- 作者: ジョン・バッテル,中谷和男
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2005/11/17
- メディア: 単行本
- クリック: 76回
- この商品を含むブログ (231件) を見る
内容が目新しいかどうかで言えば、もちろん新しいどころか古いし、どこかで10回くらい聞いた話が多い。ただ、本書はジョン・バッテラが取材したGoogle創業者の生の声にふれることができるという点と「検索」に焦点をあてたインターネットの歴史書という点の2つの側面から、部分的にはまだ読むに値する本だと思う。
特に第5章では、検索連動型広告というイノベーションを起こしたはずのオーバーチュアのビル・グロスが、いかにして時代の覇者になり損ねたのかが描かれており、読み物としてのかなり読み応えがある。「オーバーチュアがあるところでボタンをかけ違えていなかったら・・・」、「グーグルがどこかでボタンをかけ違えていたら・・・」、歴史にたらればを言ってもしょうがないが、そんな妄想が思わず頭にうかんでしまうくらい、同時代的には紙一重のところで戦っていたことがこの章を読むとよくわかる。
現在は、様々な会社が様々な戦略の元、Cloud Computingという分野でしのぎを削っているわけだが、IBMとAmazonの提携一つにとっても、後生からみたときの決定的なボタンのかけ違えとなりうる、ということが第5章を読むとよくわかる。栄枯盛衰の激しいIT業界、現在進行形でおきていることをここで語られているような歴史観をもって、想像力を働かせて、評価をすることが重要と強く思った。
本書のもう一つの読みどころは、ジョン・バッテラのグーグル創業者への直接の取材内容が掲載されている点だが、興味をひく内容が多い。
「目標は、学術的に現実的で面白いことに取り組むことだった」とペイジは回顧する。
「アカデミックだからといって非現実的なことをする理由はなかった。興味深くて、しかも現実的なことは山ほどある。興味深くて現実的。このふたつが必要なんだ。でもなにかをして報われるようなことが、そうたくさんあるとは思えなかった。多くの人に役立つようなことができたらと、ぼくは思っていた・・・。そのためなら実用化してもかまわない。テラスのようにはなりたくないと・・・」
第4章グーグル誕生 P.110
アカデミックというと、とかく現実のビジネスとは離れたイメージを持ちがちだが、アカデミックでありながら現実的なものに取り組むというのがペイジの信念とのこと。これを読んで、一般的に相容れにくい二つのことをカバーできる能力をもった人が大事をなすのだなぁ、と強く思った。
一般的に研究職につく人はビジネスの香りが少ないことが多い。これは、研究に多大な時間を費やすが故にビジネスセンスを磨く余裕がなくなりがちということと、ビジネスとは結びつきにくいテーマが世の中には多いということに起因すると思う。だが、ペイジは学術的に面白くかつ現実的なことは山のようにあるし、実用化に到達せず研究だけで終わることを面白くないという。
この相容れない二つのテーマを両立させることへの強い執着心、そして二つこなせる能力がGoogleという会社を作る原動力となったのだろう。
Google本は書店には山のようにあるが、食指が動く本は少ない。まだ、読んでない方は5章と創業者へのインタビューだけを拾い読みするのがオススメ。