが、デュアルライセンスなどにより、より稼ぎやすいモデルを志向するプレイヤーが米国には多いというくらいが妥当ではないだろうか。

オープンのソースに対する期待値(Expectations around "Open Source" products)

オープンソースライセンスの元に配布をし、コミュニティを重視して、利用企業に対してプロジェクトに対する影響力が確保できるようにしておくことに対する志向は、欧州の方が米国よりもはるかに高いとのこと。金儲けより、よりよいソフトウェアがより多くの人に普及し、自らの主体的な選択権もきっちり確保することに欧州企業がよりこだわっているということだろう。


記事の中では、欧州企業の方が商用オープンソースへの取り組みについては洗練されており、米国は欧州にキャッチアップすることが必要と結論付けている。
本エントリー自体、何某かの調査や統計情報に基づいているわけではなく、ここで提示されているものはあくまで仮説であるが、上記の6つの軸に従い、日本企業も含めて実際に統計分析をしてみたらなかなか面白いと思う。

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