Thoughts and Notes from CA

アメリカ西海岸の片隅から、所々の雑感、日々のあれこれ、読んだ本の感想を綴るブログ。

第2回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査

情報処理推進機構"第2回オープンソースソフトウェア活用ビジネス実態調査"というソフトウェア企業やシステムインテグレータなどのIT企業を対象とした調査資料を公開した。サービスを提供するIT企業の視点でOSSを活用した日本のIT市場の成熟度合いが浮き彫りになっており、かなり興味深い。いくつかのポイントを引用し、コメントしてみたい。

価格メリットよりも技術的な自由度や中立性が相対的に評価

価格メリットよりも技術的な自由度や中立性等の OSS の特性が相対的に高く評価されている。ヒアリングでも技術的な自由度への評価が聞かれた。従って、ソリューションのレベルアップや高付加価値化につながる OSS 本来のメリットが評価されていると考えられる。

OSSのメリットNo.1は「低価格で顧客に提供できること」であるが、昨年度の調査時はそういう答えをした企業が68.2%だったのに対し、今年の調査では63.3%と前年比5%減となっている。一方で、No.2の「特定のベンダーに依存していないこと」は昨年49.3%に対して、今年は53.2%と前年比4%増。今のペースで進めば、来年あたりには両者が均衡しそうな勢い。IT企業にはOSSの本来の価値が認知されはじめているという点でなかなか興味深い。
一方で、OSSのデメリットNo.1は「緊急時の技術的サポートが得にくいこと」、No.2は「利用しているOSSがいつまで存続するかがわからないこと」とある。No.2については、私なんかは「提供している会社がいつまで存続するかわからないが、OSSそのものはユーザがいる限り存続し続ける」、即ちプロプライエタリの会社の寿命より、OSSの寿命の方が長い気がするので、これはデメリットではなく、メリットのほうにいくべき内容のように思う。

IT企業においてOSSの技術者は不足している?

OSS 技術者の充足感の度合いを技術区分ごとに調査した。全体としては 43.4% 2007年度調査は 51.5%)の企業が OSS 技術者を「不足している・かなり不足している」と答えており、 十分足りている・足りている」の 13.6%(同 12.5%)の約 3 倍もあった。これにより、全体的に OSS 技術者の数が足りない状況にあることがわかった。

ほぼ半数に近い企業がOSSの技術者が不足していると答えている。別の調査項目で顧客企業にとってのデメリットというものがあり、No.1が「顧客社内にOSSのシステムを管理できる人材がいない点(35%)」となっており、総じてOSS技術者が足りないという結果になっている。
ただ、上記の結果をみて、日本においてはまだまだOSSの技術者が足りないと結論付けるのは面白くない。根拠はないが、現場のエンジニアレベルではそれなりに技術が蓄積しているのに、調査の回答者がその実態に基づいて回答していない、とか、実際に日本の中には技術者が上記のパーセンテージ以上いるにも関わらず、ソフトウェア企業、システムインテグレータがそういう人材を惹きつけることができていないと見る方が、私の感覚にはあっている。

OSSを活用したITマーケットの規模

区分の定義が今ひとつわからない点があるが、下記の数字はそのマーケットに従事する者として頭にたたき込んでおきたい。

  • 日本のソフトウェアの市場規模は12兆4044億であるのに対し、OSSを活用したソフトウェアの市場規模は6872億円
  • 日本の情報処理・提供サービスの市場規模は4兆9613億円であるのに対し、OSSを活用した情報処理・提供サービスの市場規模は1724億円
  • 日本のインターネット付随サービス業の市場規模は2兆4961億円であるのに対し、OSSを活用したインターネット付随サービス業の市場規模は2兆1103億円


本調査はまだまだ調査2年目であるが、3年くらいデータが溜まると時系列にもっと色々な傾向がみてとれると思うので、来年も楽しみにしたい。

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