過去2回のエントリーでNich Carrの“Is Google Making Us Stupid?”を取り上げたが、私なりの考えも混ぜながら要点をまとめ直すと下記のような感じになる。
- モノを読み、考えるという行為・能力は後天的に形作られるものであり、神経学・生物学的レベルで脳の有り様に影響を及ぼす
- 発明以来、紙や活版印刷のような技術は、人間の読み、考えるという行為・能力に影響を及ぼし続けてきてきたが、インターネットという新しい技術も同等、もしくはそれ以上の変化を我々の行為・能力に与える
- 具体的には、インターネットのもたらす情報の大洪水、そしてメディアや技術による情報洪水の区画整理というものは、特定の情報を深く読み込み、それに対して深く思索をめぐらすという我々の能力を退化させる
- 情報の大洪水、メディア・技術に対して受動的であると、サマリーされた情報だけを拾い読みするだけになり、アンテナは広いが深みがないということになりかねない
雑誌記事で4ページの英文をじっくり読みながら、効率性をひたすら追求した情報の洪水に身をゆだねるべきか、他によりよいアプローチ自分なりに探すべきか考えたが、この情報大洪水時代において,
フォーカスすべきは「差別化」と「時間の使い方への徹底的なこだわり」の2点になるように思う。
まず、深く読み込むエリアとアンテナを広げより多くの情報をキャッチするエリアを区別し、その組み合わせの妙で「差別化」をはかるという点が大事だと思う。Tech Crunchを読み、C-Net/IT Mediaを読み、はてブのホットエントリーを読み、日本の著名ブロガーのブログをいくつか購読すればアンテナの広さという点では良いが、私の情報処理能力では、拾い読みが精一杯になってしまうし、はっきり言って上記のことは誰にでもできて差別化にならない。
なので、Tech Crunchの日本語版を含めて、購読する日本語ブログは5つに限定して、仕事上必要になるオープンソース系の情報は自社の広報から発信される1日5本ほどのオンラインメディアの記事の拾い読みに限定してしまった。
その変わり、よりエッジのきいた洞察をえることと英語での情報収集の訓練のために、英文ブログの購読量を増やし、本当に面白そうなものについては、時間をかけてじっくり読み込み、深く考えを巡らす時間を意識的に作ることにした。
うまくいくかはわからないが、押し寄せる情報に飲み込まれることなく、差別化を意識しながら、工夫を重ね続けることこそ大事と思う。
次に「時間の使い方への徹底的なこだわり」。
「生活が作品」というのが、僕の意志なんです。朝から晩までで、いつ何をやるか。「時間の使い方」に徹底的にこだわります。あるやり方をどのように続けていき、いつがらりとかえるか。その全体が作品だという気持ちを強くもっています。
- 作者: 齋藤孝梅田望夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/05/08
- メディア: 新書
- 購入: 79人 クリック: 1,862回
- この商品を含むブログ (314件) を見る
『私塾のすすめ』 〜第4章 幸福の条件 P.167〜
「生活が作品」というのは言い得て妙と思う。
これも梅田さんの受け売りだが、無限の情報に対して、誰に対しても24時間と等しく有限な時間をどのように配分するか、この能力が情報大洪水時代における差別化の源泉になることは間違いない。
1つの長文の英文記事を読み込み、考え抜くことに仮に3時間かかるとする。一方で、3時間くらいあれば、RSSリーダーに格納されているエントリーは1000個くらいはさばける。では、特定の英文長文記事を前にした時に、1000個の情報の塊を捨ててしまうくらいそれに価値があるのか、を考えるのは非常に重要。そんなことを常に考えながら、「時間の使い方」へのこだわりを徹底的に追求するという不断の努力を重ねて、磨きをかけていくことが、情報大洪水時代には非常に重要なのだろう。